第百三話『挨拶のクラスタリング』

「つまり僕らの行動をジャンルわけして、蓄積してるんだ」

サラはなんのこっちゃ、という顔をしていた。


そして「なんのこっちゃい」と、

サラはそのまま表情と同じことを口に出して笑った。

僕はさらに詳しい説明をすることにした。


「この『ラスト・オンライン』には200万人の人がいて、毎日会話してるんだ」

「うん、そうだね、今もしてるよね」と僕が前提の説明を始める、この200万人がいるということが大事だ。量が足りないと、人工知能に組み込むことができない。その話をきいてサラが頷いた。


「例えば、ぼくが『こんにちわ!』って言ったらなんて応える??」

と、僕が二人に聞く。


「『こんにちは!!』ですね」奈緒子がいつもどおり丁寧に応える。

「『こんにちワン』かな」とサラが応える。機嫌が良いようだった。ちなみにその返し方は初めて聞いた。


この『人それぞれのリアクション』が返ってくるというのが重要だ、同じ人に同じことを聞いても、返ってくる言葉は違うはず。天気やメンバーや体調にも影響をうけるだろう。


「そう、こういう『こんにちは!!』とか『こんにちワン』とかを蓄積していくんだ。『こんにちわ』に対する、現在の人間が返す単語が蓄積される。」

と説明を続ける僕。


「これをランダムで返す、つまりNPCに僕が『こんにちわ!』と言えば、NPCはその蓄積された、ほんとうに人が使った言葉を返すことができる」

「おー!!すごい!!そんな裏ワザが!!」と僕の説明にサラが感動する。


そう言った直後、ふと考えて、僕に言う。

「あれ、でも待って、真面目な人が、『こんにちワン』って返したらへんじゃない??しかめっ面の人がいきなり『こんにちワン』って言ったら、めっちゃ怖いよ!!」と笑う。


「素晴らしい!その通り!そこでジャンル分け、専門的な用語で言うとクラスタ分けが行われるんだね。200万人の『こんにちわ!』に対する返事の『真面目な人達の言いそうな言葉』『軽い人たちのいいそうな言葉』『こどもがいいそうな言葉』『大人がいいそうな言葉』『男子がいいそうな言葉』『女子がいいそうな言葉』が分類されるんだ」

「ふえぇー!凄い」と驚くサラ。


「ちなみに、検索エンジンとかもこんな感じの仕組み。僕がバンドのアーティストだったとして『ジュン 音楽』って検索されると、ジュンって名前は音楽カテゴリに分類されるんだ。こういうふうにカテゴリを分けることによって、検索に掛かる時間が短縮されて、0.1秒とかで!」僕が少し、いや、かなり?脱線して長い説明をした。

「うん、まったくわからん」と笑うサラ。


と、ちょっとジャンプして下がってサラが言う。

「でも、なんとなく凄いのは分かった。最新テクノロジーを使って、村人が変なことを言わないわけね」ざっくりとサラがまとめた。

「そゆこと」僕が答えた。サラのでだいたいあってた。


「何を聞いても『ここははじまりのまちです』って返してくれる、NPCキャラもいいですけどね」と奈緒子が答えた。

「それは、なかなか通な楽しみ方だね」と僕が笑った。


つい、マニアックな話に夢中になってしまった。

「さて、さっきのお兄さんが教えてくれた。馬がいるところに行ってみよう!」

と、僕が本題を思い出して、二人に言った。

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