だい31にゃ・黒き黄金の輝き

 七つ目巨人との戦闘は直ぐに始まった。

 猫耳剣士が剣を構えて突貫してい行き、猫耳拳士は空高く舞い上がって行く。


 「ニャアアアァァーーー!!」


 巨人が突き出した腕をい潜りながら避け、七つ目の瞳を突き刺そうとするが、火花を散らしただけだった。剣を引き戻しながら二撃目、三撃目を斬撃を繰り出すが結果は同じだった。


 「ニャアアアァァァ!!!」


 空から急降下しながら猫耳拳士が巨人の頭に蹴りを繰り出す。


「ニャ!? ニャニャニャッッ!!」


 ビクともしなかった巨人に驚きながらも何度も足で踏みつけて攻撃するが、効果は無さそうだ。

【魔装強化術・改】を使ってこれじゃ、どうしようもなさそうな感じなんですが。

 しかも、弱点っぽかった目を狙っても効果が無いとか……。


「ニャ!」

「ニャァ!」


 それでも諦めずに、二人の猫耳戦士が一緒に攻撃をしだす。

 何度も何度も執拗に攻め続けていくと、微かにだが傷がついているようだった。

 僕も援護するために、集中して魔法を唱える。


「ブリザード!」


 杖の先から大きな氷の塊が出現して、巨人に向かって飛んでいく。

 氷の塊が巨人に命中すると、ほんの少しだけ傷付いた。

 だが、直ぐに傷付いた箇所が一瞬で治っていった。


「うっへぇ~……自己再生つきかよぉ」


 巨人がゆっくりと歩み始める。

 果敢に攻める二人の猫耳戦士を腕で払いながら、僕に近づいて来ていた。


「アシッドスピア!」


 こんだけ標的が大きければ、酸の槍も躊躇なく使える。

 巨人の頭部目掛けて飛んだ酸の槍は『ジュッ!』っと、音を立てながら命中したが、少し溶けただけで直ぐに再生した。


 猫耳戦士の攻撃も効かないし、魔法もまともに効かないし、どうしろっていうんだよ……。

 もっと魔力を籠めれば効きそうだけど、どこまで籠められるのか試したことないし、猫耳戦士にも被害が及びそうなんだよな。


「ゴオオォォォオォォ!!」


 巨人が大きく口を開くと、黒い光が見えた。


「あ、なんかヤバそう」


 直ぐに加速しながら上に飛ぶと同時に巨人の口から黒い閃光が放たれた。

 巨人が顔を動かしながら僕を追うように閃光を放ってくる。

 僕は上に下にと避け続けていると、閃光が止んだ。

 巨人を見ると、地面に手を突いていた。


 疲れた訳ではなさそうだよな。

 すると、巨人が大きく叫ぶ。


「ゴオオォォォォォォオ!!」


 地面から土や石で出来た2メートル程のゴーレムが這い出てきた。

 それらは、完全に立ち上がると一直線に走って行った。

 僕に向かう訳でも、猫耳戦士でもなければ、馬車の方向でもない。


「もしかして……猫耳剣士ちゃん! 猫耳拳士ちゃん! あいつらを倒して!!」


 あの進行方向は猫耳少女たちが住む村の方向だ。

 僕の横を通り過ぎていく二人の猫耳戦士に魔法を掛け直しながら、地面に湧いているゴーレムに魔法を放っていく。


「トルネイド!!」


 数多くのゴーレムが竜巻に巻き込まれて、体中を切り刻まれていく。

 ゴーレムの進行方向上に立った二人の猫耳戦士もゴーレムを叩き潰していく。

 全然数が減らない。ざっと見るだけでも1000近くいるだろう。しかも未だに増え続けている。


「ゴオオオォォォオ!!」


 七つ目巨人が地面から手を放すと、僕へ向けて再び口から黒い閃光を出す。


「結界展開!!」


 幾重にも重ねた結界を張って自分の身を守る。

 表面の結界が見る見ると壊されていくが、その都度厚みを増していって耐えることが出来た。


「ゴオオ!」


 さらに複数の黒い刃が飛んできた。


「あわわわわ!!」


 間一髪で避けながら、黒い刃に魔法を当てて粉砕する。

 それでも、次々に飛来する黒い刃から逃れるようにさらに飛ぶ速度を上げて振り切ろうとするが、何時までも追尾してきた。

 高速で飛び回りながら、集中して魔力を籠める。

 黒い刃はどんどん増えていき、僕を四方八方から囲むように一斉に飛んできた。

 だが、こっちも準備は出来た。

 籠めに籠めた魔法を一気に解き放つ。


「セレスティアルレイ!!」


 天空から光り輝く閃光が降り注ぐ。

 閃光は瞬く間に黒い刃を迎撃しながら、地上のゴーレムや七つ目の巨人すらも攻撃し始める。

 地上に無数に居たゴーレムたちの大半が消滅し、巨人にも焼かれた跡がハッキリと見えた。

 しかし、巨人の傷は直ぐに再生していっている。

 地面からは未だにゴーレムが這い出て来ているが、最初と比べると数はそんなに多くは無い。もっとも、猫耳戦士二人だけに任せるには多すぎると思うほどだけど……。


「ゴゴオオオォォオォオオ!!」


 巨人が吠えると神殿から全長3メートル程の、目の無い赤い巨人が8体飛んできた。

 8体とも剣に盾と、六つ目の騎士の巨人より簡易だが騎士の装いをしている。

 剣を振りかざしたり、突き刺すように構えながら僕に突っ込んで来ている。


「ライトニングウィップ!」


 雷の鞭を左手に出現させながら、赤い騎士を近づけさせないように牽制する。

 さらに右手に持った杖で攻撃を加えていく。


「ファイアーボール連射・改!!」


 杖の先から次々と1メートルはある火炎の球を連射する。

 一体の赤い騎士が火炎球に当たってドロドロに溶けていく。さらにもう一体を雷の鞭で拘束しながら電撃を流し込んでいく。


「ッ!!」


 叫ぶこともなく無言で背後を取った赤い騎士の斬撃を避けながら、杖を向けて魔法を唱える。


「弾けろ!! バースト!!」


 頭を吹き飛ばされた敵が地面に落下していく。

 その隙を狙った5体の赤い騎士が僕を囲んで一斉に剣を振り下ろしてきた。


「んぐぐぐ!!」


 一気に急降下して地面に着地する。

 そこは、ゴーレムたちが村を目指して進行しているど真ん中。

 着地と同時に発生した衝撃波に周りにいたゴーレムが吹き飛ばされていく姿を横目で見ながら、杖を地面に叩きつける。


「揺れろ大地よ!! アースクエイク!!」


 僕ですらも立っていられない局地的な地震が発生する。


「スカイウィング・改!」


 新たに空を飛ぶ魔法を掛け直しながら浮かぶ。

 僕まで揺れにあたふたしていたら、何にもできなくなっちゃう。


 激しく揺れ動く地震は大地に亀裂を作り、その穴へゴーレムが落ちていく。

 さらに激しい揺れに立っていられなくなったゴーレムたちの進行が完全に止まった。

 僕は再び地面を杖で叩きながら魔力を籠めた魔法を唱える。


「ラーヴァジェット・改!」


 至る所で地面に穴が開くと溶岩が噴射する。

 ゴーレムたちは溶岩に吹き飛ばされたり、飲み込まれたりしてその数を急激に減らしていった。

 上空には僕を刺し殺そうと急降下してくる赤い騎士が見える。

 さっさと逃げよう、これで猫耳戦士ちゃんも楽になっただろうし。

 杖に跨って集中する。


「ジェットストーム!!」


 跨った杖の後方からのジェット噴射。


「あががががが!」


 あまりのスピードに目を開いていられなくなる。

 正面からの突風から逃れようと、杖を抱きしめるように吹っ飛んでいく。

 赤い騎士は地面に突き刺した剣を引き抜くとこちらを見る。

 まだ5体も残ってる。さっさと減らさないとね。


 赤い騎士たちは全身を微かに輝かせながら空を飛んで向かって来る。


「ゴオオオオオォオォォォオ!!」


 さらに、巨人の方からも黒い刃が無数に……。

 50を超える数の黒い刃が飛んできていた。


 この時の為にさっきまで大人しかったんだな。

 まぁ、こっちも逃げながら次の魔法を使う準備してたけどね。


 魔力を籠めて凝縮した魔法を解き放つ。


「怒れ! 破裂せよ! 破滅の輝きを! 破壊の美酒を!

 ――エクスプロージョン!!!!」


 一瞬魔法を放とうとした目標地点が光り輝くと、強い光が見えた。

 それから少し遅れて轟音が鳴り響く。

 想像以上の大爆発に自分でもビックリしたが、そんな暇はない。自分も危ないから。

 下を見ると、猫耳戦士が急いで地面に穴を掘って隠れていた。

 なんかゴメン。


「あばばばば! け、ッ結界展開いぃぃぃ!!」


 厚く僕を囲むように結界を張り巡らせて衝撃に備える。

 大小様々な破片や土砂が結界を覆うように飛んできた。

 少ししてからやっと爆発が収まった。


「ファン!」


 周囲の埃を吹き飛ばして視界を確保する。

 爆心地は悲惨なものだった、地面は大きくえぐれ、無数のゴーレムと思われる破片が散らばっていたのだから。

 猫耳少女たちは大丈夫かと見渡すと、馬車はかなり遠くへ避難していたみたいだが爆風の土埃を少しかぶっているみたいだった、特に被害はなさそうだ。

 猫耳戦士の方は、埋まった穴から顔だけをだして周囲を窺っている。


 赤い騎士の方も2体だけ生き残っていたみたいだ。

 七つ目の巨人も勿論生きている、所々陥没していたが既に再生が始まって治ってきている。


 赤い騎士は剣を構えると僕へ向かって飛んでくる。

 だが、それを迎え撃つように猫耳戦士たちが飛んできて戦い始めた。


「ニャァ!」

「ニャンニャン!」


 二人が僕のことを見て鳴く。

 巨人を倒してくれってことかな?

 そういうことなら、ココはお任せしよう。


「気を付けてね!」


 二人に魔法を掛け直してから僕は巨人の許へ飛んで行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る