第八十四話『かわいい食器棚』
「あ、112万ゴールドだ!」
サラが欲しがるベッドの値段だった。そう、僕らにはお金が必要だ。僕が欲しがっている「バンドマニア」が113万ゴールド、サラが欲しがっている「可愛らしいお姫様ベッド」が112万ゴールド。
そう我々は、だいたい115万ゴールド弱を必要としていた。
もちろんそんなお金はない。5000万ゴールドあった、『D級英雄ランク戦』の報酬は、土地と家で一瞬で使ってしまっていた。
「この後、私が見たいものを見てもいいですか?」と一通り見終わっていた、僕らに対し、奈緒子がそう聞いた。
「もちろん」
「当然!」
と、遊び呆けていた二人、僕とサラは即答した。
「そういえば、僕らは全く生活必需品をみてないな」
とボソリとサラに言った。
「私のベッドは生活必需品です!!」
と胸を張るサラ。
「そういえば・・・確かに。必需品の値段は軽く超えてるけど・・・」よく考えたら、ベッドは必需品だったが、必需部分のシンプルなベッドは簡素なものなら2万ゴールドで買える。110万ゴールド分は趣味じゃないか、という僕。僕の「バンドマニア」は100%趣味だけど・・・。そこには夢とロマンしかない。だがそれがいい。
「女子には必要なの!!」
と、サラが言う。必要らしかった。必要なら仕方無い。うん。そうこうしていると、奈緒子がつぶやいた。
「私は、全部を木目調に統一したいんですよねー」
と、テーブルやイスを見て回る奈緒子。
目が真剣だった。
遊び半分の僕らとは真剣度が違う。
そんな中、僕は、あるものを見つけた。
「はっ!!これは!?!?」と僕が言う。
「なになに!?」とサラが覗きこむ!!
「はっ、これは・・・!!」サラも驚く。
「人をダメにするソファー」だった!
このソファーは、現実でも人気の、体にフィットする、ふわふわしたクッションのことだった。普通のクッションより遥かにのめり込み、つつまれたような感触を与えてくれる。近年人気のでてきた、新しいソファなのである。
「『アーカイブ社』の技術・・・ここまで来ていたのか」と僕が言った頃には、すでに、試しているサラ。
ポンっと、座るとググッと深く潜り、さらの大部分がソファに埋もれた。
「こ・・・これは・・・す、すごい・・・吸い込まれる!!」と、楽しんでいるサラ。
「これも・・・ほしいかも」と物欲に目覚めるサラ。
「これは確か1万ゴールドくらいなんだよね、と」僕が言う。
「あ、そんなもんなんだ?いいね!」とすでに、家やベッドで金銭感覚が麻痺している僕らだった。
また、こちらで遊んでいると、奈緒子が足を止めて、あるものを凝視している。
「この食器棚、すごく可愛いですね。欲しいです!これがいいですね!値段は・・・と」そういう奈緒子の声に先に値札に目が行く僕。1,160,000ゴールドと書いてあった。
カンマの桁数を覚えている僕はまた、一瞬で読めた。
「あ、116万ゴールドだ」
そう、僕らにはお金が必要だった。(二回目)
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