第百二十話『カピバラの好きなもの』
「それも楽しそうだ!まだまだやれることあるんだね!さすが『ラスト・オンライン』!!」
と、サラが言う。
そんな話をしながら僕らは、走り続ける。
そうこう、言いながら、僕達はかなり走っていた。
そろそろ「騎乗 - ライディング」のレベルが上がってもいいころかもしれない。
そう思っていると、突然、サラが騎乗している動物、カピちゃんことカピバラの鼻がヒクヒク動き出した。
「あれ?カピちゃんどうしたの?」
と格闘美少女のサラが、今乗っているカピバラに聞いた。
当然言葉が通じるわけではないので、カピちゃんはもちろん返事をするでもなく、そわそわしている。
「なんだろう?何か好きなものの匂いでもかいだかな?」
と僕が言った。なんとなくそういう振る舞いかなと思ったのだ。
「好きなものですか?」
と奈緒子が、僕に質問した。
「うん、カピバラが好きなものといえば・・・」
と奈緒子が僕の言葉を元に考えを続けた。
食べ物・・・水浴び・・・?と、いろいろキーワードを口にする奈緒子。
「あ、もしかして!」
と奈緒子が言う。
「え?なに?なに?」
とサラが奈緒子と僕に聞いた。
サラはまだピンとこなかったようだ。
「そう!」
「「温泉!!」」
と僕と奈緒子の二人が答えた。
「あー!温泉!!」
と二人の答えに、サラも納得する。
「まさかの温泉回キタコレ」
と僕は思った・・・、つもりだったのだがその心の声を呟いてしまっていた・・・。
「あー、またジュンはイヤラシイこと考えてるでしょ!」
と、サラは微笑む。
「いえいえ、滅相もございません・・・」
と僕が丁寧語で弁明する。
「心の声が出てたわよ!」
と笑うサラ。
「出ちゃってましたね!」
と笑う奈緒子。
「あの時、一緒に水着もかっておけば、混浴も楽しめたのに!」
と微笑む奈緒子。
「うむ、買わなくて良かったですな。イヤラシイ、ジュンに見られちゃう!」
とサラも笑った。
なるほど、水着はそういうエピソードにも耐えられる、便利アイテムだったのか・・・。
まったく気が付かなかった。
あそこで、奈緒子側についてサラを説得していれば・・・
あの時の判断ミスが悔やまれる・・・
ただ、温泉に水着で入るのは邪道という気もするけれども。
「とにかく、カピちゃんグッジョブ!!」
と僕は心のなかで思った・・・、つもりだったのだがその心の声をまた呟いてしまっていた・・・。
「また、心の声が漏れてるわよ!ジュン!」
とサラが笑う。
そして、カピちゃんに導かれるままに、僕たちは温泉にたどり着いた。
しかし、そこには先客がいたのだった。
「ジュン、とんでもない先客がいたけど・・・」
「うん、見えてる・・・温泉回どころの騒ぎじゃないね・・・これは・・・」
「手強い相手がでてきちゃいましたね」
サラと僕のやりとりに、奈緒子も冷静に微笑んだ。
そう、D級英雄ランク戦に出てきた最後のボス『大龍 - ワイバーン』がそこにはいたのだ。
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