だい21にゃ・渓谷の守護者

「僕には心強い石人形ちゃんが……この前で全部使ったな……」


 かなりの戦力になってくれていてた特攻石人形ちゃんが使えない、他の手段で何とかするしかないな。

 悲しいことに今のところ何の手段も考えていない。


「ニャァ」


 すると僕の両サイドに猫耳戦士が控えていた。

 一人は曲剣を両手に握り、もう一人は手甲の具合を調べるように拳を合わせている。


「戦うの?」

「ニャァ!」


 やる気満々に返事をされた。

 正直、猫耳少女たちを戦いに巻き込みたくなかったんだけど、説得しても無駄かな~。


「あくまで僕のサポートでお願いね~」

「ニャァーン」

「ニャ~ン」


 さて、五つ目巨人も射程に入ったことだし、ぶっ放しますか。

 集中して使う魔法を想像する。


「ファイアーボール! 連射!」


 火炎弾が次々に巨人目掛けて飛んでいく。

 ファイアーボールは巨人に命中すると『ボンボン』と、軽い爆発音をさせながら炎を周囲に撒き散らしていった。以前よりも格段に威力が上がったから無傷で済む筈はないだろう。


「ボオオォォォォォォ!!」


 巨人は魔法が当たってもビクともせずに突き進んでくる。

 しかも、当たった場所は少しすすが付いているぐらいで無傷だった。


「なぬ!? 火に耐性があるのかな? なら次だ」


 杖の先端に、巨大な氷塊を二つ作り出す。


「ブリザード!!」


 杖を振り下ろして発射させる。

 巨大な氷塊は巨人に当たると、綺麗に砕け散っただけで全く効果がなかった。


「にゃんで……いやいや、まだ行くぞ!

 ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!! 来い! 岩の岩盤!」


 巨人の頭上に、巨人を覆い隠せるほどの大きさの岩盤を出現させる。

 魔法は石や土など、その場に存在するものを使うと魔力の消費を抑える事が出来るが、何も無い空間に作り出すと魔力の消費が多くなる。

 簡単に言うと、代用品があればその分楽って事だ。


「ふん! ふんぬぬうぅぅぅぅ!! クラッグプレス!!」


 巨人の頭上から大きな岩盤が落下する。

 ぶつかる音と共に土煙が空高く舞い上がった。


「さらに追撃ぃぃ!! ウィンドカッター!!」


 2メートル程の大きさの風で出来た刃が四つ、巨人に向けて吹っ飛んでいく。

 『キンキン!』と、鳴り響きながら巨人に当たったみたいだ、土煙で何も見えないけど。


「風よ吹け! ファン!」


 さっさと魔法を使って土煙を風で飛ばしていく。


「ボオオオオォォォォォ!」


 巨人はピンピンしていた。


「もしかして、魔法が効きにくいだけで物理はイケる?」


 集中して魔法を唱える。


「――魔装強化術!」


 試しに近くにあった岩をそのままぶつけてみる。


「ボォォォオ!」


 ぶつけた箇所が若干陥没したみたいだ。

 物理が効くのか。接近戦したくないし、できる気がしないんだが。


「僕戦えないじゃん……」


 そう言っている間にも巨人が迫ってきている。

 僕は退避するために自分の足に魔力を集中させて強化する。


「おっと、忘れるところだった」


 他にも猫耳戦士の二人にも強化魔法を施す。


「ニャァ!」

「ニャァンニャ!!」


 猫耳戦士が巨人に向かって跳躍する。


「あ、アグレッシブ……」


 逃げるつもりだったんだけど、まぁいいか。

 僕も慌てて追いかけて彼女たちの援護に回る。もしかしたら物理しか効かない敵かもしれないから。


「ニャンン!!」


 手甲を装備した猫耳戦士が、巨人の膝へ向かって拳を叩き込む。

 魔装強化術を施したかいもあってか、拳の攻撃で巨人の膝が少しだけ陥没した。

 さらに、剣を持った猫耳戦士の攻撃で、巨人の足に傷がつく。


「魔法で物体を作らなければイケるかな?」


 手を地面にかざして岩を浮き上がらせる。

 浮き上がってきた岩の先端を螺旋状にしてから、巨人に向けて放つ。

 回転力を加えたドリルが巨人の腕に当たると『ガリガリ』と、削りながら進んでいく。途中で止まってしまったがこの方法で魔法を使えば有効な事が分かった。


「今までの巨人よりも柔らかい……?」


 これなら楽に倒せそうかな?


「ボオオオオオォォォォォォ!!」


 そう言った瞬間に、五つ目巨人が叫ぶと、巨人は俊敏な動きで動き始める。


「っ!? はや!?」


 物凄い速さで軽快に走りながら、僕を掴もうと何度も何度も腕を振り回してくる。


「あばば!? あばばばばば!? あばぁー!?」


 僕もサイドステップ、バックステップ、ついでにスキップしながらも回避を続ける。


「ぼ、僕だって反撃するぞ!」


 強化した足蹴りを行い、巨人に華麗に避けられたところで『ッガシ』と、捕まれる。


「Oh……」


 ジタバタともがいてみるが、両手両足が巨人の手にすっぽり握られてしまったので抵抗できていない。


「た、たしゅけてぇぇーー!?!?」


 巨人は僕のおケツを自分に向けると、躊躇なく指を突っ込んできた。


「ファッ!?!?」


 急いで僕のケツに魔力を集中させて強化をする。

 指を回転することもせず、予備動作無しで指を突っ込もうとする事に戦慄した。


「飢えすぎだろ! お前!?!?」


 ケツの穴をキュッ! っと締めに締めて、巨人の指がこれ以上侵入してこないように耐える。

 巨人の方は何とかケツの穴に侵入しようと、指をグネグネしたりユッサユッサしたりして僕に物理的にも精神的にも追い込んできた。


「ま、負けないぞぉぉぉぉぉぉ!!」


 さらに魔力を籠めて、ケツ穴を集中的に強化する。それでもなお侵入しようとする巨人の指が数ミリ単位で着実に僕のムチムチなケツ穴に侵入してきていた。


「っふん! っふんんん! ふんぬぬぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「ボオォォォ!! ボオォォ!! ボオオォォォォォォォ!!」


 巨人との激しい組んず解れつの戦い、ここで負けるわけにはいかない、今まで大事に守ってきたものをこんな場所で散らす訳にはいけないのだ! いや、永遠に散らす訳にはいかない!!


『ギチ! ギチチチチチチ!! ギチヌチャギチチ!!』


「フオォォオォォォォ!!!!」

「ボオオォォォォォォ!!!!」


 熱き男の戦いはいまだに決着の様子を見せない。

 漢と漢の熱き戦いの下では二人の猫耳戦士が僕を助けようと攻撃をしているが、魔装強化術の効果がどんどん薄れてしまっていて、決定打を出せないでいるようだ。

 ちなみに何時ものメンバー四人は、馬車の近くでにゃんにゃん応援してる。


「ッフオオオォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

「ボボオオオォォォォォォォオォッォォォォ!!!!」


 いまだに続く激しい攻防に、だんだんと疲労の色が見えてきた。

 第一こんな太い指がケツ穴になんかに入ったら、切れ痔どころか裂け痔になるわ!


「ッフフオオオォォォォ! あ!? んっく! ん! んっふ!!」


 少し気が緩んだ瞬間に指がさらに数ミリ入り込んだ。

 これはマズイ! 不味すぎる! こ、こんな太くて硬いもので気持ち良くなるなんてダメだ! 絶対に! ん!?


「ん! ンッフ!? そ、そこは……ら、らめぇぇー!!」

「ボオオオオォォォオォォォォォオォォォ!!!!」


 巨人が最後の追い込みをかけるように、さらに力を込めてきた。


「うおおぉぉぉおぉぉぉ!!」

「ボオオォォォォオォォ!!」


 ま、待て。まだ助かる方法があるはずだ! そ、そうだ! ケツで指を引きちぎればいいんじゃないか!? 僕は天才か!?


 渾身の魔力と渾身の力をケツを引き締めるのに使う。


『ギチ! ギギギギ! ギチチ!』


「ふぐぐぐ! うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ボオォオ!? ボオオォォォォォォ!!」


『ポキ』っと、ケツにめり込んでいた巨人の指が千切れた。

 ケツの中に異物がある感覚がしてキモチワルイが、今はそんなことに構っている余裕は無い。


「猫耳戦士たち! おいで!!」


 直ぐに、二人の猫耳戦士を呼ぶ。

 僕の声に反応した猫耳戦士が僕の近くにまで近寄ってくる。


「――魔装強化術!!」


 僕自身と猫耳戦士に魔法を掛けて身体能力を上げる。


「「ニャァン!!」」


 自分に強化魔法が掛かったのを認識した猫耳戦士が、空高く跳躍して巨人に攻撃を加えはじめる。

 僕は足下から攻撃を加えよう。まずは魔力を地面に送って土や岩を操る。


「ストーンショット! ロックキャノン!」


 足元から出した岩を使って、岩の破片の散弾と岩をドリル状にした物を巨人にブチ当てていく。

 やっぱり物理的な攻撃に弱いのか、凹みや傷がどんどん出来始めていた。上半身にまで登って戦っている猫耳戦士たちも善戦しているみたいだ。


「ボオオオォォォォ!!」


 巨人が叫ぶと大きく足を上げて僕を踏みつぶそうとしてきた。

 僕は地面に手を当てて呪文を唱える。


「大地よ怒り狂え! アースクエイク!!」


 僕を中心とした範囲で局地的な地震が起きる。

 ぐらぐらと揺れる地面に巨人が慌てたようにバランスを取ろうとしていた。

 巨人を地面に倒す為にさらに魔法を使う。


「ストーンスパイク!!」


 巨人が踏んでいる地面から岩の柱が突き出てくる。

 突然の事に巨人は対応できないでそのまま倒れて行った。


「ニャァーーン!」

「ニャァニャー!」


 巨人の上から落ちてきた猫耳戦士に魔法を使ってゆっくりと地面に下ろした。


『ズズゥゥゥゥゥウウウン!!』


 うつ伏せの状態で盛大に倒れ込んだ巨人に追い打ちを掛けるべく、猫耳戦士と自分に魔装強化術を掛け直して突撃する。

 剣を持った猫耳戦士が足を、拳を構えた猫耳戦士が腕を攻撃し始める。

 僕は巨人のケツに素早く移動して集中し始める。


「ぐっふふふふ……今までのケツの恨み! 今晴らしてやる!!!!」


 近くの地面から岩盤を浮き上がらせてから、幾つにも分けてドリルを量産する。

 それを一つ一つ丁寧に魔力を籠めて発射準備をしていく。

 魔力を籠められたドリルはガタガタ振動しながら発射を今か今かと待っている。


「ふっふふふふ! さぁ! どこまで耐えられるかな!! ケツ穴に向かって発射!!!!」


 僕の声に従って一発目のドリルが一瞬ピタッっと動きが止まってから一気に加速した。

『ビュウゥゥゥーーーーン!!!』と、風を切りながら、今まで見た中で一番早く飛んで行った。勿論目標は巨人のケツ穴。

 ケツ穴といっても、今は穴は開いていない、今から空けるんだ。(使命感)


「ッボオォォ!?」


 一発目が弾着。ケツ穴に当たる部分でドリルが回転し始めて穴を作っていく。


「ぐっへへっへへへ! さらに二発目発射!」


 二発目が一発目を砕いて命中する。さらに高速回転をしながら穴を掘り進んでいった。


「ボボオオオォォオォオ!?!?」

「嬉しそうに鳴きやがって。これだろ!? これがほしかったんだろぉぉぉぉ!?!?」


 さらに三発目四発目と、どんどん立て続けに発射していく、発射したら岩盤からドリルを作成して発射準備をする繰り返し。

 剣を持った猫耳戦士に片足を斬られ、拳を構えた猫耳戦士に腕を潰された所為か、特に反撃は来なかった。もしかしたらあまりの気持ちよさに反撃する気力もないのかもしれない。


「ボボボオオオォォォォォォ!!!!」


 幾つも連結したドリルに巨人のケツの穴がみるみる伸びていく。

 最後に特製の特大穴掘りドリル君一号を展開する。

 これは、余った岩盤を使って作成した超大型のドリルだ。超大型といっても、巨人にとってはケツ穴に握り拳を入れるぐらいだろうが……。

 だが、それを見た巨人の反応は凄まじかった。


「ッボ!? ボボーボォ! ボボオォー!? ボボ!?」


 まるで駄々をこねる子のように暴れはじめた。

 僕はニヤニヤ笑いながら、巨人に語りかける。


「は~い、今からお注射しましょうね~♪」(暗黒微笑)

「ボオッッ!?!? ボボー!? ボボオオォォオォォォォォォオォォォォォ!!」


 特大穴掘りドリル君一号は巨人のケツ穴に向かって吹っ飛んで行った。

 それを見た巨人の反応は歓喜に震えるかのように震えていた。


『ズブ!!』開いた穴にねじ込まれる特大穴掘りドリル君一号。

 穴に入った瞬間にドリルを高速回転して突き進む。


「ボオオォォォオォォォォォォォオォォォォォオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオォォオォォォォォォォォォォォォォオォオオオォオォォォ!!!!」


 歓喜の歌声と共に響く掘削音。


 高速回転をしてどんどん突き進んでいったドリルは『スポン』と間抜けな音を立てて、巨人の頭から抜けていった。

 巨人は最後に『ビクンビクン』と痙攣してから動かなくなってしまった。


「……ったか」


 とうとう僕は生き物以外でも関係なく絶頂させる事が出来るナイスガイになってしまった。


「罪な男になったものだな」(悟り)


「ニャァンニャァ」

「ニャーン」


 二人の猫耳戦士も戻ってきた。にゃんにゃんいいながら僕に近づいて頭を垂れる。


「おっふぅ~よく頑張ったね~」


 褒めながら猫耳をモフモフニギニギする。

 キャッキャウフフと戯れていると、ブタが引っ張っている馬車が目の前で停車した。


「にゃ~ん」


 シャオたんに乗るように仕草で誘導されて馬車に乗り込む。

 馬車は渓谷の奥へ向かってさらに進み始めた。


「あれ? 帰らないの?」

「にゃ? にゃんにゃー! にゃん!」


「あ、はい」


 良く分からないまま頷いてから、シャオたんといちゃこらし始めたのだった。


「……あ、ケツから指の破片出さないと……」


 ぐぬぬぅん!!『ぷり』

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