第155話/公開処刑

第155話


 さて困った。俺は魔王最有力候補のツキシドとして、グール族の戦争に参加協力しなければならない事態になってしまった……(汗)。


 当たり前だが協力なんて無理だ。最終兵器呼ばわりされたって無い袖は振れない。俺にはせいぜい記憶力が高いくらいしか取り柄がない。


 グリーヴァに命じられ、俺の出番になった時が思いやられる―――。


(―――戦場という大舞台で俺の無能ぶりが盛大にバレる。俺のせいでグール族はピンチに追い込まれ、グリーヴァは期待を裏切られて怒り狂い、俺の首を刎ねるんだろう……)


 やばいなこの公開処刑。命を狙われるのもそうだが、無能を晒さなければならないのが超絶しんどい。


(……けど、読者的にこのお約束な嫌がらせはどうなんだ。今回ははっきりと先の展開が読める。俺にとってもこれ以上の嫌がらせはないと思う。ホントもう、俺の人生の汚点になる……)


 あまりに惨すぎて逆に『メシマズ』だ。正直今の俺に読者を気にかける余裕なんてないが、俺自身がこの公開処刑を回避したくてたまらない。回避できなければ俺の精神が殺されかねない。魔王ルートは消失したも同然だ。


(……そして戦争後、グール族の残党が声を大にして言い触らすんだ。俺が魔王に相応しくない理由を!)


 このままでは勇者ルートだけになってしまう。それでいいのかと言われたら諦めがつかない。しかし……しかし肝心の打開策が見出せないのだ。


(戦争に加わらず、かつアリス達を解放。ついでにグリーヴァの宝具も手に入れたい。うん、どれも達成できる気がしない!)


 というか俺は再び牢部屋に閉じ込められてしまっていた。ヒツマブシと穴を掘った形跡が見つかってしまったので、今度は見張りのグール達が扉の向こうに立っている。晩餐の時間になるまで自由行動できないのだ。


「ぴゅ~ん……」

「お前もお手上げか。そりゃ腹も減ってるし頭も回らないよな……」


 俺はヒツマブシの分泌液をぺろりと舐める。相変わらず美味だが俺の食欲はほとんど満たされない(空腹)。


「……くそぅ。こんなの絶体絶命だ……」


 の時間は刻一刻と迫っている。打開策を見出すなら晩餐前の今しかない。

 にもかかわらず、俺にはアイデアの一つすら頭に浮かんでこなかった―――。

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