第二十四話『サラのフルコース』
「できたわよー。みんなー!サラさんのフルコースですよー!」
自慢気な笑顔のサラが、食べきれんばかりの多さの、食事を抱えて戻ってきた。
「これは、すごい」
「すごいですね」
テーブルに並ぶ肉料理の数々を目にして、僕と魔法使いの少女奈緒子が、ごくり、とつぶやいた。
「この子が食べたいもの全部作っちゃったわ!」
と、食堂のおばちゃんが、豪快に笑いながら言った。きのこのクエストのお礼とは家大判振る舞いだ。これ普通に頼んだらいくら掛かるんだろう、と思った。
「ふふふ、えーっと、しゃぶしゃぶでしょ、ステーキでしょ、焼き肉、お肉のフルコースね」
えっへん、と、胸を突き出して、腕を腰に当てて、自慢気なサラ。指ではなく手のひらで料理をさして、料理名を口にする。
指でさすわけではなく、手のひらでさすという行為を見て、育ちがいいのかな?と思った。いろいろ不思議な少女である。
「こんなフルコース、聞いたことないよ!!」
と笑う僕。
「いいですね。どちらからいただこうかな〜。」
僕の料理への突っ込みをよそに、すでに、戦闘態勢の奈緒子。女子の食事は戦闘だ。
「じゃんじゃん食べてね、冷めちゃうと、美味しくなくなっちやうから」
と、どんどん、お皿に盛りつけてくれるサラ。
気が利くというかなんというか、とにかく行動が早い。素直に凄いな、と思う。
「あ、それは!私がやります!!」
と、盛り付けを慌てて手伝い出す、奈緒子。料理が出来ないと自分で思っていて、その事を気にしているのか、その分働く奈緒子。
奈緒子が一通り皿に料理を並べ、準備が完了した。
「では、どうぞ」
ふふーん、と唇を緩め笑いながら、言った。
「いただきます!」
「いただきます!」
僕と奈緒子がそれに返事する。
「いただきまっす!!」
遅れてサラも言う。
「あ、美味しい」
奈緒子が焼き肉に手をとって、そうつぶやいた。
「ほんとだ、美味しい」
「え、ほんと!?私も食べよう!!」
僕もちょうど食べていて、同意した。それに遅れたサラが乗り出して焼き肉を取った。
「うまー!!」
満面の笑みのサラ。楽しい食事になりそうだ。
笑顔のサラが、ふと気づいて、あれ?っという顔をした。
「そういえば、これってなんで美味しいの??ゲームだよね??」
と、ゲームであることを思い出したサラが疑問を口にする。
これは没入型MMO「ラスト・オンライン」。バーチャルウォーカーという、バンド型のコントローラを腕と足にはめて、その動きを読み取って遊ぶゲームだ。
「うん、これはゲームの中だから、実際の体はごはんを食べてないよ!」
「そうだよね?!でも、なにこれ美味しいよ」
と、さらにお肉を頬張る。疑問は湧いても手は止まらない。
「そう、それはね、人は目で味を感じるからなんだ!!」
と、僕が口にした。
みんなの頭に大きなはてなマークが浮かんだ。
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