核に在る学園Ⅲ


左側に向かうと、二つの扉があった。一つはさっき言っていたとおりlady'sと書いている扉。もう一つにはmen'sと書かれていた。

わたしはlady'sと書かれている方の扉を開き中に入った。

そこには部屋中がクローゼットの中みたいに先ほど見せられた制服などがたくさん敷き詰められていた。わたしは奥に進むと、試着室と全身鏡を見つけた。

「この中のどれかを着れってことだよね・・・きっと」

そう思い、とりあえず早く着替えないとと思い近くにあった柊木の制服に感じが似ている服に手を伸ばそうとしたとき入ってきた扉がいきなり開きだした。

「・・・はぁ、寝坊するなんて私らしくない。しかもつまづいて池に落ちるなんてホント最悪。とっとと着替えて、食堂に行こうかしら・・・もうすぐ昼休みだし授業は午後からでいいや」

と、言いながらあのときわたしを驚かせた女の子がびしょ濡れで部屋の中に入ってきた。

そして目が合った。目が合うと、女の子は微笑んでくれた。

そして小さくくしゃみをした。

「ごめんなさい、驚かせて。昨日会ったわね、私は亜月あづき 琴音ことねと言います。生徒会役員の一人でここの中等部の2年です」

寒そうに体を少し震わせ自己紹介をしてくれた。

言われてわたしも思い出した。わたしを驚かせた人。髪が濡れているせいで初めて会った時の大人っぽい感じのイメージとは違って、一瞬わからなかった。

「えっと、わたしは藤咲 理架です。こちらこそ・・・あの大丈夫。服、早く脱がないと風邪ひいちゃう」

と心配そうに答えると、亜月さんは窓の方に向かいカーテンを全部閉め外から見えなくすると言った。

「ありがとう、そうするわ。で、藤咲さんは何しにここに来たの?」

そう言いながら、亜月さんは服をその場で脱ぎだした。

「えっと、生徒会長さんに服を着替えろって言われてここに・・・って、なんでここで脱いでいるんですか!?」

「誰も見ていないし、いいじゃない。そっちも着替えるなら色違いのおそろいの制服にする?楽しそうだし、どういうのが好み教えて」

からかうような笑顔で言い出し、わたしを引っ張った。

「なんでもいいですっ、とりあえず何か羽織るか何かしてください!」

と部屋の中で叫んでしまった。


その後、わたしたちは話しながら制服を選んでいた。亜月さんも着替え用の制服を決めかねていたらしい。好きな色やモチーフの話などいろんなことを話し合った。

「ねぇ、藤咲さん。理架って呼んでいいかしら、私のことも琴音って呼んで。せっかくまた出会えたんだし」

「あっ、うん。・・・琴音ちゃん」

少し照れながら互いの名前を呼びあった。

そして、ふたりは少し私服っぽいお嬢様系のスカートの丈が少し長いタイプの制服に着替えた。琴音ちゃんが、絶対にミニスカだけは嫌だと言い出したからだ。

わたしは全体的に少し黄色がかったアイボリー的なカラーにし、琴音ちゃんは少し青っぽいカラーを選んだ。琴音ちゃんの長いストレートの紫色の髪にすごく似合っていた。濡れていた髪の毛もドライヤーで乾かしたので二人そろって制服に着替えた。

わたしはつま先で立ちくるっと回ってスカートが広がるのを楽しんでいた。

そうすると琴音ちゃんが奥から何かを持ってきた。その手にはくしとヘアゴム、そしてリボンがあった。

「わたしは初めて会った時みたいにポニーテールにしようと思うんだけど理架はどうする?」

そう聞いてきた。このままでいいというと琴音ちゃんは、少し悩みだした。

鏡を見ながら器用にポニーテールに結びなおし、結んだゴムの上から細いリボンを結んだ。そして、鏡越しにわたしを見て言った。

「こっちに来て、似合う髪形にってあげる」

そう言われ、わたしは手を引っ張られ鏡の前に呼ばれた。

わたしは鏡の前に隅っこに置いていったイスを持ってきて座った。

わたしの髪の毛を手慣れた様子で琴音ちゃんが触れた。少しくすぐったかったけど、琴音ちゃんからラベンダーぽい良い匂いがしてどうでもよくなってしまった。

「慣れてるね、ちょっとうれしい。こんなことされたの初めてだから。どんな髪形にしてるの、おんなじポニーテール?後ろからだとよくわからない」

鏡を見ながら後ろにいる琴音ちゃんに聞いた。

「寮で一緒に暮らしている一年生のプランセースの髪の毛をほとんど毎日してるからかな?自分でもうまくなっていること自覚してる」

「プラン・・・セース、何それ人の名前?」

そう前を向きながら後ろに聞くと琴音ちゃんは、あぁ転入生は知らないよね・・・と小さく呟き教えてくれた。







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