雲神様の箱

改稿版4話：雲の氾濫

【主な登場人物とあらすじ】

■主な登場人物

　※これ以降、表記等は文庫版にあわせます。

セイレン…土雲（つちぐも）の一族の娘。石媛の双子の妹として生まれた「災いの子」。

雄日子（おひこ）…高嶋（たかしま）に拠点をおく若王。父の意思を継ぎ、湖国の刺史（しし）を務め、淡海（琵琶湖）から北の海（日本海）までの一帯を司る。

角鹿（つぬが）…雄日子の側近。高向（たかむく）の太子だったが、放棄して雄日子に仕えている。

赤大（あかおお）…雄日子の守り人の長であり、護衛軍の長。

藍十（あいとお）…雄日子の守り人の一人。出自は高向（たかむく）。

日鷹（ひたか）…雄日子の守り人の一人。出自は木の国の海人族。

帆矛太（ほむた）…雄日子の守り人の一人。出自は出雲（いずも）。

瑚弛（こゆる）…雄日子の守り人の一人。出自は高嶋。新羅（しらぎ）の一族の血を引く。

黒杜（くろもり）…雄日子の守り人の一人。出自は高向（たかむく）。

荒籠（あらこ）…河内（かわち）の馬飼（うまかい）の若長。軍馬や商い用の馬を司り、諸国を回っている。

目子媛（めのこひめ）…尾治（おわり）の王、草香（くさか）の長女。

凡（おおし）…目子媛の兄。次期尾治王。

草香（くさか）…尾治（おわり）の王。肥沃な大地と湾岸の水運を司り、東国への門番役を務める。

八鶴来（やつるぎ）…尾治の武人。凡の守護を務める。

花咲媛（はなさきひめ）…草香の末子。

斯馬（しば）…もと大和の霊（く）し宮（みや）の長。天文博士、歴史博士であり、呪術師。

柚袁（ゆえん）…斯馬の一番弟子。

牙王（がおう）…雄日子に仕える呪術師。出自は出雲（いずも）。

麁鹿火（あらかび）…大王の護衛を務める物部（もののべ）氏の長子。荒籠の友人。

金村（かなむら）…大王の護衛を務める大伴（おおとも）氏の長子。麁鹿火の幼馴染。

●前話「天と土の霊しきもの」までの主な登場人物

秦君（はたのきみ）・瀬利（せり）…秦氏宗家の主。秦氏は土木などの最先端技術を誇る一族。

和邇君（わにのきみ）・涼背（すずしろ）…和邇氏の長。泉川の水運を司る。

平群真鳥（へぐりのまとり）…大和朝廷の大臣（おとど）。雄日子暗殺を指示する。

石媛（いしひめ）…セイレンの双子の姉。

水媛（みずひめ）…セイレンと石媛の祖母。「土雲媛（つちぐもひめ）」として土雲の一族を導く。

フナツ…土雲の一族の女。生まれつきの盲目で、セイレンの育ての親。

チトネ…土蜘蛛の一族の男。セレンの父、ツツの義父。

ツツ…土蜘蛛の一族の少年。生まれつき盲目の〈守り手〉。

セレン…土蜘蛛の一族の少年。「大地の神」に殺されている。

■主な地名について

●飛鳥（あすか）…現在の奈良県周辺。三輪周辺の一帯の総称として使っています。

●難波（なにわ）…現在の大阪府周辺。日本最古の人工国際港、難波津を中心に栄えていたようです。

●住吉（すみよし）…現在の大阪府大阪市住吉区周辺。古代には天然の地形を生かした港がありました。

●木（き）の国…現在の和歌山県周辺。

●高嶋（たかしま）…現在の滋賀県高島市。琵琶湖の北端あたり。雄日子の本拠地です。

●高向（たかむく）…現在の福井県、九頭竜川流域を想定しています。角鹿の本拠地です。

●淡海（あわうみ）…現在の琵琶湖です。

●息長（おきなが）…現在の滋賀県野洲市周辺。琵琶湖の岐阜県側。雄日子の支配下にあります。

●樟葉（くずは）…現在の大阪府枚方市周辺。高嶋軍が駐在して守っています。

●河内（かわち）の牧（まき）…「牧」は牧場で、馬を飼育しています。現在の大阪府四条畷市を想定しています。荒籠の本拠地です。

●深草（ふかくさ）…現在の京都市伏見区周辺。秦君（はたのきみ）・瀬利（せり）の本拠地です。

●尾治（おわり）…現在の愛知県周辺。治水技術に長けていたそうです。

●吾妻（あづま）…現在の関東の総称として使っています。中央政権とは離れていますが、力をもった地方勢力がありました。

●美濃（みの）…現在の岐阜県周辺。長良川など、河川の水運を使って下流域と交流していたと想定しています。雄日子の祖母が美濃の媛にあたり、湖国とは血縁による友好関係を築いています。

■4話＜雲の氾濫＞のあらすじ

※序盤（2章まで）のネタバレを含みますので、苦手な方は次ページへお進みください。

雄日子を守る。フナツとツツのためにも――と、高嶋（たかしま）の宮中に出入りするようになったセイレンは、侍女に扮し、慣れない宮仕えに励んでいた。

一方、尾治（おわり）へ出かけていた荒籠（あらこ）は、雄日子の使者として、尾治王にとある依頼をする。尾治は、過去に何度となく新しい大王の擁立に関わってきた大国。湖国がなんとしてでも手を取りたい相手だった。

また、飛鳥の有力豪族、大伴氏（おおともし）と物部氏（もののべし）の嗣子たちも高嶋へ集う。

高嶋の宮に集まる人々のさまざまな思惑が、乱雲のごとく立ち込める――。