耐性と魔力が恵まれていたら無双とか楽勝でしょ(震え声)

ユール

第1話ー「テンプレってのは残酷だよ」ー

きっと、僕は憧れていた。

異世界転生とかそういう面白そうなことをしてみたいと思っていた。

だけど、僕は今、思うことがある。

なぜ、ここまでテンプレなのだろうか。





1話ー「テンプレってのは残酷だよ」ー




高校の昼休みと言えば、みんなでわいわい言いながらご飯を食べたり、ゲームをしたりする時間である。

もちろん僕もその中の一人だ。

友達とご飯を食べ、駄弁って昼休みを過ごす。


いつものように昼休みになると部室棟の裏の柵を登り、二階へと上がる。不思議なことに、ここは下から上がる方法が裏の柵を登ってから二階へと移動するというものしかないのだ。なぜか、と聞かれても僕にはわからないのでどうしようもない。


二階に移動すると、いつものように海藤かいどう優我ゆうががブルーシートをひいて、そこで寝ていた。枕をもってきているあたり昼寝ガチ勢である。ついでにいうとここは日もいい感じであたるので昼寝にも最適だ。


優我の横にあるコンビニ袋からいつものようにおにぎりを取りだし、むしゃむしゃと食べる。いつも食べてたら体に悪いということは承知しているが弁当を作るのがめんどくさいのでいつもこれで終わらせている。

あっ、きちんとお金は払ってるよ?優我は買いに行ってくれてるだけだから。


数分経つと優我が目を開け、僕の方を見てくる。


「おはよう。優我」

「あぁ…………………おはよう裕也」


さて、僕の名前がでたところで、自己紹介をしておこう。

僕の名前は木崎きさき裕也ゆうや。高校一年で、将来の夢は高校の先生だ。友達はあまり多くはない。いても無駄だとか思ってない。ただ、友達ができないだけさ。

顔が暗く、いつも眠たそうな顔をしている僕に近づいてきてくれるのは数少ない人たちだけなんだよ。


「寝起きにお前の顔はやっぱキツいわ」

「最低だなオイ」


僕がそう言うと優我は苦笑する。

さすが、僕の友達とだけあって、優我もなかなかユニークだ。

自分のことを『神様』といい、面白いことを探しに人間のいるこの世界に来たと言っている。

信じてはないのだが、ラノベとかの読みすぎかどうかなのかはわからないが、少しありえる話だと思う時もあるのが現実だ。


「お前ってさ、いじめられてる人がいたらどうする?」


優我はいつも唐突に質問する。あたかも人間のことを知りたいというような質問をだ。


「そりゃあ、見て見ぬふりするんじゃないかな?先生に言うかも知れないけど、まぁ、第一選択肢は見て見ぬふりだよ。大体の人間はそうだよ。純粋な正義で助ける人もいるかもしれない。上っ面の正義で助ける人もいるかもしれない。勇気を振り絞って助ける人もいるかもしれない。だけど、すべての人間がそうじゃないし、そもそもそういう人間は少ないよ」

「じゃあ、もしいじめられているところを見たら、見て見ぬふりをすればいいのか?」

「優我が助けたいと思ったら助ければいいし、助けたくないのだったらそれでいいと思う。近くの大人に言うってのもありかな?」

「つまりは助ける人もいるけど、そんな人間は少なくて、ほとんどは見て見ぬふりだとか?そんで、自分が遭遇したら好きなようにしろと?」

「そういうことだよ」


コンビニ袋からジュースを取りだし、それを飲みながら返答する。


「神様の世界ではどうなの?」

「うん?あぁ………………あそこではいじめとかなかったな。実力主義だったけど」


優我は上を向き、そう笑う。

こういう仕草も、優我が神様だと信じてしまうものの一つだ。


「そろそろ帰らなくていいのか?もうすぐ予鈴なるぞ?」


優我に言われて携帯で時間を確認するとすでに時間は1時を過ぎていて、もうすぐ予鈴がなる時間となっていた。

急いでゴミをコンビニ袋に入れ、それを手にもつ。ゴミはきちんとすてるのが僕である。

今度は柵を降りて、校舎へと帰還する。

そして、教室まで移動したところで僕は何か、不安な気持ちになった。

いつもはうるさい教室がなんと、静まりかえっているのだ。

これは、何か起こるかもしれないと、教室の扉を開けると、そこにはきちんと人がいた。

けれど、全員その場で膝を床につけ感じの状態になっている。


「───────くるなっ!!」

「っ!?」


教室へ一歩入った瞬間、そのまま何かに押され、地面へと叩き落とされる。


「────なんなのこれは………………」


不思議と、この教室に入ればみんなの声が聞こえた。まるで、この教室だけ、『別の世界』のような気がしてならない。

いや、これは………『別の世界』だ。この教室だけ、絶対になにかが違う。


「さて、全員揃ったな」


男の声が聞こえる。その声を聞くとなぜか、記憶の中になにかがはいってくるような感じがした。


「君たちは選ばれた。これは、どうしようもない。大人しく転生してくれ」


男はそう言う。

男は誰かに似ている。に。だけど、思い出せない。


「案外早いな。もうすぐ、君たちはこの世界から消える。向こうの世界ではいろいろと、苦労するだろうから、俺がひとつだけ全員に知識をやろう。その世界での言語だ」


ぐちゃぐちゃ、と嫌な音が脳内に響き渡ると同時に何かがはじめから知っているような知識として入ってくる。


「さぁ、────行ってこい。運が悪くも良い少年少女たちよ」


その言葉とともに僕たちの目の前に光が出現し、すべてを飲み込んだ。





*************************************************

「おぉっ!!召喚されたっ!!これは本当のものだったんだっ!喜べっ!これで我ら人族ヒューマは勝利したも同然だ!!」


目を開けた瞬間、僕は理解した。

この世界に僕たちは勇者として召喚された、と。

これは………テンプレだ。圧倒的テンプレ。

勇者として召喚され、勇者として、こきつかわれる。そんなブラック職業『勇者』が見える。だから、僕は思う。


運命というのは残酷で、テンプレというものも残酷であると。











────こうして、物語は始まった────













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