だい27にゃ・魔法の巨人

 あれから一ヶ月ぐらい経った日の事。

 僕はジャングルに置いた猫耳石像を眺めながら頷く。


「なかなかいい出来じゃないか!」


 自画自賛とはこのことか。と言うほど自分の作品を褒めちぎってから、猫耳石像とは別の場所に置いている石像を見る。

 この石像は、今まで戦ってきた巨人を参考にして自分でも作ってみたものだ。

 完成するまでに結構な日数が掛かったが、満足できるまでの代物になった。


「よ~し! 起動するぞ! 立て! 魔像巨人マジックゴーレム!!」


 マジックゴーレムに触れて魔力を送り込むと、マジックゴーレムの目が光って動き出した。


「おぉ~。此処まで来る苦労を思うと感動も一入ひとしおだな」


 最初の試作の段階でも、簡単な動作をさせられるぐらいには出来ていた。

 ただ、問題があって、一度入れた魔力が尽きると動かなくなってしまう。

 当たり前の事だがこれではまったく役に立たない。

 このマジックゴーレムはもしもの時の為に猫耳少女たちを守るために作ったからだ。僕が居ない時でも稼働してくれないと困る。さらに、魔力が切れたらいちいち僕が入れ直すしかないのも問題だった。

 前にも似たようなことを説明したが、自分の体から離れた物体や魔法に、もう一度魔力を籠めるにはソレに触れているしかない。


 そうなると、この問題の解決方法はファンタジーでお馴染みのマジックアイテムを作るしかないと思った。

 早速、作ろうとしたところで早くも挫折した。

 なんせ、お手本になるマジックアイテムが身近になかったからだ。

 それでも、僕なりに考えて作ってみたが全部ただのガラクタになってしまった。

 物体に魔力を籠める事は出来たんだけど、それを稼働させ続けるのは不可能だった。


 散々悩んだ結果。『もういいや』って匙を投げて、巨人に突っ込みに行った時に、ふと疑問が浮かんだ。

『なんで、巨人は動いていたのか?』巨人は生きてるけど、生きている訳では無い。部品や何かで動いているはずだ。



 思い立ったら直ぐに巨人の許へ向かった。 


 初めに向かったのは、最初に戦った三つ目の巨人。

 何で動いているのか探ろうとしたんだけど、上半身が消し飛んでいて、残った下半身は穴だらけでさらにヌルっとしていた。まったく、誰だここでナニしたのは!


 次に向かったのは、四つ目の巨人。

 この巨人は全身残っているけど、三つ目巨人よりもさらに穴が開いていてヌメヌメしていた。


「Oh……」


 次こそ! と思い向かったのは、一つ目と二つ目の巨人。

 スーパーウルトラマジデオオキナキョージーンの状態のまま、両腕と両足が残っているだけだった。


「……あったとしても、消滅してるわなこりゃ」


 次が本命だ!! と向かった先は、五つ目巨人。

 この巨人は俯きに倒れた状態のまま、ケツの穴から脳天まで大きな穴が開いていた。


「……まぁ、一様探すか」


 僕が入っても余裕なほど大きな穴に入って行くと、小さな欠片が目にまった。

 それは黒いガラスのような欠片だった。

 これだけ異彩を放っているから、もしかしたらコレで動いていたのかもしれない。


「他にも何かないかな~」


 キョロキョロ、ペタペタ探していると、模様が描かれている場所を発見した。

 模様は少し擦れている、さらに模様の中央には何かを挿し込める穴も開いている。

 やっぱりこの欠片が重要なものなのかもしれない。欠けてるけど。

 模様を、布に書き写しながら他にも探ってみる。


「ということでやってまいりました!」


 最後の希望。と、向かった先はイケメンこと六つ目巨人が焼け死んだ《笑》場所。

 炭化している巨人の表面を削りながら、慎重に掘っていく。

 すると、ひょっこり黒い小さな石が出てきた。

 手に取って、光に当てながらまじまじと見つめる。


「はは~~ん。やっぱりお前があやしいなぁ~」


 それを宮殿に持ち帰って研究すること数週間。

 魔力を使って黒い小石を研究した結果出来たのが、この白い小石。


「な、なんでや。……でも、動くんだよね、なんでだろ?」


 ちなみに、黒い小石は試作の白い小石が三つ出来た頃に、勢い余って叩き壊してしまった。

 むしゃくしゃしてやった、結構後悔してる。あと、何故か輝きながら消えていった。なんなん?


 で、完成した白い小石をマジックゴーレムに埋め込んで、今現在、稼働実験している。

 これは、周囲から少しずつ魔力やらなんやらを集めて、半永久的に稼働できるはずだ。たぶん。いや、そうなって欲しい。お願いだから。


『ガシャンガシャン』マジックゴーレムが動き始めて十分ほど。

 自分が白い小石に籠めた魔力がそろそろ尽きる時間だ。

『ガシャンガシャコンガシャシャン』


「…………」


『ガッシャシャーンガシャコーンコンコーンガシャンガシャン』


「…………」


『ガシャーン! キュアンキュアンキュアン! キュィィィーン ガシャーンガシャシャン!』


 大丈夫。どうやら正常に動いているようだ。

 少しアグレッシブな動きを見せていたけど、たぶん、想定の範囲内だ。

 これで、僕が不在の時でも猫耳少女たちを守ってくれるだろう。


「さ~て、もっと作るぞ~」


 腕を捲りながら……ローブしか着てなかったわ。

 既に完成している他のマジックゴーレムにも白い小石を挿し込んで起動していく。

 今のところ全部で5体分だけ。帰ってきたらもっと作ろう。

 明日には、あの神殿に出発するみたいだから。


「にゃ~ん。にゅにゃーん」

「ニャン!」

「ニャァニャ」


 シャオたんと、猫耳戦士が迎えに来てくれたみたいだ。

 空を見上げると夕日が見えた。結構長い事いたんだな。


「帰ろうか~」


「にゃ~ん」

「ニャニャン!」

「ニュ? ニャ~ンニャ~ン」


 さて、明日に備えて準備しないとね。

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