だい50にゃ・最後の侵略

「にゃん」

「来ましたね」


 僕の隣にいるシャオたんとララノアが話す。

 こちらが準備を終えた数週間後に、再びハイエルフが侵略してきた。

 魔法で目を強化して遠くを見てみると、先頭はハイエルフではないみたいだ。

 むしろ犬耳っぽいのが生えている?


「先頭はハイエルフじゃないみたいだね。

 なんか犬耳生えてるけど?」

「それは……犬耳族ですね。恐らく先鋒には他種族を使っているかも知れません」


「倒してもいいんだよね?」

「たぶん無理やり連れてこられた奴隷だと思います……」


「……え!?」


 海には多くの機雷を設置してある。

 あれに当たったら木っ端微塵だ。

 急いで魔法を唱えて、もう少しで接触しそうになっていた機雷を攻撃して爆発させる。

 それから別の魔法を唱えて機雷を全て停止させた。

 何かあった時の為に、停止させる効果を付けておいてよかった。


「さてと……」


 ファイアーボールを幾つもの上空に浮かべる。

 ハイエルフが乗っている船だけに狙いを定めて発射させた。

 敵も結界を展開して攻撃を防ぐが、数発も当たると結界が耐え切れなくなって砕け散る。

 無防備になった船にファイアーボールが当たって轟沈していく。


 そうしている間に船が砂浜に乗り上げていた。

 そこから次々に飛び降りて来る多種多様な他種族が、ハイエルフの指示を受けて走り迫っていた。

 僕は砂浜に上陸して指示をしているハイエルフに狙いを定めて、一人ずつ倒していく。

 迫ってくる集団の中に一人、まだあどけない顔をした少女が居た。

 その少女には可愛らしい犬耳とふさふさの尻尾が生えている。

 少女は両手でしっかりと短剣を握り、泣きながら走り迫ってきていた。


「ウィンドインダクション」


 僕は呪文を唱えて、走り迫ってくる奴隷たちに対して頭上から風を吹かせて動けなくさせた。

 唯一魔法の対象にされていなかった犬耳少女が辺りをキョロキョロ見始める。

 走っていた足が早歩きに、そして早歩きが普通に歩く速度にまで落ちていった。

 一人だけ自由に動ける事に気が付いて、キョロキョロガタガタ震えだす。

 僕はそんな犬耳少女を見詰めながら近づいて行った。


「うぅぅ……ぐるるぅぅう!」


 僕が近づいて行ってるのを犬耳少女が気づくと可愛い声で威嚇し始めた。

 酷く怯えてぷるぷる震えているのに両手にはしっかりと短剣が握られている。

 僕はその姿を見て、鼻を伸ばした。


「かわええ……」

「ぐるるぅぅ……るぅ?」


 無防備に近づく僕を不思議に思いながらも、犬耳少女は短剣を握り直して距離を詰めてきた。

 きっと今ならイケルと思ったのかもしれない。

 僕は触れられそうな程の至近距離にまで来ると、そっと膝を地面に突けた。

 それを見た犬耳少女が大きく腕を振り上げて突き刺そうとしたままの姿で固まった。

 きっと僕を殺すことに葛藤があるんだろう。可愛そうに。


 そう思いながら僕はゆっくりと、犬耳少女が着ている貫頭衣の裾を両手で握った。


「わん?」


 腕を振り上げたまま不思議そうに顔を傾ける犬耳少女。

 それを見上げながら裾を捲り上げる僕。


「っ!? わ! わん!?」

「ふぅー! ふぅー! ふぅふぅぅー!」


 可愛い歓声に鼻息で返事をしておいた。

 犬耳少女は捲り上げられる服を片手だけで押さえている。

 しかし、片手だけでは到底僕の力には抵抗出来なかった。

 犬耳少女は一度短剣を見詰めると、直ぐ脇へ投げ捨てた。


 よかった。どうやら僕の説得に応じてくれたみたいだ。

 説得は言葉だけが全てじゃないからね……?

 それでも僕は両手で捲り上げる、犬耳少女も必死になって抵抗し始めた。


「わ、わん! きゃ!? きゃん! きゃん!?」

「ふんが!? ふふんがぁ!? もう少し! もう少しでえぇぇぇぇ!!!!」


 とうとう涙目になって抵抗し始めた犬耳少女の貫頭衣を脱がす勢いで捲り上げた。


 犬耳少女の姿は、まるで花のつぼみのようだった。

 貫頭衣を捲り上げられ、万歳した状態のまま両腕を握られて、本来隠すべき所は全て見えてしまっていた。

 年齢の割には大きなマシュマロに目が釘付けになる。

 ほんの少し筋肉質で締まった体に、ほんのりと香る獣臭さ。

 

「いい……いいよ君!! ぺろんぺろんしちゃうね!?!?」

「きゃん!? く、くぅ~ん! くぅ~ん!」


「おいちぃー!! おいちぃーよ獣っ子汁! おいちぃよぉぉ!!!!」(ちゅっぱちゅっぱ)

「くぅ~ん! くぅ~~ん!! わ、わん~」(びくびく)


 朝っぱらからオッパジメタ僕と犬耳少女との行為を見た奴隷たちは皆、口を大きく開けて見入っていた。

 僕は彼らをこちら側に吹き飛ばしながら、大きなマシュマロに吸い付く。


「まったく、恥ずかしいじゃないか。ね? 可愛いわんちゅぅわ~ん!? ちゅっぺろ!」

「わ、わん? わ!? きゃん!? きゃんきゃん!?」


 僕は何度も何度もしつこく舌を行ったり来たりさせながら体を舐め回す。

 奴隷をこっちに吹き飛ばして気絶させた事によって、目的の一つだった奴隷の確保も済んだ。

 マジックゴーレムや手伝いとして来てくれた猫耳少女たちが、せっせと奴隷を安全な場所にまで運び出すのを眺める。


「ちゅっぱ! ちゅっぱ! きゅぽん! れろれろ!!」

「きゃん! きゃん! きゃん! きゅぅ~~ん!!」


 さて、後の敵はハイエルフだけだ。

 存分に暴れるとしようか?


 僕は犬耳少女に抱きつきながら上空に浮かぶ。

 敵の方も第二陣が続々と砂浜に上陸してきていた。

 彼らは僕を指さすと、エルフ語を叫びながら魔法で攻撃してくる。


「結界展開」


 幾つもの魔法が襲って来るが、僕の結界はビクともしなかった。

 ただ、当たった時の微振動や音に驚いて、犬耳少女が僕にしがみ付いてきたから舐めておいた。

 英気も養ったので集中して魔法を撃つ準備を始める。

 数は多いけど、敵の大半は海の上だしこの魔法でほぼ壊滅だろう。


「むむむぅぅ! ――サイクロン!!」


 僕が浮かんでいる所から海へ向かって大竜巻が吹き荒れる。

 砂浜に居たハイエルフたちは風を受けて空高く舞った。

 さらに海の上にいた大船団が風と津波に飲み込まれていった。

 彼らも必死に抵抗していたが、暴風を防ごうとするれば波が、波を抑えようとすれば暴風が襲ってきて成す術も無く沈んでいった。


 後方にいた数十隻はこの海域から脱出したみたいだ。

 本当は全部沈めるつもりだったんだけど、優秀な魔法使いが居たみたいだね。

 目の前の出来事を見て縮こまっている犬耳少女のお尻を揉みながら地面におりる。

 

「にゃぁ~ん? にゃんにゃん」

「これからどうしますか?」

「うぅ~……ん」


 ララノアが前に言ってたように、たぶんハイエルフたちは諦めないだろうな~。

 なんとな~くプライド高そうな顔してたし、今回なんて、攻めてくるのに他種族まで狩り出してきたし。根本を叩かないと他の種族がさらに犠牲になりそうだよね……。


 両手で尻尾を『シュッシュ』しながら後ろを見る。

 そこには気絶や負傷をしていた奴隷たちの治療をしたり、ご飯の用意をしている様子が映っていた。

 果物を受け取る列に行儀良く並んだ奴隷たちが、食べ物を受け取ると美味しそうに仲間内で雑談しながら食べている。

 ちなみに、列を乱したり割り込んだりした奴隷は【猫耳戦士ズ】という、勝手に命名した猫耳戦士の集団に猫パンチをもらって早くも更生している。

 今のところ他種族による喧嘩もないみたいだ。


 ってかこの人たちどうしようか?


 僕が『うんうん』唸っていると、シャオたんが砂浜に絵を描き始めた。

 何? ここでお絵かきするん?

 棒を使って『にゃんにゃん』と、お絵描きし終えたシャオたんが僕を見る。

 その絵は、この島の地図に幾つかの円を描き加えていた。


「ん? もしかしてテリトリー? 居住地を作るってこと?」

「……わん?」

「私にもそう見えますね」

「にゃ~ん。にゅにゃんにゃ~」


 最初から多種族を一緒に混ぜて住まわせるよりは、種族ごとの居住地を作ってあげた方が生活もしやすいし問題にもならないか。

 ただ、今すぐ種族ごとの居住地なんて作れないから、まず最初は共同の場所を作ることから始めるかな。

 食料はジャングルに行けば色んな種類があるし、飢えることはないだろう。


「よ~し! 明日から皆が住む場所つくるぞぉ~!」

「にゃぁー!」

「わかりました」

「わん?」


 

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