第百六十四話『試し切り』

「お客様!店内では武器を振り回さないようにお願いします!」

と店員さんに怒られた。


「怒られちゃった・・・」

と、美少女格闘家のサラがしょんぼりしている。


「うん、店内では怒られちゃうね、でも、試し切りは出来るよ!」

と、僕はサラから棍棒を受け取って言った。

棍棒は剣士じゃないと試し切りは出来ないと思って受け取ったのだった。


「え?試し切りできるの?」

と、サラが聞く。

ショップで振り回してしょんぼりしていたサラの目が輝く。


「うん、出来るよ!試し切りの場所は、エイムの練習に使われることも多いんだ!」

「えいむ??」

とサラがはて?という顔をしていた。


「また、難しい単語が出てきた!なにそれ??」

「エイムは狙うって意味ですね!」

と、サラが質問し奈緒子が答える。


「そう、銃を打ち合うゲームによく出てくるんだ!敵を照準の中に入れるんだ。」

FPSという単語を出したら、ややこしくなると思って、つかわないように工夫した。ほらサラ、わかりづらいというけど、考えてるんだよ!と思った。


「うん、それの練習をするってこと??」

「そう、この、照準にいれるまでの時間が0.1秒減れば、かなり負けなくなる!」

とサラの質問に僕が答える。その0.1秒がゲームを決めるのだ。


「おー!そういうものなんだ!!」

と、サラが言う。

FPSのエイムとは違い、体を動かしたとおりに動ける「ラスト・オンライン」のエイムはさらに少し複雑だけど。


「うん、サラはかなり得意そうだけどね!」

「そうなのかな?」

と僕が言いサラが答える。


「試してみよう!」

と僕は言う。


「試し切りさせてください!」

と、店員さんに向かって僕は言った。


「はい、分かりました!試し切りステージに転送しますね!」

と、店員さんが試し切りのステージに転送してくれた。


「おお、ここは!なにもない!」

とサラが言う。

殺風景なステージに僕らは飛んできていた。

ここなら武器を振り回しても怒られることはない。


「うん、でも、あれ見てみて!」

と、オレンジの的を指差す僕。


オレンジ色の的がいくつも浮いている。

これでエイムの練習をするという人が多い。

ただ、銃ではなく剣がメインなのでエイムというよりは剣術の修行のようになるけど。


「なにあれ!風船?」

「そう、的はいろいろ変えられるけどね、標準だと風船だね」

とサラの質問に僕が答える。


「あれを割る練習をみんなするってこと?」

「うん、そう」

と僕が答えると、なるほど、と言いながらサラが走りだす。


立体的に配置された風船に向かってジャンプするサラ。


パパパパパン


と、一瞬で五個の風船を割る。


「やっぱり得意だったね!」

と言う僕。


「サラちゃん、すごすぎます!」

と言う奈緒子。


「え?これすごいの?」

と、自分の身体能力の凄さがわかっていないサラが皆に褒められて、微笑んだ。

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