作家少女とオネエ男子

折上莢

第1話 出会いは運命?

その出来事は、偶然か…。

はたまた運命か。


ある日ね、私は中庭で日向ぼっこしながらクロスステッチをやっていたのよ。天気がよくて、ぽかぽかしてたから。

少しして、ずっと下向いてたせいか、首が痛くなっちゃったの。だから私、空見上げて伸びたのよ。手を上げてうーんって。

そうしたらなんとびっくり。後ろを歩いてた女の子の肩に軽くぶつかっちゃったの。


「あら、ごめんなさいっ!」


女の子は暗そうな子だったわ。

目が隠れちゃうくらい長い前髪とそれを手前に押し上げる眼鏡。でも眼鏡の中にある瞳は、吸い込まれるように綺麗な色をしていて。

その瞳に見惚れている内に、彼女はふらあっと倒れてしまったのよ。


「ちょ、ちょっと貴女、大丈夫!?」


ぶつかっちゃった私にも非がある訳だし、私は彼女に駆け寄った。

ていうかなんでこの子倒れたのよ!?そんなに強く当たったかしら!?


「う…何故口調は女の人なのに制服は男用なんだ…これが世に言うオネエというやつか…」


そんな不思議な言葉を残し、彼女はパタリと脱力した。

え、え!?ちょっとこの子大丈夫なの!?


「とっ、取り敢えず保健室よね!」


背中と膝の裏に手を回し、持ち上げる。

ちゃんと食べてるのかって、全然関わったことのない私が心配してしまうほど軽かった。

__そう、この出会いは運命だったの。


「君は確か、早乙女盾さおとめ じゅんと言ったか?」


彼女は保健室で突然目を覚まし、私の顔をまじまじと見てから納得のいったように頷いた。

いや私、何も納得できていないのだけれど。


「あら、私のこと知ってるの?」

「知っている。オネエで、女子より女子力の高い男子だろ?私はずっと、君を見ていた」


眼鏡と長い前髪に隠された瞳が一際強い光を放ったように見えた。


「見ていた、って…!」


顔が紅潮するのがよくわかる。

しかし当の彼女はきょとんと首を傾げた。


「ああ。見ていた。どうしたんだ?顔がりんごになっているが。」


この子無自覚イケメンってやつなのかしら…!?


「名前を…教えてくれる?」


自然と口から出ていた言葉。

私は昔からおかしかった。

男なのに、女子に憧れて、女子になりたくて。

だから、「恋愛対象はどっちなの?」って聞かれるととても困った。

体は男。でも、心は女。

そんな見た目と中身が合わない私を、見ていてくれる子がいた。

だから、私はこの子の名前が知りたい。


「私か?私は、深谷日波ふかや ひなみだ。よろしくな、早乙女くん」


目を細めて花のように微笑む貴女に、私は恋をしました__。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る