第三十六話『冒険者の街』

「よーし、満足したし『冒険者の街』へ行こう!!」

と、大笑顔のサラが腕を大きく手を振ってみんなを導いた。


と、いっても『冒険者の街』は、先ほどのボス戦「チームアーマードゴブリン」との戦いの場所から目と鼻の先だったので、すぐついた。


「やっと、つきましたね!ここが『冒険者の街』なんですね」と魔法使いの少女、奈緒子が感慨深く言った。ほんとは、割と最初に来る所なのだけど。ここまでの距離がとても長く感じ長い間プレイしているように感じた。


「なんだかんだで、かなりいろいろあったような気がする。本来は、ここから冒険が始まるはずだけど、すでに、最強クラスの『ドラゴノス』を倒したり、他の冒険者がしないような冒険をしちゃってるよね」

「ほんとだよ!」

と、じろっと僕を見て笑った。

「僕だけのせいじゃないような」

と笑い返した。ふっふっふ、とサラは華麗にごまかした。


「まだまだ楽しむよ!!むしろここからが始まりだよ!!」

「うん」

サラの元気な発言に笑みが溢れる。サラは新鮮にRPGを楽しんでくれているので、とても好きだ。小さいころ初めてプレイしたゲームのワクワク感が蘇ってくる。


「あ、私達以外にも、プレイヤーがたくさんいるわね!手を振ってくれている、わーい!!」と、両手で大きく手を振り返すサラ。


MMORPGには、挨拶のモーションが入っているものが多かったので、古くから、MMORPGをやっているプレイヤーは、昔のRPGのモーションの真似をして、わざとちょっと変な、昔のゲームのような、動きをする人がいるのだ。一種の新しい文化になっていた。これが「VRMMOあるある」だという記事をネットニュースで読んだことがある。


「あ、その、剣かっこいいね」と話しかけられたりした。

一緒に僕と冒険しませんか、と表示している人もいる。

そう、すでにここは、コンピュータではなく、実際の人がプレイしているキャラクターがたくさんいる空間なのだ。ここからがVRMMOの真骨頂だ。


「ついに本格的にMMOネットゲームが始まった感じがする。この世界に200万人ものプレイヤーがいるんだなぁ」

「楽しみですねー。」

奈緒子も同様にワクワクを隠せないようだった。彼女も結構なRPGプレイヤーだからだ。一息置いて、奈緒子が切り出す。


「では、さっそくサラちゃん!」

「はい!!」

元気よく返事するサラ。


「念願のお買い物に行きましょう!!」

「う、うん」

約束通り、奈緒子が切り出す。奈緒子のキャラクターとはギャップがある、ファッション好きエネルギーの迫力に押されているが、ほんとに嫌というわけではないらしい。一瞬おびえた素振りを見せたが、その後、楽しそうな笑顔が垣間見えた。


「ん??これは、噂の女子のお買い物・・・??」

現実世界では見たことのない、とても長いと名高い、噂の女子の買い物が始まる!

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