エッセイ 幸せ
私にとって幸せとは何だろう。
少し寒い風が顔に当たる。家を出る前にお肌のケアをしてきてよかったと思いながら、自転車をこぎ続ける。
今日は曇り。花粉もそんなに飛んでないだろうと思っていたけれど、自転車をこぎ始めて三分。もう花粉の猛威に目と鼻が悲鳴を上げていた。
緑色の自転車は今月の頭に買った。前の自転車を使い続けたかったけれど、パンクしたことをきっかけに自転車屋さんに行ったら「もう買い換えたほうが安いよ」とお兄さんに言われてしまった。
ブレーキも、ギアも、タイヤも全部お年寄り。そりゃあそうだ中学時代から十年は乗っているのだから。毎日30キロとか漕いでいたもの。ごめんね。
そういう経緯でちゃっかり新車を買ったのである。来月の引き落としが恐ろしい。
その自転車にまたがり、駅へ向かっている。
ただただずーっとまっすぐの道だけれど、自転車専用の道路があって、歩行者を気にしなくていいからずいずい進む。
だけど時々、車が路上駐車していると、ここはあなたたちのパーキングエリアじゃないのに。なんてことも思ってしまう。
これは私が自転車に乗っているから思うこと、たぶん車に乗っていたら当たり前のように私も自転車専用道路にパーキングしてしまうのだろうな。
駅前は工事中。発展途上のこの駅の将来が楽しみだ。今は道が狭くて自転車を押して通らなくてはならないけれど、駅前の工事が終わったらどんな風になるのか楽しみだ。
image
行きつけのコーヒー豆屋さん。朝七時からやってるコーヒー屋さん。今日は豆を買いに来た。
いつも何にしようか悩んでしまう。豆の種類は二十種類くらい。その中でも私は深入りで三位の少ないフルーティなものを好む。
フルーティと言うと酸味も強く出てくるようだけれど、それでも深入りにしてもらう。家でいれるときには時間がたってもしっかりした味がほしい。
今日はマンデリンにした。サービスで飲める珈琲はブラジル。ブラジルはブラジルでもブラジルカフェヴィーニョ。
なんだかおしゃれ。インド系のにおいがする。
そうそう、前に買った豆でものすごく口に合わないものがった。とても苦くて、普通にペーパードリップでドリップすると苦みも香りも強く出てしまった。それがロブスタの木。
こいつは厄介だった。コーヒー初心者の私にとってこんなに苦いものがあるのだろうか。名前勝ちしているその豆に私は説教をかました。
結局その豆はエスプレッソ用として使っている。深い苦みはエスプレッソにするにはとても良かった。
豆によって変わるのだなぁと思う。産地や焙煎具合でも変わってくるのだから不思議だ。
さて、今はそのブラジルカフェヴィーニョという少し酸味があるけれど口の中でふんわりと広がる感じ。甘くもなく、苦くもなくちょうどいい。
そんなコーヒーを飲みながら私は今この文章を書いているわけだが、朝から人がくるくる。
冷気と、暖気がちょうどよい加減の席に座り、文頭のことを考えようと思う。
「幸せとは何か」
うん。難しい。けれど簡単だ。
今私は幸せだ。なぜならおいしいコーヒーと、コーヒーの香りに包まれて、こうして文章を認めている。これだけで幸せだ。
けれど、そういう意味ではないのだろう。私の幸せとは一体何だろうか。
昔からこれは考える課題ではあるが、年に一度くらいまた考えてもいいと思う。
例えば、誰かに認められたいとか、お金持ちになることとか、そんなことを考えるのだろう。
幸せの価値とは何か、本来はこちら問いかけているのではないだろうか。
どんな瞬間も幸せというものをかみしめている人は幸せとはとても小さなものであり積み重なるものである。。けれど、いつもいつも何かに追われて、今日はだめだなんて思っている人の幸せの価値は大きなものになり気がつけば高望みするのではないだろうか。
菫の花言葉をご存じだろうか。あの小さな紫色の花。春から夏に向けてそこかしこに咲いているのだが、見慣れているせいか、それとも見えないくらい小さいからあまり焦点を向けられない。
だからだろうか、菫の花言葉は「小さな幸せ」
私は菫の花を見つけると幸せな気持ちになる。今日も会えたね、一日頑張ろうね。なんて話しかけることだってある。菫は見つかりにくいけれど、見つけられたらそれだけで幸せなのだ。
幸せとは、毎日普通に充実した日々を送ること。
なんてありきたりなのだろう。
それもかけがえのない幸せなのだなって。
そう、そして、簡単だと言ったが、そんなことはない。幸せにたどり着くには長い年月、そして経験、「実感」が必要になってくる。
きっとどこかで私と同じように幸せについて考えている人はいるのだろう。
今の私の幸せは、読書にふけりながら、音楽を聴き、たまに鼻歌を歌ってコーヒーを飲む。
そんなささやかな時間だったりする。
では、これで。
もう一度自転車にまたがり寒い風を受けながらゆっくりと帰るとします。
その前に本屋さんに寄ってみようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます