美しきトロイメライ

雪瀬ひうろ

ワルド

第1話 ワルド①

 その世界はどうしようもなく美しかった。

 空は青く澄み渡り、太陽は草原を暖かく照らし出している。地平線の彼方まで続く青々とした草原は柔らかな風を受けて静かに波打っていた。

 僕はそんな美しい草原の中に寝そべっていた。草の匂いが僕の鼻孔をくすぐる。穏やかにそよぐ風の音以外は何も聞こえない。暖かい日だまりが僕を優しく包んでくれていた。

 いつまでもこの世界に留まっていたいと思った。

 この世界はこんなにも美しいのだから。

 少しずつ僕はまどろみの中に落ちていく。

 ああ、どうして、あんな風に汚れた世界にいかねばならないのだろう。

 僕の頬を涙が静かに伝った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る