第八十二話『バンドマニア』

「ショッピングに行こう!」

サラが笑顔でそう言った。

家を購入し、大きく視点が変わった僕たちのショッピングが始まる。


郊外のショッピングセンターにやってきた。前回サラが、着ぐるみを二着買ったところだ。あのときはぬいぐるみや着ぐるみを見たぐらいで終わってしまったので、見てないところがたくさんあった。


「ふっふっふ、どのぬいぐるみを買おうかなぁ。巨大ぬいぐるみも欲しいし、抱きぬいぐるみも欲しいし、観賞用も欲しいし・・・」

すでに、ぬいぐるみで頭がいっぱいの格闘少女のサラ。抱きぬいぐるみというジャンルがあるのか!と思ったがサラのテンポの早さに、突っ込むタイミングを失った。


「まず食器棚が欲しいです、あと、テーブルと椅子とソファと、食器と・・・」と考え出してとまらない様子の奈緒子。こちらもこちらで、きちんとファンタジー世界を楽しんでいる様子だった。


そんな二人を眺めながら、とくに何も考えていなかった僕も歩みを進める。


「僕はどうしようかなぁ」と、思いながらショッピングセンターを回っていると、すごいものを見つけてしまった。


「どしたの?ジュン?」サラが足を止め目を輝かせている僕に対して問いかける。


「これは凄い・・・」

僕はあるものを見つけ心を奪われてしまった。


「え、それ買うの??てか買えるの??」とサラが笑う。

「あ、これ買えるんですね」と奈緒子が値札を見つけて言う。


「バンドマニアだ!!」

と僕が喜ぶ。


「奈緒子ちゃん、バンドマニアってなに??」とサラが奈緒子に尋ねる。僕の目が夢中で質問に返事しない予感がしたのだろう。それは正解だ。


「昔のゲームセンターにおいてあったゲームですよ!音楽に合わせて、ボタンをたたくんです、昔、すごく流行った時期があったんですよ!」

「へー、それがなんでここにおいてあるの??」

奈緒子の説明にシンプルな疑問を持つサラ。


「それは、これが、この「ラスト・オンライン」を作った、『アーカイブ社』が作ったものだからね」と、僕が奈緒子の説明に口を挟む。


「さすがに詳しいわね!」とサラが笑う。


「それにしても、凄い出来だ、完全再現なんじゃないか」と、夢中になって細部を確認する僕。良い仕事してますね、という名台詞を言いそうになった。


「昔これが流行りすぎて、これを自宅用に買うという人がいたんですよ!かなり大きいし、結構お値段も張りますし、音も大きいから、もちろん子供が買えるわけじゃなくて、起業とかに成功した、お金持ちが買う感じだったんです」と奈緒子が説明する


「そう、昔からパチンコとかインベーダーゲームとかね、好きな人は教務用のものを買って家に飾るという文化があって・・・いやしかしこれはすごい」と説明の途中でやはり、そのクオリティの高さに夢中になってしまう僕であった。


「わたしと変わらないじゃん!!」

と、サラが笑った。

とぬいぐるみに夢中なサラとゲームに夢中の僕だった。

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