第二十三話『サラのクッキング』

「なるほど、だから格闘家にこのスキルがつくのかな」

と言いながら、サラは楽しそうに料理を始めた。

手際よく作業を進めていくサラ。食堂のおばちゃんに言われたこともやりつつ、先読みして、作業を進めている。


女子らしく、切り替えが早い人だな、と思っていたけど、その能力は料理でも発揮されていた。家でも料理をやっていると言っていたけど、ほんとに慣れたものだなと、僕は感心していた。


現実世界でも運動部に入ってる様子で、運動能力が高く、豪放磊落なイメージがあるサラだが、彼女の女の子らしい一面が垣間見れた。


「サラちゃん凄いですね。」

と、魔法使いの少女奈緒子も同様の事を思っていたようだ。

二人は食堂のテーブルで、彼女たちが料理を作るのを待っていた。


「うん、やっぱり、運動能力がすごいよね、あのスライム戦の時の動きなんて、僕には出来ないと思った」

「あの、かかと落としですね!」

最初の冒険の、スライムとの戦いを僕らは思い出していた。彼女の動きは毎回記憶に残ってしまうほど、鋭い動きなのだった。RPGは初心者なので、ゲーム自体は戸惑いながらプレイしているが、動きが、普通の人と、とにかく違う。


そして、それは自分の動きをそのまま反映する「マニュアル」操作だという。僕なんかは、ゲーム側が補助してくれる「セミオート」を使っているが、とてもあんな動きができる気がしない。たぶんあんなに綺麗なかかと落としは、ゲームのモーションに入っていない。


「うん、その前の、スライムの攻撃を避けるのもやっぱり凄いよね。このゲームにおいて、その能力はかなり効いてくるんだよね。たとえ攻撃力が高くても、避けたり、相手の攻撃に当たらないようにする能力がないと、やっぱりやられちゃうしね」

そう、僕が、SSSランクの武器「 神の剣 -デュランダル 」を持っていたとしても、無敵ではないのだ。強い攻撃を受けたらすぐにやられてしまう。彼女の体術も、かなり貴重な能力なのだ。


「そうですね、私も頑張らないと!!」

と奈緒子がそう言った。


「奈緒子はRPG詳しいよね。好きなの!?」

「はい、大好きです!」

僕の問いかけに、ノータイムかつ、掛け値なしの笑顔で応える奈緒子、ほんとにRPGが好きなんだなぁ、と僕と同じ人がいて嬉しく思う。


「特に『ラスト・オンライン』はかわいいお洋服も多いですしね!」

「洋服も好きなんだね」

奈緒子の、自分ではあまり思ったことのなかった、女子ならではの新しい意見に、感心する僕。


「それが新鮮だよね。男はやっぱり、ファッションとかリアルの事に興味ない人が、ゲームにハマってるイメージが強いしね」

奈緒子の新鮮な発言に自分の現実の服装を思い出して、苦笑してしまう僕だった。

そんな話をしていると、厨房からサラがやってきた。


「できたわよー。みんなー!サラさんのフルコースですよー!」

自慢気な笑顔のサラが、食べきれんばかりの多さの、食事を抱えて戻ってきた。

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