ゴルカッソス攻略戦 03

「クウっ、大丈夫か?」


 駆け寄り確認する俺に、クウは返事をした。


「……うん、なんとか……でも」


「でも……どうした?」


「体が熱過ぎて、まるで高熱を出した時みたいにクラクラする……」


「…………」


 今、クウに無理をさせる訳にはいかない。正常な状態じゃないのにこんな分不相応な強敵と戦い続ければ、いつ即死級の攻撃を食らうか分からないのだ。


「……分かった。お前は回復するまで下手に動くな」


「でもっ、一人欠けて勝てる相手じゃないわ」


 まったく……。

 つくづくこいつ等は、使命感ばかりが強いらしい。


「今はしっかり回復して、首を撃破出来るチャンスを待つんだ」


「……でも……」


「仲間を信用しろっ!」


 俺が少し声を荒げて説得していると、前方からも声がした。


「クウちゃん! 無理しないで!」


 声がした方を見上げると、心配そうにヒナタがゴルカッソスの背中から降りて来ていた。ヒナタはクウの傍に駆け寄ると、自信に満ちた表情でこう告げる。


「今は大丈夫! 私とツキコちゃんでなんとかするから!」


「……ヒナタ……」


 クウが迷っていると、背後からツキコの声が聞こえた。


「クウちゃん、回復魔法撃つよっ!」


 振り向くと、弓を構えたツキコの体が黄金色に輝いていた。ツキコを包む柔らかい光が収縮していくと、それは矢の形に変化していく。


「ほんわかショットっ!」


 そう言って放たれたツキコの矢は、クウの体に吸い込まれるように消えて行く。そうして暫くすると、クウのお腹の辺りから黄金色の光が溢れ出し、全身を包み込んだ。


「ごめんねクウちゃん、これゆっくりしか回復しないの。だから暫くの間、そこでほんわかしててね!」


 そう言うと、ツキコは俺達の前に出た。


 俺は立ち上がり、片膝をついて迷っているクウの真後ろへと歩み寄る。

 そしてクウの背後でしゃがみ込むと――。


「きゃっ!」


 俺はクウの両肩を掴んで引き寄せた。

 クウは俺の両足の間でペタンと尻餅をつく。

 なんて熱さだ……。

 俺の予想以上に、クウの体は熱を持っていた。


「ちょっ、ちょっと――――隊長っ? 駄目よこんな時にっ!」


「ええい、落ち着けっ。一、二分位ならまた防護フィールドで護れるはずだ。防護フィールドは範囲が狭いから、絶対俺から離れるなよ」


 真面目な口調で俺が諭すと、暫しの沈黙の後、漸くクウは頷いてくれた。


「……うん」


 しかし。


「あーっ! クウちゃん、隊長に抱っこしてもらってるー!」

「なんですとーっ!」


 こちらに気づいたツキコの声に、ヒナタも反応している。


「うるさいっ! 防護フィールドで少しの間護っているだけだ! いいからお前等、前を向け! 危ねぇぞ――――ほらっ!」


 俺の視線の先では、先程クウにブレス攻撃を浴びせたゴルカッソスの首が、集まっている俺達を丸ごと蒸し焼こうと、追撃のブレスを吹きかけようとしていた。


「二人とも散れっ!」


 俺の指示を受けて、ヒナタとツキコは左右に散って回避する。


『ボシュウゥゥゥゥッッッ!』


 しゃがみ込む俺とクウに、ブレス攻撃が直撃する……。だが、視界の全てが真っ白にはなったものの、熱はおろか風圧さえこちらには伝わって来なかった。


「流石鳩野郎ご自慢の防護フィールドだ……なんとも無ぇぜ」


 俺が感心していると、突如ブレスの勢いが途切れた。


「どっせいっっっ!」


 目を凝らして見ると、水蒸気の向こう側で、ブレス攻撃をしていた首が大きくしなりながら弾かれている。どうやら、横からヒナタが殴りつけたらしい。

 更にしなる首に向けて、ツキコが矢を放って追撃している。


『バシュンッ! バシュンッ! バシュンッ!』


 放たれた矢は、複雑に動く首に見事に命中していった。


『ギャゥゥゥゥゥッッ!』


 連続的に攻撃を受ける首は、苦しそうな声を上げている。明らかに先程より首の耐久度が落ちている気がする。俺は直ぐ様、二人に向けて指示を出した。


「攻撃が効き易くなっている! そのまま敵にダメージを蓄積させるんだ! 勝負の時は近いぞっ!」


「「了解っ!」」


ヒナタとツキコは大きな声で返事をした。

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