第四話『ハンドルネーム』

「私はサラ!本名は桜田恭子!」

と、自己紹介したサラ。


「サクラダで、サラか、面白いハンドルネームの付け方だね」と僕は感心した。ハンドルネームというのは、ネットゲームにおける名前のことだ。みんな、いろいろな決め方をする。


本名をもじったもの、まったく関係ないもの、好きな漫画のキャラクター。そこでもいろいろ個性が出て楽しいのがオンラインゲームだ。


「もー、本名は忘れてっていったでしょ!!」

と、拗ねた素振りで、感情を表現するサラ。

本名をうっかり言ってしまったことを、気にしているので

本名の事を言うのはこのくらいにしておいた方が良さそうだ。と思った。


「おにいちゃんに怒られちゃう。」

サラの発言に笑いつつ、お兄ちゃん子なのだな、と思う。


「ところで、このあとは何をしたらいいの?」

続けて、サラは僕に聞いてきた。


「このゲームは、割と何でも出来るのが売りなんだよね。オープンワールドに近いというか」

「おーぷんわーるど??」

僕の言葉に、サラは、ジュンの言ってることはちんぶんかんぶんだよ。といいつつ質問された。


「現実に近くて、何をしててもいいんだよ。バイトだけしていたっていい」

「さすがにそれはつまんないわね」

と、僕の説明に、バイトに明け暮れる日々を想像するサラ。


「ドラゴン倒しましょうよ、ドラゴン!!いるの!?」

ドラゴン、ドラゴンと連呼するサラ、そして、いるのか知らないので、心配になるサラ。


「もちろんいるよ!ファンタジー系の醍醐味だね。」

「おー!やっぱり!!」

と喜ぶサラ。その様子に自分で気がついた。


「知ってたわよ!?」

と半疑問形で、聞かれてもないのに、弁解するサラ。


「うはは」

と、笑ってしまう僕。


「自由が売りだから、行けるといえば行けるんだけど、瞬殺されちゃうので、少しレベル上げてからの方がいいね」

「おー!レベル上げ!!あの、つまんないやつでしょ」

と、笑うサラ。


「そんなことないよ!!レベル上げも立派なゲームだよ!!とはいえ、なにか、クエストをこなしながら、レベル上げたほうがいいだろうね。」

「くえすと??」

と、また、難しい離しをして、という表情のサラ。


「そう、細かいクエストがたくさんあって、レベルが上ったり、スキルをおぼえたりするのさ。とりあえず、ステータス見てくれる?」

と、ステータス表示をお願いする僕。


「ステータス・・・ステータス・・・」

ステータス画面を探すサラ。

後ろに回りこんで、操作を教える僕。


「一回腕を振ると、ステータスアイコンが出てくる。そして、ここをタッチ」

と、サラの腕を掴んで、ステータスボタンにサラの指を持ってくる。


なぜか、頬を赤らめるサラ。

ゲームに夢中になって、自然とサラの腕に触っていたことに今気がついた。


「ごめん、ごめん!」

僕は、そのことに、気がついて謝った。

そして、サラの指がステータスアイコンに触れた。


ステータス画面が表示された。

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