それぞれの視点 その行く末は
日常演舞
第1話 始まり
「今日も何時も通りか・・・代わり映えしないな、良くも悪くも」
東京駅の改札で一人の若年男性がそう呟く。その男性の名は
「秋月世革 二五歳」
この世界を変えて欲しいという願いを込めてつけられたその名前とは裏腹にその性格は無駄を嫌う合理的な悟り世代であった。
その日も何時もの様に仕事をこなし、帰路についていた。そして通勤路途中にある神社、世革は昔は良くお参りをしていたが悟り世代としての人格が完成してからは時間の無駄だと何時も素通りしていた。
だがその日は何時もとは違った。何故ならその目の前を通りかかった瞬間世革の足元に突然黒い渦が出現したのだから。
「な、何だよこれ・・・うわっ!!」
と世革が声を上げた次の瞬間、彼の体はその渦に引きずり込まれていった・・・
引きずり込まれた世革はその先で言葉も出ずにただ狼狽えるばかり。そこに
「ほう・・・これはこれは・・・」
と言う声が響いてくる。
「何の声だ!?」
世革が反応するとその声の主は
「フフ、お前が知る必要はない。何故なら・・・」
と告げ、その直後、黒い靄が世革を包んでいく。
「な、何だ・・・何・・・これ・・・!?」
世革がそう言うとその靄は世革の体に同化し、徐々に小さくなっていく。
そして小さくなり、靄が晴れると
「ふふ、これで・・・」
と言う先程の声が響いてくるがその声を遮り
「一体なんのつもりなんです此は?」
と淡々とした言葉が聞こえてくる。
「何!?自分の意識が・・・」
引き摺り込んだ直後に聞こえた声の主がさっきとはうってかわった狼狽えた声を挙げる。
その直後
「ええ、しっかり残っていますよ。どうやらさっきの靄はあなたの力を注ぐ事で人格を消去して傀儡にする為の物だったようですね。そしてそのお陰で貴方の事が色々と分かりましたよ。魔王フリーチェ」
と言う別の声が聞こえてくる。
「ほう・・・そこまで理解したのか・・・」
フリーチェと呼ばれた声の主が確認する様に告げる。
「ええ、勿論それだけじゃありませんよ。貴方がここに来た目的、与えた力、その全てが分かりましたよ。」
新たな声の主がそう告げる。
「それを知ってどうするというのだ!?」
フリーチェがそう言うのを確認すると新たな声の主は口元に密かな笑みを浮かべる。
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