幕間4

父兄


「話は聞かせてもらったぞ、〈死神〉!」

「話? 何の話だい?」

「オレの妹が……美しすぎる我が妹が! 男のマンガ家の担当になったそうじゃないか!」

「そうかそうか。彼女が、青年の担当になったか」

「あんたが担当していた男だろう? 今すぐ編集者に戻れ! そうすれば、妹が男の担当なんかする必要がなくなる!」

「悪いがな、お兄さん。俺が戻ったところで、あの青年の担当は、お前さんの妹のままだぜ? きっとな」

「そ、そんな……!」

「何だい? 彼女、男嫌いだったのかい?」

「男の担当なんかになったら、妹が何をされるか! 何をさせられるか! 妹は、あんなにも美しいんだぞ!? マンガ家という立場を利用して、編集者である妹にエロい事を強要するに違いない……!」

「あの青年は、そういうことをする男じゃないと思うがな」

「『リアルなパンツのシワを描きたいから、パンツ見せて』『パンツの匂い嗅がせて』『パンツ食べさせて』と言うに違いない!」

「……さすがにさすがに、食べはしないと思うがね」

「『パンツ見せて』は言うのかぁぁぁっっっ!?」

「……可能性は否定できないな」

「妹が穢されるぅぅぅっ! きっと『乳首見せて』『オシッコするところ見せて』『お尻の穴見せて』『アソコ見せて』『イクところ見せて』『脳みそ見せて』も言うに違いないではないかぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!」

「『脳みそ見せて』は、言わないと思うがね」

「他は言うって事か!? そうだろう!? そうなんだな!?」

「落ち着けよ、お兄さん。彼のことだ。そういうのは、恋仲になってからにするだろうよ」

「恋仲だと!? 濃い仲だと!? そんなの、兄であるオレが許さん! どこの馬の骨とも知れん新人マンガ家に、妹の処女膜を破る権利などないのだ!」

「──せがれが『馬の骨』なら、父親である私は『馬』という事になるのかね?」

「誰だ!?」

「久しぶりですな、〈ダイナミックな戦車〉」

「せがれが世話になったな、〈死神〉」

「せせせせせ〈戦車〉殿……!? まさか、例の新人マンガ家は、〈戦車〉殿の息子殿であらせられる……?」

「そうだ」

「し、失礼しましたぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!! そうだとは露知らず、暴言を……!」

「気にしないで結構。それにしても、言い得て妙だと思ってね」

「な、何がでしょう……?」

「戦車──チャリオットは、言わば『戦闘用の馬車』だ。〈戦車〉の〈アルカナ〉たる私が『馬』とは、言い得て妙ではないか」

「はははは、そうですな」

「せがれが、君の妹さんの世話になるようだね」

「い、いえ! 妹の方こそ、ご子息のお世話になりますですであります!」

「あれも、もう25だ。結婚しても不思議じゃない歳なのだが、いまだに恋人ができないようでね」

「ご子息と妹が結婚すれば、わたくしめと〈戦車〉殿は義理の親子に……!」

「いやいや、お前さんの父にはならんだろう」

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