空ときみの間。
嵩冬亘
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それは、突然この世を襲った悲劇だった。
僕は一瞬にして家族というものを失い、冷たい瓦礫の下でただじっと、横たわっているだけだった。
─────このまま僕は死んでしまうのかも知れない。
そんなことを思いながら暗闇に包まれた視界の先をぼんやりと見つめていた僕の目の前に、ふと、僅かな光が落ちてくる。そして、憶えのない男の人の声が聞こえ、彼は僕の方へと大きなその手を差し出しながらこういった。
「……俺とくるかい?ボウヤ」
あの日から僕のすべては『彼』になった。
あの人の存在が僕の世界というものを形成してくれる、『唯一』となった。
僕は、あの人が望むなら何だってできると思った。たとえそれが周りから非難を浴びるようなことであろうとも、何ひとつ苦痛に思うことなんてなかった。
あの人がいなかったら僕なんて小さな存在は、とっくのとうに消えてなくなっていたのだから。
だからあの人が望むなら、『死』すら怖いと思う程のものじゃなかった。
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