○行方不明

ギルドへ戻ると受付さんに色々と聞かれた。

その後、聞いてわかったことだがカンル平原に出た魔族はおとりで帝が数人集まると逃げながら戦ったらしい。戦ってる最中にサンレス森のことを口走ったが、その魔族を見逃しても被害が拡大するだけなのでギルドに連絡だけした。


その時、たまたまいたレイトは僕がサンレス森に行ったことをしり受付から無理矢理転移魔方陣を奪って僕のとこ来たらしい。


「レイト君は大丈夫よ。貴方が転移魔方陣で戻ってくる直前に帝様達が向かったんだから!」


「……はい」


「だから元気出して寮に帰って、レイト君の帰還を待ちましょ」


「……はい」


僕は学園の寮に帰り深い眠りについた。


◇◆◇◆◇


ピンポーン!ピンポーン!


朝起きた僕はレイトの部屋に走ってインターホンを押した。返事は来ない。


ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!


「……怪我してたし病院にいるかも知れないな。授業が終わったらギルドに行って確かめるか」


◇◆◇◆◇


「おはよークロス!」


「ああ、おはよう」


「もしかして何か悩んでる?」


こいつはまた……

下手に何か言うとウルサイから寝たふりするか。


「沈黙は肯定とみなすよー?……いつでもいいから悩みあるなら私に相談してね!

あ、今日授業が終わったらサラちゃんとギルドに行こうと思うんだけど、一緒に行こ!」


こいつとギルドで会うと間違いなく面倒なことに巻き込まれて僕の目的が達成出来ない。

仕方ない。


「今日は少し用事があるから無理。

明日以降なら一緒に行ってあげるよ」


机にうつ伏せになりながら僕は言った。

こういえば、このアホなら今日ギルドに行くことをやめるはず。


「本当!?

なら今日はギルド行くのやめて明日いこ!」


「ああ、わかったよ」


◇◆◇◆◇


「今日から本格的に実技を入れていきます。

まずは魔力コントロールです。

初級の魔法や中級の魔法なら既に扱える人はいるでしょうが何事も基礎が大事ですからね」


そういって先生は右手を前に出すと右手から鳥の形をした魔力を出した。


「何でもいいので魔力で何かの形を作って維持させるのが今回の授業内容です。誰かと話しながらやるのが効果的なので近くの人と2人組になってやってください」


先生はボッチ殺しの二人組を作ってくださいを使った。だけど僕は動じない。思春期なら兎も角、僕の精神年齢はおっさんだ。


それに僕にはいつもうるさく付き纏うアホが。


「ルーチェさん私とやりませんか?」


「うん!いいよ!」


……いや、まだ4人組のときのディーフが。


「ねえ君、俺と一緒にやらない?」


「いいよ、知ってるかもしれないけど俺の名前はディーフよろしくね」


……


うん、焦ることはない。


ほら、あそこに僕みたいに周りをキョロキョロしてる子がいる。


「……」オロオロ


見たことあると思ったらサラだ。


「……」ハッ!


あっ、僕に気づいた。


「えっと、僕と一緒に魔力コントロールやらない?」


「……うん」コク


サラは先生がやったのと同じように手を前に出しグチャグチャな魔力の塊を出した。


「……」ズ-ン


あからさまに気を落としてるな。

と、人のを見てるだけじゃなく自分もやらないとな。んー先生の真似して鳥にするか。


「……」ジ-


デフォルメされてるけど、なんとか一目で鳥とわかるように作れた。魔力コントロールは5歳ぐらいからやらされてるから、これぐらいじゃ全然なんだよなぁ。

流石は魔力質最低ランクだね。


「……」ジ-


魔力に余裕はまだまだあるから鳥を増やすか。


「……」オ-!


……さっきから見られまくってるな。

サラの近くまで鳥を飛ばすよう魔力をコントロールした。


「……凄いね」キラキラ


「かなり小さな頃から修行してるからね。

それでも先生より下手だけど」


そういうと頭をブンブンとサラは振った。


「……こっちの方が可愛い」


「ははっありがと」


「……コツとか教えて」


「コツ?んー落ち着いて1つ1つ細かく形を整えるとかかな」


「……出来た」パァア


するとサラは僕よりも精度の高い鳥を作った。


「す、凄いね」


少しショックだ……


「……クロスのおかげ、ありがとう」


「僕が教えなくてもサラさんならすぐに出来るようになってたよ」


「……そんなことない」


「ははっ、そういえばさ」


僕とサラは打ち解け、授業が終わるまで雑談をしながら魔力コントロールの修行をした。


◇◆◇◆◇


学校が終わると僕は急いでギルドにいった。

そして中に入ると昨日と同じ受付の人が僕に気づき伏し目がちになった。

これで僕はある程度のことを察した。


「あの、レイト兄さんは」


「帝様達が現場についた時には既に魔族はいなくて血痕けっこんだけがあってレイト君はいなくなっていたらしいの……死体がないってことは生きてる可能性が高いわ。

だから気を落とさないでね」


「はい、大丈夫です。

じゃあ僕は寮に帰ります」


「えぇ」


◇◆◇◆◇


僕は自分が怖い。


転生して本当に血の繋がった優しい兄が死んだ可能性が高いと昨日の転移する直前から気づいていたのに全く悲しくなく、授業に普通に出たこと。


動物を殺すことにも罪悪感を持つような世界にいたのに、人間に近い姿をした魔族に途中まで何の疑問もなく殺すために刀を振るったこと。


僕は本当に僕なのか?


体は地球にいたころと、ほぼ同じ。


だけど100%地球にいたころの肉体ではない。


今考えてるこの脳も地球にいたころのものではない。


……このことを考えるのはしばらくやめよう。

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