平穏に見えるこの日常で

@delorean8330

平穏に見える私の日常で

第1話

日常:つねひごろ。ふだん。平生。by国語辞典調べ


私の2ヶ月まえまでの日常はありふれたものだった。

友達と集まって雑誌みてメイクの話をしたりとか、洋服の話をしたりとか。

好きな男がいるとかいないとか。それに飽きたらゲーセン行って記念日でもないのに

「このメンツでは初っしょ♪」とかいいながらプリクラ撮ってみたり、カラオケ行って流行りの曲を歌ってみたり。それにも飽きたら最初に戻ってまた繰り返し、繰り返し。


そう、これが私の日常だった。

2ヶ月前までは。


そう、あの日まで私は、後ろの席にて無表情で文庫本をパラパラとめくる陰鬱根暗メガネ女とクラスで評判の雨音密とはクラスメイトっていう括り以外での関わりなんてなにもなかった。

私的に話かけることなんてあり得るわけもなく、よしんば声をかけたって落ちた消しゴムを拾ってもらって「サンキュー」って言ったり。そんな程度だ。


あの日、あの時、私が選んだ行動で。

私と彼女と彼女を取り巻く人間関係に縁が生まれた。

そしてその縁にて私は――私が日常としてきた日々を捨てる事になった。


いや、“捨てる事になった”なんて言い方はおかしいか。

“捨てていいと判断した”これが正しい言い方だよね。きっと。


私はあの日の自分の行動を後悔なんてしていない。

私はあの日に出会えたことを感謝している。


この空虚でツマラナイ灰色の世界に彼女達は色を塗ってくれた。

私に「楽しい」って事を教えてくれた。

それがたとえ――口では決して言えないような事であったとしても。


私は今「日常」を生きている。

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