第六十八話 最終決戦

「そうね、頼もしいわ。そして、だからこそ・・・」


暗の発言の真意を知る一日は笑顔でそれに合わせる。だがその下には強い決意があった。


「さあ、皆行きましょう!!」


一日がそう呼びかけるとその場にいた全員が発起し、塔の中に突入する。すると早速迎撃と思われるアメーバが続々と出現する。


「流石にそう簡単には進めないか。でもね!!」


そう口火を切ったシオンは手に取った銃でアメーバを次々と撃ち、その色を変色させていく。変色したアメーバはその場に留まり、全く動こうとしなくなる。


「アメーバの動きが・・・やっぱりそういう事か!!」

「うん、そしてこれなら・・・」


言葉と木の葉も息を合わせ、アメーバを次々と銃で撃っていく。その後もアメーバは出て来るものの、勢いづく一日達を止める事等到底出来ずその快進撃は続く。そして最上階の扉に着き、扉を開けるとそこにはヴェルナーや聖、望達が居た。


「くっ、もうここまで来るなんて・・・」


その勢いにたじろぐ望。


「お前達は次から次へと・・・この世界まで制圧するつもりなのか!!」

「いいえ、この世界については制圧するつもりはないわ。開放するのよ、そこの女王様からね!!」


希有がきつい言葉で問いかけると一日はそれを真っ向から否定する。


「開放する!?どういう事だ!!現にお前達はこの世界の色を・・・」

「その色が変わった事について、なにも変だとは思わないんですか?貴方達は?」


一日の否定の意味を問い質そうとするムエに対し、更なる疑問を投げかける命。


「あの色が変わった原因は紛れもなく僕達にあります。ですが何故爆発では無く変色なのか、その点を疑問には思わなかったのですか?」


投げかけた疑問を更に重ねる命、それに対しムエは


「爆発ではなく変色である事がそんなに重要なのか!?それにこの世界にも小競り合いが・・・」


と反論するが


「小競り合いがある事自体は自然な事でしょう?寧ろ沢山の生命が居る世界で何の小競り合いも起きない方が不自然と言う物です」


とシオンに遮られる。


「確かにそうですが、このタイミングでそれを・・・」

「いえ、小競り合いすらも無い世界は実現可能です。現に私達はそれを可能にしてきたのですから」


望は若干肯定気味に語るがヴェルナーはそれを真っ向から否定する。


「・・・やっぱり、私の予測通りでしたね・・・」


それを聞いた一日は何か確証を得た顔をする。だがその顔に笑みは無い。


「予測通りとは・・・どういう事です!!」


聖が珍しく激しい声で問いかける。


「貴方達は妙だとは思わなかったのですか?敵対勢力の重要なエネルギー生産拠点であるにも関わらず爆発ではなく風景の変化で終わっているという事を」


自分達の行動である筈なのにどこか他人事の様に話す命、だがその言葉は


「た、確かにそうだが・・・」


と確実に望達に疑問をもたらす。


「くっ、これ以上こちらを惑わせるな!!」


そういうと聖は臨戦態勢を取り、それに触発されるかのように望達も武器を手に取る。それを見た一日は


「皆、行くわよ。これが・・・最後の決戦!!」


そう叫ぶとその場に居た全員の戦意を鼓舞する。


「私の世界では仕留めそこなったが・・・今度こそ仕留める!!」


そう言い切ったムエは木の葉に接近し、格闘術を叩き込もうとするが木の葉は難なくそれを躱し


「怒りが混ざっているんですか?動作に緩慢さが見えますよ」


と言いつつ手にした銃で両肩を撃ち抜こうとする。ムエも動作を最小限にして躱すがやはり飛び道具故のリーチの優位性はカバーしきれない。


「世革の名前を使っただけでなく未末までも利用した・・・あなただけは絶対に許せない!!」


望と希有はそう叫ぶと一日に向かっていこうとするがその目の前に言葉が立ち塞がり


「貴方達に一日ちゃんの何が分かっているんです?何も分かろうとしないのに怒りだけを振りかざそう等・・・」


と語りかける。


「そこをどきなさい!!さもないと・・・」


望はそう言いかけると銃を手に取るが言葉はそれを上回る速さで銃を撃ち、望の手から弾き飛ばす。


「さもないと・・・何なのです?」


涼しい顔でそういってのける希有は飛び掛かるが言葉は回し蹴りで返り討ちにする。


「貴方が本当にサンクなのか・・・それはもうどうでもいいことです。私の前に立ち塞がるのなら!!」

「刃を交えるしかない・・・という訳ですか。最も、この場合は魔法と言い換えるべきでしょうか?」


キーパーに対して余裕を見せる、だが一方で隙は見せない暗。それを感じ取ったのか、キーパーも睨み合いを続ける。だが次の瞬間、キーパーの周囲に無数の穴が出現しそこから槍が現れてキーパーの体を突き刺していく。


「くうっ、つうっ・・・これは・・・」


そう声に出すと


「何もしていないように見せかけて実は魔法を唱えている・・・サンク君がよく使った手だ。やはり・・・」


そう内心で感じ、残酷な核心を更に強めざるを得なくなる。


「ロザリーの為にもお前達はここで叩く、そうでなければ合わせる顔がないからな」」

「彼女は居なくなってしまったわけではありませんよ。ただ、本来あるべき形に戻っただけです」

「詭弁を言うな!!お前達が消滅させたのを目の前で見ているのだ!!」


ソルジャはそういうとシオンを金槌で叩こうとするがシオンは短剣でソルジャの右肘を切り、そのままバランスを崩させる。


母である生花と対峙する命、だがその間に流れる空気に既に親子の、否、身内としての情は微塵もない。


「貴方を取り戻す為に始めた活動がまさかこんな事になるなんて・・・」

「戻るつもりはありませんよ。それに、今更言っても始まりません、後は雌雄を決するのみです」


母である生花に敬語調で話す命、だがそれは敬意等では無く、最早敵としか認識していないという意思の表れであった。その意思に裏打ちされている事を証明するかのように命は生花に接近し格闘術を叩き込んでいく。一方の生花はまだ情があるのか、本気で反撃しようとしない。


「やられていればスッキリして解決するとでも?甘いですよ!!」


その言葉と共に命は生花の腹部に強烈な蹴りを入れ、生花を飛ばして床を擦らせる。


聖は一日と対峙し、嘗てない敵意を一日に向ける。


「ヴェルナー女王の慈悲と行動を否定するとは、流石に許せませんね」


その言葉からも敵意が感じ取れる。だが一日は


「その前に聞いておきたいんだけど、貴方は誰なの?」

「今更だな、お前達に・・・」

「名前を聞いているのではないわ。貴方は貴方として存在しているの?存在を感じられるの?」

「意味の分からない事を聞くな!!」


聖はそう言うと問いかける一日に向かって手にした剣を振り下ろす。だが一日にそんな単純な手が通じる筈もなくあっさりと躱す。そしてそのまま背中に蹴りを入れ、床に這いつくばらせる。


「くっ、だが・・・」


そういうと立ち上がり


「ホープ・シュート!!」


と言って剣から無数の弾丸を放って攻撃する。無数であるが故に回避は出来ないと思われたが


「輝ける順法」


と言い、目の前に薄い膜を出現させて弾丸を防ぐ。そして防ぎ終わると


「堕天する希望!!」


と言い、空中浮遊を行って手に力を込め始める。その光景を目にした望は


「あ、あれは未末に使ったのと同じ・・・」


とあの時の事をフラッシュバックさせてしまう。だがその時


「ホーリー・ライトニング」


と言う声と共にヴェルナーが雷を一日に向かって放ち、一日は回避には成功するものの技の中断を余儀なくされる。


「ヴェルナー様!!」

「あら、女王様自らが戦うとは、その笑顔はまやかしなのですか?」


聖と一日はそれぞれヴェルナーを見つめ、そう告げる。


「流石にこれ以上の暴虐を許す訳には行きません」

「暴虐?それを言うのであれば、他社への笑顔を、好意を強制するこの世界のシステムの方が暴虐なのではありませんか?」

「この世界が暴虐?屁理屈をこねないで下さい!!」


そういうとヴェルナーは再度雷を放つがその雷と黒い雷がぶつかり合い、その力は相殺する。

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