第六十三話『大龍 - ワイバーン』

驚くことに、そこには、凄惨な状況が広がっていた。

水晶が戦闘不能になり、瑠璃、珊瑚が瀕死の状態で、最終チェックポイントのボスと対峙していた。


「恥ずかしい所、を見られてしもたな」

ボロボロになった珊瑚が、こちらを向いて、無理やりおどけて見せた。笑ってはいるが、この状況に怒りを隠し切れない様子だった。


「これは、一体・・・」僕が言葉を漏らす。信じられない光景だった。さきほどのチェックポイントのボス「仔竜 - ミニドラゴン」を一瞬で倒してしまった。あの、瑠璃、珊瑚、水晶のチーム「ジェムドロップス」が壊滅状態だ。


水晶はすでに倒れている。


その状態を見て、普段は大人しいがためか、正気を保てない状態になってしまった、瑠璃が、「うあああああぁぁぁぁぁ」と叫びながら、A+ランクのスキル「魔法連射 - ラピッドファイヤ」を発動させ、ファイヤーの連射をする。


「あかん!!」珊瑚が叫ぶが、遅かったようだ。ボスが、その、瑠璃の連続魔法を、羽を閉じて防御し、そのまま、瑠璃に向かって炎を吐いた。


「瑠璃!!」珊瑚の叫びも虚しく、瑠璃のHPバーが0になり、瑠璃が倒れる。「ごめん」瑠璃の声が儚く消える。


「瑠璃ぃぃぃぃぃ」珊瑚が叫ぶ。


信じられない光景が続く、あの神業の「魔法連射 - ラピッドファイヤ」も通じないのか。瑠璃の「魔法連射 - ラピッドファイヤ」はただの連続攻撃ではない、硬直時間を時間にいれた、コンマ数秒単位の連続攻撃だ。


「これは、現実か・・・?」僕がつい言葉を漏らす、あの元A級で、一瞬で「仔竜 - ミニドラゴン」を倒した、珊瑚たちがこんな状態になるなんて。


「珊瑚、大丈夫か?」僕が、珊瑚に声をかける。

「下がっとき、これは、君らが勝てるような相手ちゃうで」

そう言いながら、A+ランクのスキル、『二刀流 - デュアルソード』を発動した。珊瑚が最後の力を振り絞って構える。


「かかってこいや!!」

とボスを挑発する珊瑚!!瑠璃と水晶をやられて、精神が高ぶっていると思ったが、意外に冷静な姿を見せる珊瑚。相手を、挑発し、自分はスキを付くという作戦のようだ。


その挑発に応じる形で、ボスが珊瑚に向かって、炎を吐く。

その一撃目を避け、ボスの元に走り攻撃しようと、向かっていく。

だが、その炎はやまず、珊瑚の方に向かっていき、そのまま珊瑚を捕らえてしまった。


「うぁぁぁぁぁぁ」珊瑚が炎に焼かれ、珊瑚たち「ジェムボックス」は全滅してしまった。このD級英雄ランク戦は、全滅すると、スタート地点に戻されてしまう。転送の準備が始まり、珊瑚たちの体が光だす。


その三人を倒した、ボスは咆哮し、大きい羽を揺らす。

先ほど倒した、「仔竜 - ミニドラゴン」の数倍は大きい、黒く凶暴な顔をし、大なツノを2つ持った、巨大龍。ファンタジー世界の住人、伝説のドラゴン。


そう、この「D級英雄ランク戦」最後のボスは


「大龍 - ワイバーン」


だった。

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