エンドレスラン
今谷嶺六
第1話
砂に
街も人も木々も。
今は美しい思い出も、やがては砂に帰るのだろう。
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僕は気がつくとだだっ広い
助けなくては、助けなくていけない。
大丈夫。この距離なら届く。助けられる。
しかし、
「…!!…!!」
僕が誰かの名前を声の限りに叫ぶなか、その白い手はゆっくりと砂に飲み込まれていく。
白い手は完全に見えなくなった。
砂が落ち続けていく中心を
息が上手く吸えない。苦しい。
それはまるで細い汽笛のような音だった。
自分の荒い呼吸音で目が覚めた。
嫌な、夢だった。
寝起きのあたまで先程の夢を思い出す。
寝る前に砂漠に関する本を読んだからだろうか。夢の中の砂漠の光景が頭から離れない。
永遠に広がる砂の大地。
それが僕らのおかれている現状だった。
ふとサイドボードの開きっぱなしの本に目をやる。
僕の祖父のそのまた祖父の代では大都会だったという注意書が入った写真に写る砂の大地は、朽ち果てた建造物を残すだけで、この世界を
急速に広がった砂漠。
先人たちはそれをくい止めようとしたが
僕の知っている世界地図は大部分が黄色く
『私は覚えてないけれど昔は自由に行き来できたそうだよ、賢一。あんな化け物どももいなくてさ、街と街と、世界を自由に歩けたそうだ。』
小さな頃、祖父の
小さな子どもでも知っている。
これは世界の常識だった。
ガイストと呼ばれる砂漠を
例えばもし砂漠のなかを一人で歩いてみたら、たちまちガイストの
文字通り、
ガイスト。彼らはどこで発生したかも分からない砂漠の王者だった。
砂漠を進む電車といっても、従来の電車であればガイストに襲われたら一たまりもない。
そこでガイストの攻撃に耐えうる硬度をもった車体と、車体をを取り囲むように配置された護衛車両に乗った駅員さんに守られて電車は砂漠を走るようになった。
彼らはガイストとの直接的な戦闘を行い、時々死者も出る。
僕は直接、ガイストを見たことはないが、挿し絵でみる奴らはおどろおどろしく、死と隣り合わせでも戦う駅員さんを尊敬したものだ。
夢から覚めたばかりの頭でも思う。
どうしてあんな危険な仕事ができるのだろう。
僕には無理だ。
…思考が薄く引き伸ばされていく。
うつらうつらとまた、眠りの世界に旅立った僕は夢の続きを見る。
あの白い手は僕の手だった。
純白の手袋をした僕の手だ。
苦しいのは砂に呑み込まれて肺から空気が押し出されているからだ。
流砂は動き続けている。
止まることのない円の中心には沈黙だけが残った。
僕はあと5時間後に目を覚ます。
その時には、この夢のことを何も覚えていなかった。
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