第37話 真の脅威
一方、部屋から出た一日は命達の居る部屋に向かい、今後について話していた。
「実際の所、一日さんはやはりあの連中を警戒しているのですね」
慎重な口調でそう告げたのは暗であった。
「何故そう思うの?」
疑問とも試しているとも取れる口調で一日は聞き返す。
「戦力は既に十分過ぎる程・・・とは言いませんが整っています。にも関らず次の進行を遅らせている。これは他に何か警戒するべきものがあるため、そう考える他ないのです」
一日の返答に対し暗は更に明確な口調で返す。
「その通りよ。既にこの世界にも出現が確認されている以上、野放しにしておいては此方の優勢に綻びが生じる可能性もある」
「一体あれは何なのですか?私の世界に現れただけでなく既にこの世界にも出現しているなんて・・・」
「その正体は僕達も探って入るんだけど、中々真相には辿り着けない。何より、あれがどういう目的で表れているのか、その点が謎だからね」
一日と暗のやり取りに割って入った命はそう明確に返答する。
「今の所あれと彼らが遭遇している場面はありませんね」
シオンがそういうと言葉は
「でも、何時その状況が来るかわからない。油断は出来ないよ。敵の味方は敵・・そういう展開になる可能性も高いんだから」
とシオンを諭す様に発言する。
「奴等といえば、昨日の病院での一件の際、奴らの魔法を受けた時に少し精神の乱れを感じました。あれは・・・」
そう言うと命が内心の疑問を口に出す。
「あれは対象者の精神に干渉する魔法だよ。おそらく奴等も此方の能力に少しずつ気づき始めていると思う。だから・・・」
「分かってる。これ以上の下手は討てないって事でしょ」
暗が疑問に答えると命は明確な言葉で返答する。その明確さにはこれまで以上の強い意志が感じられた。
その時。部屋の中にあるモニターに何かの反応が映し出される。一行が駆け寄るとそこには韓国軍の戦闘機が写っていた。
「やれやれ、性懲りもなく・・・」
そう木の葉が言いかけたその直後
「いえ、違います。この反応は韓国軍を示しているのではなく・・・」
そう言った命は韓国軍の予想進路図を追跡する。するとその先には一行が警戒する例の生物の反応があった。
「これは・・・」
そう言った木の葉は驚いた表情を見せる。
「ついに日本にも現れましたね・・・」
来るべき時が来た。そう思わせる口調でシオンが言う。
「ええ、皆、行きましょう。韓国軍だけならともかく、奴ら相手では自衛隊が負傷する危険性がある。」
一日がそういうと、一行は駆け足で玄関口まで向かうのであった。
玄関から外に出た一行、直後に
「導く尊法!」
と一日は叫ぶ。その直後、一行の体は光に包まれ、次の瞬間には目的地となる韓国軍進路上にワープしていた。
「敵はまだ来ていないようですね」
「油断は禁物だよ。いつ来てもおかしくはないんだから、それに・・・」
どこか緊張感に欠けた声で木の葉が話すとそれを諭す様にと言葉が発言する。
「それに・・・何なの?」
「敵なら来てるわよ。」
そう言って言葉が指さした先では自衛隊と魔王軍の合同部隊が韓国軍を迎え撃っていた。しかしその差は圧倒的であり、合同部隊の方が量、質ともに高いのは誰の目から見ても明らかであった。
「流石フリーチェ様の直属の部隊。でも技術を使いこなしている自衛隊の皆さんの技量も見事な物ね。これがもっと早く活用されていれば・・・」
この光景を見た一日は賞賛とも皮肉とも取れる口調で感想を述べる。
「さて、ここからは・・・」
「僕達の戦いですね」
一日が言うと命がそれに続ける。
その直後、迎撃に当たった合同部隊の背後に突然白いアメーバのような存在が出現する。
「な、何だこれは!!」
自衛官の一人が振り返ってそう述べるとその存在はその自衛官を飲み込もうとする。
「うわああああっ」
恐怖のみが込められた声で自衛官は叫び、顔の前に手を置く。その時
「守りし盟友!!」
と一日が叫び、自衛官の前に光の壁を出現させて守る。
そして自衛官に命は駆け寄り
「大丈夫ですか!!」と呼びかける。
「あ、ああ・・・君達は何度も危機を救ってくれている少年少女か・・・はは、情けないな・・・大人が子供に守ってもらうしかないなんて・・・」
自衛官は自嘲しながらそう口にする。
「情けなかろうと、そうでなかろうとあなたにも出来る事はあります。早くこの付近にいる人を非難させて下さい!!」
暗は叱責とも激励とも取れる口調で自衛官に呼びかける。
「君達はあれについて何か知っているのか・・・」
「機密度の高い情報なので容易には教えられませんが・・・私達が現座追跡している最大の敵であり、野放しにしておくとこの世界そのものを覆い尽くしかねません。そして、付け焼刃で身に着けた技術では応戦は難しい相手です」
「分かった。私達は近隣の住民の避難に全力を尽くそう」
自衛官はそういうと自分の不甲斐無さを呪うような顔をしつつ、kその場を後にし、その場にいた他の自衛官や魔王軍の兵士もそれに続いていく。
「さて・・・どうしますか?」
そう聞いたのはシオンであった。
「決まっているわ・・・こいつらを市街地に向かわせるわけにはいかない。殲滅するわよ!!」
そう一日が返答するとその場にいた全員が交戦体制をとる。
人と同じくらいの大きさがある白いアメーバは蛞蝓のように地面を這いずり回り、一日達に近付いて飲み込もうとする。
「種類は米国や回帰さんの世界で出現したタイプと同じですね。新種が居ないのは幸か不幸か」
「一寸!!もっと強い奴と戦いたいとでもいう訳?」
「そう言うんじゃないよ、ただ、現時点で新種のデータが得られれば今後のアドバンテージに繋がるかなって思っただけ。勿論出てこないに越した事は無いよ」
そう軽口を飛ばし合う言葉と木の葉。その会話にはどこか余裕が見え隠れする。
「気を抜いているとやられますよ!!」
そんな二人に対し、命は釘を刺しながら手にした銃でアメーバを撃っていく。その弾丸がアメーバに当たるとアメーバは紫色に染まって消滅する。
「命君の言う通りですよ。油断するとやられます」
そう言うとシオンは手にしたナイフで接近してきたアメーバを突く。疲れたアメーバはやはり紫色になって消滅していく。
「そうね。市街地に被害を出させない為にも遊んでいる場合じゃないわね」
「うん、一気に殲滅しよう」
そう言った言葉と木の葉はぴったりの息で手にしている銃を撃ち、アメーバを殲滅していく。
その活躍もあり、一日や暗の魔法を使うまでも無く、アメーバを全滅させる。
「後続反応無し、殲滅に成功したわ」
一日は状況を分析し、他のメンバーに告げる。
「そうですか、しかし・・・」
「愈々日本にも表れ始めましたね・・・私はアメリカに出現した現場には立ち会っていませんが、これは悪い流れなのでは?」
シオンが不安交じりの声で発言すると暗も続ける。その言葉にはやはり不安が感じられる。
「ええ、現状の自衛隊や魔王軍の戦力でもある程度の迎撃は可能でしょうけど、今回の様に外部から一度に来られると厄介ね。
万が一新種が私達の不在時に仕掛けて来るとこちらの損害も避けられない」
冷静に分析し、その上で対策を練ろうとする一日。すると
「提案ですが、ここはこちらの手をある程度提供しておくべきではないでしょうか?」
そう暗が口にする。
「こちらの手を提供する?」
言葉が質問すると暗は
「そう、皆さんがあのアメーバに対して使用した武器、あれはアメーバに対して有効な物を用いているのでしょう。
通常兵器では迎撃に時間がかかってしまう。となるとその手を提供した方がいいのではと思ったのです」
そう返答する。
「・・・そうね。ここは暗の提案を採用しましょう。但し、暗の世界の技術も併用し、ある程度の汎用性を持たせる必要はあるわね」
そう一日は述べるのであった。
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