第10話 入りますっ!

オタク趣味の友達を作りたい部に入りたいって?

いや、ダメだろう。こんな茶髪三次元美少女が来ちゃダメなところだし。それに、どんな部なのかを知っていないだろうし。


「入部はしない方がいいんじゃないかな?」


なんせ、俺の作った部活はオタク趣味の友達を作ることが目的の部だ。

今のところ予想ではあるが入ってくる部員はおそらく男共がメインだと俺は思っている。しかもどこから見てもオタク丸出しのやつらが。

そんな部にこんな可愛いけど3次元な茶髪三次元美少女を入れるわけにはいかない。

入って後悔されるよりは、今のうちに断っておいたほうがいいだろう。


「なんでですか?」


「いや、だってほら、この部はいろいろとあれだし……」


「友達を作ることが目的なんですよね?」


茶髪三次元美少女はポスターを指さしながら言う。


くっ……!

その、純粋無垢な瞳が眩しい!


「うん。まぁそういっちゃ、そうだけども」


オタク友達です!と言っても通じないだろうしな。

通じたら通じたらで引かれそう……

違う!引かれればいいじゃないか!

そうすればこの茶髪三次元美少女は俺から離れていく!素晴らしい人生(青春)をお互い謳歌できる!


「違うんですか?」


「違くはないけど、普通の友達を作るわけじゃないんだ」


「普通の友達じゃない……?えと、どういった友達を作るんですか?」


よし。これでさよならだ茶髪三次元美少女。


「オタク趣味を持った友達を作る」


「お、……オタク?」


いいぞ。これは確実に引いているな。

あとは茶髪三次元美少女が俺から離れていけばいいだけだ。


「そう。オタクだ」


「オタク……そ、それって」


茶髪三次元美少女は顔をどんどん引き攣った表情にさせていく。まっ無理もないな。

最近はオタク趣味のイケメンとかが増えて、オタク=キモイという風評は無くなってきたとは思う。

ただ、無くなってきたというだけであって完全にそういったものが無くなったわけではない。

むしろ、イケメンがオタク趣味を持っていて、へぇ意外程度で思われるものが、俺みたいな顔面乙なやつらがオタク趣味を持っていたら超キモイと思われちまう。

差別だ。だがこれは仕方ないと思うしかないかもしれない。今の時代がそういったものを作り上げてしまったから。


だから、今、目の前にいる茶髪三次元美少女が引き攣った表情をしていてもなんの不思議もない。むしろ普通だ。


さて、あとは茶髪三次元美少女が何かしらの言い訳を始めてこの場を立ち去るのを待つとしよう。


「あの、えと、その」


うん。何を言えばいいのか困ってるな。

何でもいいぞ。とりあえずこの場から去っちまうんだ。


そして、茶髪三次元美少女は口を開く。


「オタクって何ですか?」


「おう。じゃあな……ん?え?あれ?」


今なんと?


「あの、だから、オタクってなんですか?」


えぇー。引くどころか、オタクを知らない……だと!?

そ、そっからかー!!まずはそっからなのかー!!


「え?マジで言ってる?」


「はい。まじですけど?」


お、おふっ。

ちくしょー!

俺の計画全然ダメじゃねぇーかぁ!!


いや、待て俺。よく考えてみろ。

にわか知識で多少の許容力があるよりは、全くの無知な状態の茶髪三次元美少女を俺が1からオタクを教えることにより、徐々に引いていき、そして最終的には完全に引いて俺との関わりを無くすくらいまでにすればいいじゃねーか!


これは逆にチャンスだ!


「そうか。じゃ教えるよ。オタクを」


「は、はい!よろしくおねがいします」


ぺこりとお辞儀をする茶髪三次元美少女。

その無垢な笑顔がいつまで保っていられるか。



「とりあえず、これを見た方が早いか。ほい」


俺はとりあえずスマホに入っている嫁たちの画像を見せる。幼女から高校生、大学生と多種多様な嫁たちを見せた。(心に決めた本妻はいるぞ!)もちのろんでちゃんと引いてもらうために際どい(主に胸とかがうまい具合に隠されてるやつ)画像も見せた。


そして、嫁たちの画像を見た茶髪三次元美少女が口を開く。


「うわ〜!。可愛い女の子たちですねっ!」


うん。これななんとなく予想できてたよ?

だってこの茶髪三次元美少女。どことなく桃と同じ雰囲気なんだもんっ!

じゃあ見せた意味ねぇじゃねかっ!


まぁこれはあれだな。準備運動的な感じだなうん。

けっこう本番に近い気もするけど。


「……うっ」


しかし、目を爛爛にしていた茶髪三次元美少女が急にうめき声をあげた。

見ていた画像はありの〜ままの〜姿を見せていた嫁だった。ちなみにあなゆきは見てないぞ俺は。


「やっぱ、嫌だよな。そんなもん見るのは」


男の俺からいや、二次元美少女LOVEな俺からしてみれば、ありのままの姿を見せている嫁の画像なんて眼福なんてものじゃないほどの一品なのだが、女の子からしてみれば嫌なもの以外なんでもないだろう。


「いや違うんです……よ」


必死に言い訳を考えているのか、言葉をうまく話せれない茶髪三次元美少女。

……やっと、引かれるか。


「違くないだろ?いいんだよ。べつに。嫌なものは嫌って言ったって」


「ほ、ほんとに違うんですよ……!嫌とかそういうのじゃなくて」


そして、スマホを見ながら口を開く。


「私より……胸があるなと思いまして」




ふぅ……












なんて俺は言えばいいんだろう……





「最初のほうの女の子たちはその、小さいから、ただ純粋に可愛いな〜って思ってたんですけど、途中くらいから徐々に大きいな〜って思ってて、その、それで、これで」


とどめをさされちゃいました。

と最後に茶髪三次元美少女は言った。


俺は何も言えなかった。

何を言えばいいのかが分からなかった。

だってそうだろ?胸なんか気にすんななんて言うセクハラ発言なんて俺はいいたくないし。


「えー。ていうことはなに?君は二次元美少女このこたちを見てたと言うよりは、胸を見てたわけ?」


「はい。どういった娘こが好きで、どんな体型が陽向さんには好みなのかを知りたかったですし」


そんな風に見てたら引かれねぇーじゃん!


「あの、えと、それでオタクと言うのは」


「え、あ、うん。こういう娘こたちが好きな人のことを言うんだよ。ざっくり言うと」


「そうなんですか!」



「で、そのどうする?俺はこのオタク趣味をもった友達を作りたいから入ってるんだけど。やっぱり君も入る?」


よくよく考えたら、茶髪三次元美少女にはオタク趣味の友達を作るどころか、友達を作る必要なんてないだろうから、その辺を説明して断れば良かったじゃねーか。


「そうですねぇ。オタク趣味は良く分からないですしね」


おっこれはいい感じだ。

なんだ最初からこうすれば良かったじゃないか。


「でも彼女は入ってるんですよね?」


ん?また桃のことか。

なんか桃になんかあんのかな?


「まぁそうだけど」


「入ります!」


「え?やっぱり入るの?」


「はい!」



あの後も何度かやんわりと入るのを断ったのだが、茶髪三次元美少女は入るのを辞めなかった。


さっそく部室に行きたいというので、俺と茶髪三次元美少女は部室に向かっている。


「なんかドキドキしますね」


「なんで?」


「この人気のないところを陽向さんと歩いてることがです」


確かに俺も嫁とこんなところを歩いたらドキドキして昇天しちまうかもしれない。


「俺もするかも」


「わ、私は心の準備は出来てますからっ!」


「お、おう」


そんなに桃に会うのに緊張してんのか?

まぁそうか。俺も人見知りだからあんまり知らないやつと会うときは緊張するし。


「あのそれで彼女はどんな人なんですか?」


「ん?あーそうだな」


桃か。桃といえば……


「すごいやつではあるな。つか怖い。あんま逆らえないな」


心とかもうナチュラルに読むし。

逆らったらあとで何されるか分かったもんじゃない。


「意外です!陽向さんは尻に敷かれるタイプなんですね」


尻に敷かれる?


「いや、敷かれたりはしねーよ」


なんで俺があいつの尻になんかに敷かれなきゃならねーんだ。

ま○チキ!のお嬢様になら敷かれたいけどさ。


「じゃあ引っ張って行くんですね!私も引っ張って行かれるの……好きですよ?」



桃を引っ張って行くなんて嫌だな〜。



なんか茶髪三次元美少女が俺を下から覗き込むように見てるだけど。あれか?昼にくった焼きそばのソースかなんかがついてたか?恥ずかしっ!


「あの彼女は見た目はどんな感じですか?」


「そうだなーまぁラ○ライブのエ○チカみたいな感じかな」


俺はラ○ライブだとハラ○ョー推しだっ!


「ら、ラ○ライブ?そ、そうなんですか」


おっとたとえが解りづらかったか。


「まぁ可愛いとは思うぞ」


3次元としてはと言う前に茶髪三次元美少女に言葉を遮られた。


「そうなんですか。陽向さんに可愛いなんて言ってもらえるなんていいですね」


「何言ってんだ?君も十分に可愛いだろ」


3次元としてはとまた言う前に言葉を遮られる。


「あ、ありがとうございます」


「お、おう」


「あっ陽向さんもカッコイイですよ!白髪なんて似合ってますよっ」


「お世辞はいいから」


「お世辞なんてそんなっ!」


この顔をカッコイイなんて言う茶髪三次元美少女の目をかなり心配した俺だった。今度いい病院を桃にでも紹介させよう。



「なんかあいつさ機嫌悪かったから気をつけろよ」


部室に入る前に茶髪三次元美少女に忠告をする。

俺がポスターを貼りに行く前に部室に行ったとき、なぜか桃に怒られたからな。んで結局一人でポスター貼りに行ったし。


「は、はい。分かりました」




「うぃーす。貼ってきたぞ」


まだ怒ってるんだろうなーと思いつつ、ドアをあけ中に入る。


「もう、陽向くん遅いですよ……!その人は?」


ん?若干ほとぼりはおさまったかな?


俺は後ろに隠れるようにして立っている茶髪三次元美少女を紹介する。


「あぁ新入部員だ」


「新入部員……ですか」


なんだろう。空気が変わった気がする。


「あ、あの霧咲夢希きりさきゆきです。よろしくお願いします」


茶髪三次元美少女が自己紹介をする。

へぇ名前霧咲っていうのかーなんて思っていたら、霧咲は桃に近づいっていった。


「篠原さんですよね?」


「はい。そうですけど」


さすが桃だな普通に知られてる。


「私負けませんからっ!」


「え?」


「ん?」


霧咲の一言で空気が完全に変わった。


二人の三次元美少女が睨み……見つめあってる?

なにこれ、修羅場?


俺の同級生と顔見知りが修羅場すぎる

なんつって。

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