だい32にゃ・神話の戦い
僕は飛んで巨人に向かうと、巨人の方も僕へ近づきながら黒い刃を飛ばしてきた。
その数は70近く。一つ一つが不規則に動きながら僕へ向かって飛んでくる。
「迎撃しろ! ウィンドカッター!」
迫り来る黒い刃を時に避けたり、時に魔法で迎撃していく。
背後からも何十もの黒い刃が迫って来ている、それらを全て急上昇しながら回避していくと、黒い刃の方も方向転換して追尾してきた。さらに上空からも黒い刃が降って来る。
「トルネイド!」
周囲に竜巻を起こして黒い刃を絡め取っていくが、まだ幾つも迫ってきている。
次の魔法の準備をしながら、今度は上昇を止めて急旋回を始める。
迎撃しても迎撃しても次から次へと黒い刃が増えて来ていたから、迎撃するよりも巨人を直接攻撃した方が早いかもしれない。
巨人との距離はまだあるが、ココからでも当たる魔法を既に準備してある。
「破滅の大竜巻よ! 眼下の敵を切り刻め! サイクロン!!」
トルネイドとは比較にならないほどの荒れ狂う大竜巻が巨人の中心で発生する。
「ゴオオオオォオォォォ!!」
至る所を深く切り裂かれてながら、竜巻に吹き飛ばされないように巨人が耐えている。
だが、切り裂かれた箇所が直ぐに自己再生していく。
「むむん!! むむむううぅぅぅぅぅ!!」
手元に残してある竜巻の渦の素に魔力を送り込みながら竜巻の勢いを強くしていく。
巨人がこの暴風に耐えられるのは少し計算外だった。
次の魔法を準備しなきゃ。
「ゴオオオオオオォオォオォォオォ!!!!」
巨人の中央から黒い結界が広がっていった。
それは僕の魔法を打ち消しながら、どんどん膨れ上がっていく。
醜く歪に膨らんだ結界から複数の触手が僕を捕まえようと伸びてきた。
「うおおぉぉお!? こ、ここでそれか!! 僕は女の子じゃないぞ!?!?」
絶対に捕まってたまるものかと、グングングングンスピードを上げて捕まらないように足掻く。
執拗に僕を追いかけてくる触手に、ちょっとの興奮と多大な恐怖心を抱きながら僕は旋回する。
もしかしたら、よくある対処法のように触手を絡ませる事が出来るかもしれない。
後ろから迫ってくる触手から逃れるように、横から迫ってくる触手を回転しながら、前方から迫ってくる触手を脇を通り抜けるようにすり抜けながら動いていくが……。
「全然絡まん……少し絡まっても自分で解いちゃうし、ちょっとむ――っうおぉ!?!?」
いつの間にか杖に触手が絡まっていた。
前につんのめる様にして何とか止まれたが目の前にも触手が迫ってきていた。
「おっふぅ!? ちょ! っまって――んぐ!? んぐぐ!?」
触手が僕の足や腕に絡まり、僕の魅惑的な口の中にまで侵入してきた。
『じゅっぽじゅっぽ』卑猥な音を立てながら、何度も何度も僕の口を蹂躙していく。
こ、これはまずい!?!? まずいぞぉ!? ん! こ、こんなもの噛み砕いて……ん! だ、だめ!! こんな太くて硬くて黒光りしてるモノを噛みきれるわけがない。
あぁん! こ、このじょうたいも、な、なかなか――ってなわけあるかぁぁ!!
「っもが!? ももんが!! もも!! か、噛みきれにゃいならぁぁぁ!! んぐ!」
魔法を使おうと集中するが、その瞬間に僕の太ももを撫でられ、さらに両足を左右に引っ張られて股が開いていく。
「っも!? もがが!? ももん!! ががががが!!」
大きく股を開けられた姿勢の僕の目の前に、太くて硬くて黒光りしてて形がどこからどう見てもアレです、本当にありがとうございました。的なモノが掲げられていた。
落ち着け! お、おおぉ! 落ち着け!? ま、魔法だ! ま、まほうをつかえばばばばば!!
アレがゆっくりと僕の股――いや、お尻に向かっていくと狙いを定めた。いや悪寒がした。
「がばがばがばば!! け、結界展開いいいいい!!!!!」
これまで、今以上に必死になったことがあっただろうか? いや、ない。(反語)
『ガキン!!』と鋭い音を立てながら、太くて硬くて黒光りしてるアレが阻まれた。
だが、それだけに
次々と結界の隙間を狙うかのように四方八方から触手がケツ穴を目指して群れていた。
『ガン!ガン! ガン!』と、響く音に神経をすり減らしながら、集中する。
大丈夫。落ち着け。
『ガンガン!』
落ち着けば、
『ガンガン! バキ!』
お、落ち着けば。
『ガッキンバキャンドガーン!!』
おぉ! か、神よ!!
『ドンドン! パリン! ……ヌチャ』
っ!?!?!?!?
ものスンゴイ動揺したが魔法は完成した。僕は心の中で魔法を唱える。
《チェインライトニング!!!!》
次々と上空から雷が落ちてきて、巨人と触手に絡みつき電撃を流し込んだ。
僕は電撃が迫る少し前に『ウィンドカッター』で触手を切って脱出する。
「っかは! っぺっぺ! ひどいもん口ん中いれやがって!! ケツにも少し入っただろテメェ!?」
落下しながら集中する。
掛かっていた魔法が解けてしまったから掛け直さないと。
「――魔装強化術・改!
――スカイウィング・改!」
丁度、巨人の七つ目の位置で落下が止まった。
少しだけ見詰め合う。
「ロックキャノン・改!!」
超巨大なドリルが巨人の目を目掛けて飛んでいく。
ドリルは目に命中するとその回転を増しながら少しずつ掘り進んでいった。
「ゴオオオォォォォオオオォオオオォオオ!?!?!」
激しい火花を散らしながら少しずつ巨人を削っていく。
先にドリルの先端がひしゃげてきた、だがこの事を予想して時限爆弾の効果も追加してある。
急いで離れながら集中する。
「ロックキャノン・改!!」
二射目のドリルが飛んで行った瞬間に最初のドリルが爆散する。
爆発でさらに大きく穴が開いた場所に次のドリルが命中する。
巨人が黒い槍を出現させ、僕へ向けて放ってきた。
「ファイアーボール!」
火炎の球を飛ばして黒い槍に着弾させるが、少し軌道を逸らせただけに終わった。
直ぐに横に回避して避ける。
結構強力な魔法だ、連続で撃たれたら厳しいかもしれない。
ドリルを見ると回転を続けながら掘り進んでいた。
どうやら再生能力よりもこっちの攻撃力の方が
もしくは、攻撃され終わらないと再生しないとか?
少し考えていると、時間が来てドリルが自爆する。
次のドリルを出現させようとしている時に、巨人と目が合った。
巨人は淡く輝いている。
「ま、まさかね?」
ゆっくりと巨人の巨体が持ち上がって空へ舞う。
どうやら巨人も飛べるみたいだ。もう、何でもありだね……。
「戦い
さらに自分の体を強化する。
明日には前以上に酷い筋肉痛になるな。やだな~。
向かって来る巨人に一瞬で近づくと、先端に石の槌を付けた杖を大きく振り下ろす。
『ゴン!』と、巨人の頭部を若干陥没させながら物凄い速度で落下していった。
巨人が地面に激突すると大きなクレーターを作りながら沈んだみたいだ。
追い打ちをかけるために両腕を大きく広げて、手に魔力を籠めはじめる。
巨人が手を突きながら起き上がると、口を大きく広げて僕に狙いを定めていた。
「セレスティアルレイ・改!」
「ゴオオオォォオォオォ!!」
両手に集めた魔力を体の正面で合わせて閃光を放つ。
巨人の方も口から黒い閃光を放った。
お互いにお互いを狙った閃光が一直線に進んでいくと、僕と巨人の中心で白と黒の閃光がぶつかり合って押し合う。
「ぐぬぬぬぬぅぅぅ!! こ、こんにゃろおぉぉぉ!!」
「ゴオオオォォオオォオオ!! ガァアアアア!!」
ありったけの魔力を籠めて両手にどんどん送り込む。
少しずつ僕の方が押していっているが、少しでも気を抜いたら立場が逆転する気がする。
魔力を流し続けている僕の腕が熱くなってきた。
これ程までに大量の魔力を流し続けるのは初めてだ。
だんだんと腕の感覚が麻痺してきた。体にも少し疲労感を感じ始めている。
「くっそおおぉおぉ!!」
巨人の方も余力が無くなったのか少し勢いが弱まった隙に、自分の魔法の威力を上げる。
巨人の黒い閃光が、僕の白い閃光に飲み込まれて辺り一面が真っ白い光に包まれた。
地面が大きく破砕する音とが響いてきたが、巨人には再生能力がある。
僕は腕を天に掲げて魔法を唱える。
「宇宙からの破滅の使者よ! 大地に風穴を! 敵を埋没させよ!
――メテオストライク!!」
僕は手を振り下ろしたままの姿勢になって固まる。
膨大な魔力を失ったが何かが起きた現象は見られなかった。
だが、少しすると空から微かに音が聞こえてきた。
上を見上げると見えてきたのは流れ星。
流れ星にしてはひどくゆっくりと、だが目に見えて大きくなってきている。いや、近づいてきている。
それは、大きな隕石だったのだから。
僕は急いで下を見る。
二人の猫耳戦士は馬車まで避難していて、他の猫耳少女たちと一緒になって穴を掘っていた。
気持ちは分かる、僕もそうしたい。でも、軌道修正するのにもう少しこのままでいるしかない。
いま制御を外しても命中するとは思うけど、それはこの大陸の何処かに。
猫耳少女たちは身を隠せるくらいにまで穴を掘ってもまだ足りないと考えているのか、さらに掘り進んでいっていた。心配しなくても彼女たちはなんとなく大丈夫だと思う。
隕石が大気圏に突入し雲を突き抜け落下してきた、その周囲には数多くの火球も見える。
煙が尾を引きながら隕石が巨人目掛けて降り注ぐ。
「こ、これヤバくね……?」
自分の身の危険を感じて、急いで空高く逃げる。
本当は地面に籠りたかったけど、ここから穴掘る時間を考えると間に合わない。
落ち着いて結界を張りながら離れれば大丈夫。たぶん。
「け、っけ! 結界展開いいぃ!! 二重展開! 三重展開! 十重展開いぃぃぃ!!」
隕石が巨人に命中する。
その瞬間に辺り一帯が光り輝いた。
離れていても体にビンビン響くように重低音が鳴り響く。
インパクトポイントからは津波のように地面が捲り上げり土埃が襲ってくる。
さらに、隕石などの細かい破片一つ一つが人を死傷させる程の猛スピードで迫り来ていた。
「こ、怖いよおぉぉぉぉおぉぉぉ!!」
円を描くように張った結界を土埃が包み、破片が絶え間なく結界に当たり雨のような音が聞こえて来ていた。経験したこともない体験と光景に体が震える。
土埃が徐々に晴れてきて、巨人がどうなったのかを見るために近づいてみる。
隕石が落下した地点は消滅していた。
正確には、地面に大きなクレーターが出来て海水が流れ込んでいた。
巨人の姿も確認できなかった、もしかしたらクレーターの中に沈んでいるのかもしれない。
巨人は呼吸してるんだろうか? していてくれてたらこれで倒せるんだけど。
ちなみに神殿は隕石の衝撃波によって瓦礫の山になっていた。後の歴史家に叩かれそうだな、僕が。
猫耳少女たちの方は、穴から顔だけを出して辺りを窺っていた。かわいい……。
「あんなビクビクしながらキョロキョロして、かわいいな――っ!?」
海に飲み込まれたクレーターから突如触手が伸びてきて僕の足を捕らえる。
「あわわ! い、生きてたんか!?」
さらに複数の触手が一斉に僕に向かってきた。
「ウィンドカッター!!」
触手を風の刃で切り裂きながら掴まれた状態から脱出する。
「ゴオオォォオオ!!」
「っな!?」
触手を伸ばしながら巨人が猛スピードで飛んできた。
全体が傷ついたり陥没していいて、右足首は損失し、顔も少し欠けている。
僕咄嗟の事で反応できず、巨人に体当たりされて後方へ吹き飛んでいく。
巨人は黒い刃を複数飛ばしながら追撃してきた。
一直線に向かって来る黒い刃に向けて杖を振る。
「バースト・改!」
攻撃を迎撃するように爆発が起きた。
全てを破壊することは出来なかったが、残ったのを火炎の球で迎撃して防ぐ。
巨人がまたしても速度を上げて僕に迫ってきた。
「ジェットストーム!」
魔法で加速して巨人の脇を通り抜けようとすると、巨人の拳が振り下ろされる。
その攻撃を回避しながら振り返って集中する。
「クラッグプッレス!」
巨人の頭上に大きな岩の塊が出現して、そのまま落下する。
巨人はそれを破壊しようと腕を振り上げた、その瞬間を狙って魔法を唱える。
「ライトニング!」
腕を突き上げ、岩を破壊した瞬間に雷が巨人に向かって落ちた。
突き上げた手がドロドロと溶けていった。
他の傷付いた箇所もまだ残っている、再生能力が落ちていてるんだろか?
いや、少しずつだが傷が治ってるな、まだ完全に能力が無くなった訳では無いか。
「ゴオオォォオオォオオォォオォ!!!」
巨人が輝きを増して突っ込んで来る。
拘束するために魔法の準備だ。
「ライトニングウィップ!」
鞭の雷が巨人に巻きついた。
だが、構わずに突っ込んでくる。
それを間一髪で躱すと、巨人がそのまま突き進んでいった。
僕はそれに引っ張られるように島を大きく離れていった。
巨人は鞭を引っ張りながら、溶けた手で殴りかかってくる。
「結界展開!!」
『ガギイィン!!』と大きな音を響かせながら打撃を阻んだ結界に、もう一度拳を振り下ろす。
二撃目に耐えられなかった結界が砕け散りながら僕を叩きつけた。
「っかは!」
大きく下に吹き飛ばされながら杖を向ける。
元の大陸、いや島を離れて今は海のど真ん中にまで来ていたみたいだ。
そんなことを感じながら魔法を唱える。
「舞え! 氷の舞を! ダイヤモンドダスト!!」
巨人を包み込んで氷の吹雪が舞い踊る。
無数の氷に体中を傷付けながら、巨人が大きく口を開いた。
そこには黒く輝く光がどんどん集まっていっている。
全力でこっちを倒そうとしてるな。
僕も杖を前に持ち、集中する。
ありったけの魔力を杖に送り込んで使う魔法をイメージしていく。
隕石よりもさらに強い攻撃じゃなきゃ倒せないだろう。
再生能力も下がってきているから、何度も攻撃していれば倒せるかもしれないが、こっちの魔力も減ってきているのを感じている。
相手を消滅させられる程の力を。そんな魔法を想像しながら魔力を籠めていく。
「ガガアアアアァァァァアアァァァアアァアアアア!!!!」
先に撃ったのは巨人。その放たれた巨大な黒い閃光が一直線に向かって来る。
あまりにも禍々しく強力な攻撃に逃げ出したくなるが、グッと堪える。
目前にまで迫ってきた黒い閃光を前に、杖を巨人のいる上空に向け魔法を唱える。
「悪しき敵を滅ぼせ、全ての生物に、殲滅の浄化を! アルマゲドン!!」
僕は一気に魔力が失われる感覚と、目の前に現れた目を瞑るような閃光に襲われた。
光り輝く閃光が黒い閃光と均衡したかと思うと、一瞬で押し返していく。
巨人は必死に抵抗していたが、光に飲み込まれていった。
足や手が粉々に吹き飛び、その細かな破片も光に包まれて消滅する。
「ガガア゛ア゛ァァア゛アアァア゛ァァアア゛アァァァァァ!!!!」
光り輝く閃光は七つ目の巨人を消滅させ、そのまま雲を裂いて突き進む。
こんな強力な魔法を地上に撃ったら大変なことになっただろうな。
もし、後世に魔法を伝える事になった時のために、もっと安全な魔法でも作らないと。
微かに残った破片が海に落ちていくのを見ながら、僕は意識が薄れていくのを感じていた。
「あ、あれ? い、意識が……――
――み、みんな。無事、だったかな……?」
僕は直ぐ下に広がる島を見ながら皆の無事を願う。
魔力が底を尽きかけている状態だと著しく思考能力が下がるみたいだ。
海に落下していく僕は最後の力で簡易な結界を張る。
これで海面に激突しても即死はしないだろう。
もっとも、その後の事は、知らないけど。
どうか皆が平和に暮らせますように。
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