第百二十一話『サラの提案』

「ジュン、とんでもない先客がいたけど・・・」

「うん、見えてる・・・温泉回どころの騒ぎじゃないね・・・これは・・・」

「手強い相手がでてきちゃいましたね」

サラと僕のやりとりに、奈緒子も冷静に微笑んだ。


そう、D級英雄ランク戦に出てきた最後のボス『大龍 - ワイバーン』がそこにはいたのだ。


「ジュン、どうする?戦う?」

とサラが僕に聞く。

そう、まずはこの場をどうするかだ。

楽しい楽しい温泉イベントは一旦お預けのようだ。


「うーん、ゆっくりこのまま逃げられないかな・・・」

と僕がぼそりと言うと、『大龍 - ワイバーン』の目がギロっと動き僕と目があった。


もう、僕達はしっかり彼の認識下にあるようだ。

こっそり逃げるということは難しそうだ。彼の機嫌しだい。

そして、黒く凶暴な顔をし、大なツノを2つ持った、巨大龍『大龍 - ワイバーン』の表情はさっぱり分からない。


「うーん、逃げるのはムリかも・・・やるしかないか・・・」

と僕が呟く。

なんとか一度勝てた相手だ、死ぬ気でやれば、なんとかなるかもしれない。しかし、前回は珊瑚達が、やられたせいで集中力が極限まで高まっていたし、サラと奈緒子の捨て身の作戦で勝てたということもある。


今も勝てるかは五分五分といったところだろう。


「ねえ!ジュン!質問があるんだけど?」

と緊張感の高まるこの場面でサラが僕に聞く。


「なに?こんな時に?」

と僕は、『大龍 - ワイバーン』の動向にしっかりと注目しながら、聞く。


「『大龍 - ワイバーン』に『騎乗 - ライディング』できないかしら??」

とサラがニッコリ微笑みながら聞く。


「え?本気?」

と僕は、聞き返した。なんて事を考えるんだサラは・・・。


「うん、さっきカピちゃんが走りだした時に実は「騎乗 - ライディング」のレベルがあがったのよね」

とサラが満面の笑みで答える。


「そういえば僕も上がってる・・・」

「私も上がってます・・・」

と僕と奈緒子も応える。


「騎乗 - ライディング」は細かくレベルがあがるわけではなく、ざっくりと、3つくらいのレベルで乗れるものが変わるタイプのものだ。


だから、理論上は、「騎乗 - ライディング」レベル2でドラゴンに騎乗出来てもおかしくない。


「しかし、いくらなんでもいきなり、D級英雄ランク戦のボス。しかもD級はほとんどそこのラスボスにたどり着くことが出来ない『大龍 - ワイバーン』に乗ろうなんて・・・」

サラは無茶な事を考える・・・と僕は思った。


「ふっふっふ。それでこそドラゴンハンターでしょ!」

とサラが微笑みながら僕らのチーム名を口にした。


「確かに!やってみるか!」

「ふふふ、あの『大龍 - ワイバーン』さんに乗れたら楽しそうですね!」

と奈緒子も笑った。


「よし、決まったわね!」

とサラが言った。


「戦闘開始だ!」

僕がSSSランクの武器「 神の剣 -デュランダル 」を構えてそう言った。

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