第三十七話『ファンタジー世界での女子のお買い物』

「ん??これは、噂の女子のお買い物・・・??」

現実世界では見たことのない、とても長いと名高い、噂の女子の買い物が始まる!期待と緊張が広がる。


「さ、行きますよ!!」

と魔法使いの少女奈緒子が、格闘少女のサラの手を引き、どんどん進んでいく。待って待って!と言いながら、引き摺られるように、ついていくサラ。


「ところで、ショッピングって、どこにいくの??」

と、サラが聞いているが、いいからいいからと、奈緒子はさらにどんどん進んでいった。そして、ある所で足を止めた。到着したようだ。


「ここですよ!!」

と、奈緒子は指差した。そこは、現実世界でいうところの、郊外にある巨大なショッピングモールのような雰囲気だった。もちろん、ただのコンクリートではなく、ファンタジー色の強いデザインになっていた。


「あ、すごい!うちの近くにあるショッピングセンターくらい大きい。」

「ふっふっふ、そうなんですよ!!もちろんアイテムは、カタログで見ることもできるんですけど、この無限に実物のアイテムが置いてある、というのがVRMMOの醍醐味なんですよ!!都内の一等地に、巨大なショッピングセンターがあるというイメージです!現実だと、土地の値段の問題があって、千葉とか埼玉とか東京からちょっと離れたところになってしまいますが!!」

いつもの大人しいイメージの彼女と、うってかわって、かなり饒舌な奈緒子だった。本当に、ファッションが好きなのだな、と思った。


「あー、そういう物の見方もあるんだね。おもしろいなぁ」

僕はそう思った。無限の空間があるというのがVRMMOの売りという見方もたしかにあるかもな、と。僕らは最初に、現実とは違う「剣や魔法の世界」を生身のイメージのまま、自分の体を動かして体験できる、というところに興味が行ってしまいがちだけど。「現実には所有できない量を所有できる」というのも確かに魅力の1つだった。


「そっか、無限のクローゼットが家にあったら、嬉しいという人もたくさんいるもんね」

「そうなんですよ!!ジュンさん!!」

と、更に熱く説明してくれる奈緒子。


「ショップに全部置いてある、ということは、全部試着できるということなんですよ!!サラちゃんには、どれから着てもらいましょうかねー。」うっとりした表情で説明してくれる奈緒子。


「とりあえず、入ってみよう!」

と僕も確かに気になってきたので、大型ショッピングモールのドアをあけて入った。


「あー、服だけじゃないんだ!!」

と、奈緒子の手から、開放されたサラが、ぴょん、ぴょんぴょん、と飛び跳ねて、奥を見渡した。


「あ、すごい!!家具とかも置いてある!!あれも買えるの??」

「買えますよ!!お家も買えます!!まずは物件を買うところからですけど!」

サラが家具や時計や本なども置いてある事に気が付き、奈緒子に訊ねた。それだけではなく、土地から買えるのだと奈緒子は説明する。


「え!?物件!?そこからなの??」

とサラが驚いた。


「土地から買うのかぁ、ほんとに、このファンタジー世界に住むってことなんだね!すごい・・・」

その本格的なところが、このゲーム「ラスト・オンライン」の売りなのであった。

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