第13話それぞれが抱く疑問

その翌日も命の母達は小学校を監視し、命が出てくるのを待っていた。そして下校時刻になり、裏口に回るとやはり命はそこから出てきたがその日は早々に走りだし、又しても尾行に失敗してしまう。


「今日も見失ってしまいましたね・・・やはり気付かれているのでしょうか?」


そう言う未末に


「仮にそうだとしても、だとしたら何故私達を巻く必要があるのでしょうか?もしかしたら私達は何か踊らされているような・・・そんな状況にいるのかもしれません」


と告げるロザリー。


「こうしている間にも世界各国で怪事件やそれに伴う反政府活動が活発化しています。各国首脳は現在何とかその不満を押さえてくれていますが、それも何時まで持つか・・・」


ロザリーと同様の不安を抱える聖もそれを隠しきれない。


「各国首脳は今どうされているのです?」

「皆さんから連絡が入り、私達が此方に来るのと同時にそれぞれの国にお戻りになられ、現在は職務を全うされています。とは言うものの、会談の失策は大きく、その挽回にはほど遠いのが現状です」

「そう考えると私達はまだいい方なのかも知れませんね。こうして我が子を追うことが出来るのですから」


望の問いかけに説明するチュアリ。それを聞いた望はまだましな方なのかもしれないという考えを本気で持ち始めていた。


その頃、命は例の家に行き、昨日に続き一日達と会話をしていた。


「今日も上手く行ったみたいだね」

「うん。でも二日続けてってことはどうやら僕を手がかりに事件に迫ろうとしているのは先ず間違いないと思う」

「一日ちゃんの読み通りって訳か。なら・・・」

「ええ、その望みを・・・」


会話の内容は本人達は楽しそうだが、周囲からすれば不気味極まりない物であった。


同時刻、フリーチェ達も又、一日達の一連の行動について話し合っていた。


「一日の行動はどうなっている?」

「各地に此方の兵力を民間人に紛れて送り込み、経済の活性化と不信感の消去に一役買っているようです」

「それから、一日が提案し、紛れ込ませた法案が成立し、既に政治面でも干渉に成功しているようです」


フリーチェの問いかけにヒリズと回帰がそれぞれ応える。


「一日は近々新たに仕掛けると言っていましたが、どこに何を仕掛ける気なのか・・・」


更に神消がそう言うと


「そうか・・・」とフリーチェは呟く。


その様子を見たヒリズが


「あの・・フリーチェ様・・・」


とどこかそわそわした姿勢で言い


「どうした?」


とフリーチェが聞くと


「彼女・・一日が私達の軍勢に加わってから・・・いえ、正確に言えば彼女を見ているとなのですが・・・何となくこう、落ち着かないと言うか、モヤモヤすると言うか、兎に角そうした気持ちを感じるんです、此は一体・・・」


と唐突な質問をする。


それを聞いた回帰と神消もそれぞれ


「実は・・・私(俺)も同じ事を感じていました」


と続ける。それを聞いたフリーチェは


「お前達も揃ってか・・・」


と返答する。


「え!?と言うことはつまり・・・」


言いだしたヒリズが狼狽えながら反応すると


「私も彼女が加わってからと言うもの、何か不思議な気持ちを感じることがある。だがそれは決して嫌な物では無い。寧ろこれは・・・」


その時


「何を話しているんですか?」


と言う声と共に一日が入ってくる。


「つ、一日・・・いや、君が今後どうするつもりなのかちょっと気になってな・・・」


と魔王らしからぬ狼狽えた返答をするフリーチェ、その様子はどこか滑稽にも映る。


「そ、そうだよ。一日ったら僕たちにも中々次の事を教えてくれないんだもん」


ヒリズも同意し、何とかその場を取り繕おうとする。


「そうですか。でも、落ちが見えてしまう出し物はつまらないでしょう。安心してください、結果は出しますから」


そう語った一日はフリーチェの方を向く。


「と、所で一体何の用でここにきたんだ?」

「明日、作戦を次の段階に移行しますのでその報告に来ただけです。それでは」


一日はそれだけを言うと部屋を出ていくがその内心では


「あの反応・・・それにさっきの会話・・・やはり彼らは・・・」


と何かを考える、その顔は笑顔ではなく、何かを見据えるような雰囲気を醸し出していた。


翌日、聖達は三日目となる小学校の張り込みを行い、そして下校時刻になる。だがその日は昨日一昨日とは違い、命は校門正面から下校してくる。


「今日は裏口では無いんですね・・・もう無駄だと思ったのか、それとも何かの罠か・・・」

「兎に角、尾行を開始しましょう。真意は私が本人に聞きます」


生花のその言葉を切っ掛けに一行は尾行を開始する。

だが今日の命の道はこれ迄とは全く違う道となっていた。


「昨日一昨日とは全く違う道を歩いている・・・もしかすると誘い込まれているのでは?」

「そうかもしれないけど・・・だからって今は他に出来る事がある訳じゃない。このままいくしかないよ」


希有は疑問を抱くが、チュアリは行動の続行を促す。そして命の尾行を続けると、やがて駅前のデパートに辿り着く。すると秋月家の面々の顔色が変わる。


「秋月家の皆さん、どうかしたんですか?」

「このデパート・・・昨日の世革の偽物が答えられなかった私達の思い出の場所です・・・」

「はい、間違いありません。外装も変わっていませんし、何よりここを忘れることはありません。」


生花の問いかけに望と希有は神妙な顔を浮かべて回答する。


「その場所に命君が・・・いい予感は期待できませんが、兎に角入ってみるしかありませんね」


聖に促され、一行はデパートの中へと入っていく。

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