第15話 堕転する希望

「スキル・サクセサー・・・不味いわ!!あの攻撃は精神を攻撃し破壊していく物よ。早くあの人を引き離すか或いは・・・」


そうロザリーが叫ぶと


「俺が行く!!」といっったテレサが命の母に近づこうとするが命を初めとする子供達が銃を乱射し、行く手を阻む。


「くっ、このままでは・・・」


希有がそう言ったその時。


「う・・・ううっ・・・」


と言う声と共に望の意識が戻る。それを見た一日は


「あら、急所は外したとはいえ気がついちゃったんだね。ま、この女が終われば次はあんただけどさ」


とあざ笑うかのような口調で言う。


それを聞き


「お母さんはこれ以上やらせない。お兄ちゃんの姿や名前を二度も語ったあんたなんかに!!」


と憤慨する未末。だが一日は


「語ったんじゃないよと言っているでしょう。私は嘗て・・・」


と彼女にもあざ笑うかのような口調を向けるがその隙を突き


「シャイン・ショット!!」


といってチュアリが光を一日に飛ばして被弾させる。その被弾でバランスを崩した一日がたじろぐと命の母を覆っていた光の膜が消え、その隙を着いてテレサが命の母を救出する。


「あら・・・他に気をとられるなんて・・・私もまだまだね」


一日が少々自虐的に言うと


「見たわね!!私達は・・・」


と未末が言いかけるがその直後命が彼女の足に向かって発砲し、彼女の足を負傷させてしゃがみこませてから


「過保護に育てられた穀潰しがごちゃごちゃ一日ちゃんに意見しないで貰いたいね。不愉快だよ!!」


と不快感を露にした声で言い


「そうだね、昔からお前は甘やかされ、過保護に育てられてきた。だから今こそ、その報いを受けるときだね!!」


と一日も続ける。そして手から無数の黒い球体を放ち、それを未末に当ててから


「堕転する希望!!」


と言って手の平から何かを出現させ、それを握り潰して砕く。その瞬間未末はその場に倒れ込んでしまう。


「未末!!」


望と希有が叫ぶと聖は彼女に駆け寄って抱き抱え


「ここは一度退却します!!」


といってこの世界に始めてきた時と同様にゲートを開いて別の何処かへと撤退していく。


「一日ちゃん、追わなくていいの?」

「ええ、それにそろそろ次の段階に差し掛かる頃よ。余興はこの辺にしておかないと」


そういうと一日と命は何処かへと向かっていく。


その頃、秋月家へと撤退した聖達だが、その顔に笑顔等あるはずもなく、沈みかえっていた。


「未末ちゃんの様子は・・・」

「今ロザリーさんが見てくれていますが、結果はまだ・・・」

「命君のお母さんの方は先程目を覚まされました。異常は今のところ見当たりませんが、やはりショックを受けている様子です」


今回分かった一件を辛うじて整理し、纏める聖と希有、望。だがその声には最早希望の欠片すら感じられない。


「そうでしょうね・・・でも、どうしてあんな事に・・・」

「あの時の彼の目は明らかに親を見る目ではありませんでした・・・これは推測ですが、恐らく彼は何らかの精神制御を受け、母親を憎むべき敵と認識しているのではないかと思われます」


希有の呟きに回答する聖、それを聞いた望は

「精神・・・だとすると命君のお母さんに精神攻撃を仕掛けたあの少女が・・・」


と続け、聖は

「可能性は高いでしょうね。彼女は命君の同級生でもあるのですから」とその考えを肯定する。


少しの沈黙の後、


「あの少女は一体何者なのでしょう・・・嘗て世革だと言ったり、それに・・・」


一日への疑問を口にする望、それを聞いて


「・・・もしかしたら、その発言は一部は正しいのかもしれません」


そう聖が発言すると当然の様に


「どういう事です?」


という質問が出てくる。


「これまでフリーチェは侵攻先の世界を決めた後、現地の協力者を得る為に現地の住民に自身の力を注ぐのです。そしてその力を受けた存在は善の面と悪の面が分離し、善の面はそれまでの身体で、悪の面は新たな身体を得て活動するのです。そして、その力を受けた影響で魔法の様な力が使える様になります」


その聖の解説を聞いた望が


「つまり、あの少女は世革から分離した存在だと?」

「可能性としては考えられます。ですがそうだとすると世革さんが今どこにいるのか・・・」


聖の真意を反復し、それを聞いた聖も又それを肯定する。


「どこかに隠れているという事ですか?」


希有が更なる質問をする。


「いえ、先程聖も申し上げたよう善の面と悪の面が分離した以上、善の面は悪の面を止める為に行動する傾向があるんです。もし仮に今回それが当てはまらないとしても何らかの行動を起こしていてもいい筈・・・少なくとも家族に連絡は入れるでしょう。それすらも無いという事は、何かイレギュラーな事が起こっている可能性が高いです」


聖はこれまでの経験に裏打ちされた回答をする。その回答への自信はあるが、それが喜べないという空気はその場にいる誰もが感じていた。


その時、つけっぱなしになっていたテレビから


「臨時ニュースです。先程韓国が日本に向けて突然宣戦布告をしてきました」


と言う情報が流れてくる。


「韓国が宣戦布告!?そんな・・・どうしていきなり・・・」


望が狼狽する中、ニュースは淡々と


「既に韓国空軍が長崎県に向けて進行してきているとの情報が入ってきています。皆さんは落ち着いて避難して下さい!!では中継です。」


と告げ、映像が長崎に変わる。するとそこには韓国空軍を遠方に捕えたカメラ映像が映し出されていた。


「これは・・・」


希有の言葉と同時に映像の韓国空軍はミサイルを発射してくる。だがその時、カメラの中継映像に一日や命が写る。


「あの子達!?一体何を・・・」と言うとそこにロザリーやテレサ達も入ってくる。


「どうしてこんな所に居るの?危ないから・・・」


中継先のカメラマンが命や一日に話しかけると


「危ないから対処するんですよ」


と双方ともに言い、手元のライフル銃に手をかけ、それでミサイルを狙い撃って破壊していく。


「命君、ミサイルの破片も陸地に上げる訳には行かないわよ!!何としても海上で撃ち落として!!」

「分かってるよ、一日ちゃん」


と呼吸を合わせた二人はライフルでミサイルを撃ち落としていき、ミサイルの残弾が尽きたのか韓国空軍は引き返していく。


「君達は一体・・・」


唖然とするカメラマンに


「この国との交流を決めたフリーチェ様の世界の住民ですよ。この位の危機は僕達の世界では何度も経験していますからどうと言う事はありません」

「被害が出なくて何よりです」


と清々しい顔で告げる二人。その顔は先程の交戦時とはまるで別人であった。

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