魔法使い?サリーちゃんのアトリエ ~センチネルの街~ EP2

カウンターに荷物を置こうとすると、カウンターのテーブルに付けられている模様が目に入りました。

「これは… 世界地図!?」

元居た世界でカレンダーや教科書で載っている物とは違い、手書きで描かれており、色も単純に2色、それも地名等の記載が無いですがこれは紛れもない世界地図です…。

もしかすると私以外にも転生者が居るのでしょうか?


このセリフに反応したのは三つ編みおさげ幼女である、サリーちゃん。

「そっ そ、そ、それがぎゃっ」


焦って喋ったせいか、またもや舌を噛んで悶えるサリーちゃん。

サリーちゃんには悪いですが悶える幼女っていいものですよね。

興奮してきましたよ?


「あー… うん… 大丈夫… じゃないよね

サリーちゃん」


「いたそう…」

ラピスちゃんもサリーちゃんを配してる模様。


「うう…っ ふぅ…っ」

何とか舌の痛みが取れてきた模様のサリーちゃん。


「焦らないでね ゆっくりしゃべってね?」

サリーちゃんの頭をポンポンしながら励まします。


当人はコクコクと頷きます。

「あわわっ ごめんなさい そのカウンターテーブルに描かれている絵は ”世界地図” だって師匠が話してたけど…」


「これはサリーちゃんの師匠が描いたのか…」

サリーちゃんの師匠はもしかすると転生者なのかもしれないな…。

一度会って話をしてみたい。


「これが皆ただの絵か模様だと言ってたけど…

これを地図、それも ”世界地図” なんて言ったのは師匠とお兄さんだけ…」


サリーちゃんにキラキラした羨望の眼差しで見つめられる。

なんだか、すごく背中がムズムズします。


カウンターの下で何やらごそごそしていたサリーちゃんがあるものを取り出し、テーブルの上にます。

「こっ これは!?」

今度はサリーちゃんではないですが、驚きのあまり舌を噛みそうになりました。


「これは師匠がカウンターテーブルに描かれている ”世界地図” に気が付いたものに

見せろと言われていたものです… 私は何かわからないけど…」


かなり古いですがストレート形態の携帯電話がそこに置かれました。

「けい… たい… でんわ…」


「はわっ… それが何かわかるのですか?」

非常に驚いた様子のサリーちゃん。

心なしか目がキラキラしている気がします。


「これは… 私の国のほうで存在する道具です…」

事実を言うわけには行かず適当に誤魔化す。


確定です、サリーちゃんの師匠であるブリッジ・ストーンさんは転生者なのでしょう。

同じ同郷の者を探すために店を始め、目につくカウンターに ”世界地図” を描き、これに気が付いた者に携帯電話を見せて本当に転生者か確認するという算段なのでしょう。


「君の師匠は…」

上手く言葉が出てきません。


「師匠に言われてるのです

カウンターテーブルの ”世界地図” に気が付き、さらにこの ”けいたいでんわ” を理解した人が

いた場合、私の元に連れてこいと…」


私もこのブリッジ・ストーンと呼ばれる人に会いたいです。

「ええっ 私もこのブリッジ・ストーン先生に会って、いろいろとお話ししたいことや聞きたいことなどが沢山あります…

どこに居るのですか?」


「師匠はいま、首都アズバーンにあるアカデミーで研究をしているのです

とても優秀なのですよ」


「ふむ… その首都アズバーンに行かなければならないようですね…

うーむ」

いずれは行こうと思っていましたが、ドラゴンさんの件があり、直ぐには行けないので非常に残念です。


先ほどから何やらごそごそしているサリーちゃん。

「では 師匠の元へ向かうですよ

首都に行けるですし、師匠に久しぶりに会えるのです へへっ…」

そう言って私をブリッジ・ストーン先生の元へ連れて行こうとするサリーちゃん。

どうも、サリーちゃんは久しぶりにブリッジ・ストーン先生に会いたいらしく、先生に言われた言付けを口実に首都に行きたい様子。


「ちょっと待って サリーちゃん

私は用事があって直ぐには首都には行けないよ…

それにサリーちゃんだってお店をどうするの?」


「ああっ 確かにそうです…

ごめんなさい、確かに焦りすぎていたようなのです

お店はお母さんに店番をしてもらって…」


「ごめんね 私が行けるのは早くて2日後ぐらいになるよ…」


「そんなー…」

明らかに残念そうな声と涙を堪えながら訴えかけてくるサリーちゃん…。


「うっ… ごめん

でも、首都まで早い馬車? で行けるように頼んでみるよ…

無理かもしれないけども…」

すごく罪悪感があります。


「我慢するですよ…

2日後ですよね?」


「うん、その時はまたこうしてお店に来るよ

それでいい?」


「はいです…

それで… 名前は…」


名前を名乗っていなかったな。

「私の名前は鈴木 幼一 幼いが一番と書いて幼一と読む!

30歳、童貞で彼女募集中だよ! よろしくね!」

かなりハイテンションで自己紹介をする。


「よろしくです!

幼一先生!」

先生… せんせい… なんて甘美な響きでしょう。

幼女に先生と呼ばれる日が来るなんて…。

気が付いたのですがなぜ ”先生” なのでしょうか?


「えーとその… サリーちゃん なんで私のことを ”先生” と呼ぶのかな?」

私はサリーちゃんに何も教えてませんし、教えれることが無いでしょうし、先生扱いは少し勘弁してほしいです。


「師匠が言っていたのですよ

師匠の故郷には私の知らないことや不思議なことが沢山あるのです

そして師匠が言っていたのです、”私の同郷の人間ならばこれぐらいは誰でも知っていると” だから、その同じ故郷より出てきた幼一先生を ”先生” と呼んでも問題が無いと思ったのですけど

変ですか?」

かわいらしく首を傾げるサリーちゃん…。

その上目扱いで首を傾げる仕草は反則ですよ…。


「でも、私がサリーちゃんに教えれることは無いと思うけども…

大体の事は君の師匠である、ブリッジ・ストーンさんが教えてると思うよー」


こんな風に本を書いたりとか自分でアトリエを築くぐらいだから、私より頭の回転は早く知識も豊富でしょうから並大抵の事はサリーちゃんに教えていると思いますよ。


「そうなのですか… それは残念です…

ではこれからは幼一さんと呼びます」


「まあ それなら良いけども…

そうだ! 旅の仲間を紹介するよ」


残念そうな顔をするサリーちゃん、この子の期待を裏切るような事を言ったけど仕方がないですよね?

そしてこの子がとラピスちゃんを押し出して紹介する。


「この子がラピスちゃん ちょっと人見知りな所があるけど

いろいろと可愛らしい子だよ?」


「おっ お兄ちゃん…」

知らない人の前に出るのがやはり恥ずかしいのでしょう。

ラピスちゃんが顔を赤くします。


「私の名前はサリーです よろしくです ラピスちゃん…」


ラピスちゃんもおずおずといった感じで手を出して握手する二人。

「よっ よろしくね… サリー… ちゃん…」


かわいい幼女同士が握手している絵は萌えますねー。


「それと、旅の連れだからこの子も紹介しておくよ

顔を出して アンバー」


「きゅー きゅー きゅー」

アンバーをサリーちゃんに見せます。


「えっ!! えええっ! こっ こっ

ぎゃっ…」

またも舌を噛んだ様子のサリーちゃん… 彼女が誤って舌を噛み切らないように願うばかりです…。


こんな時にポーションとか回復系の魔法があれば便利なのですが、まあ私が使えてもMP1なので使用できない気がしますし、そもそもINTも1なので取得出来るかすら怪しいものです。


「あー… あー… 大丈夫じゃないよね…」

うん、何もできない私はかわいそうなサリーちゃんを見ているしかできません。


「ひえぇぇっ… 痛いようぅ… なんでこんなに舌を噛むの…?」


「サリーちゃん びっくりさせちゃって、ごめんね…」


「きゅ~ぅ」

アンバーも目の前の惨状に驚き、痛そうと感じたのか弱弱しい鳴き声です。


「もっ もう、だいじょうぶなのれす…

それで、この子は… おとぎ話に出てきたドラゴンに似てるのですが…」

若干したが痛いのか喋りがおかしいですが気にしません…。


「うん… 予想通り、ドラゴンの子だよ 名前はアンバー

いろいろとあって私を親だと勘違いしてるんだよ… それで一緒に暮らしてる」


「幼一さん… すごい人ですね… さすがは師匠と同じ故郷の人です!

触っても大丈夫ですか?」


「大丈夫だと思うよ?」

アンバーを恐る恐る撫でるサリーちゃん。


「きゅーぅ」

アンバーも喜んでいるみたいです。


その後、少しサリーちゃんと話した後は会計を済ませ、私たちはサリーちゃんのアトリエを後にしました。

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