第3話 幻実
私は、いつもより早く学校へ行った。
いつもより早いのは、今朝みた夢のせい。
でも、たかが、夢。
気にしないで、今日を過ごす。
いつもと変わらないように。
私は、心の中に暗示をかけるように、呟いた。
そして、学校に着いた。
あっという間に。
それもそのはず、家から約5分。
学校から近い場所に家がある。
だから、遅刻はしない。
でも、早く学校に来てする事が無い私は、独りで、教室にいなければならない。
(いつもなら、HRが始まるギリギリに来るのに。)
でも、仕方がないので、私はHRになるまで、寝ようと、机にうつ伏せた。
周りには、誰もいない、静かな教室。
聞こえるのは、時計の針が動く音。
やけに響く。いつもなら、雑音に掻き消される音。
でも、今は、心地よく聞こえる。
そのお陰で、眠りに着いた。
暗い、無の世界、そこに女性の姿がある。私を見て言った。
『…此処にいたの?』
私は、何も言えずに、立ち止まっている。そもそも分からない。その質問の意味が。何故、そう聞くのか。
『私を見て、私が、分からない?
私を忘れた?私、貴女を待ってたの に。』
彼女は悲しみの涙を流し、苦しそうな表情で、私を見ている。
何故だか、心が、苦しい。
締め付けられる痛み。
何故、何故、こんなにも、感じるのか。
分からない、分からない。
貴方は、誰……。
私は、そこで、目を覚ました。
周りには、賑やかな声が、段々と、覚醒している、耳から聞こえて、脳に伝わる。
「おはよう!ぐっすり眠ってたね。」
そう言われ、頭を上げた。
そこに、友達である、夏樹がいた。
「……いつから、そこに?」
「教室来てから、ずっと見てた。」
私は、夏樹の言葉にドキッとした。
(……ずっと見てた……。)
「どうしたの?顔色が、悪いよ?」
「えっ、だっ大丈夫。」
「無理しないでね、きつい時は言って!」
「うん、分かった。」
その会話で終わり、夏樹は元の席に戻っていった。
すると、同じタイミングで、先生が入って来た。
HR は、上の空。
頭の中は、夢のことで一杯。
今日は、授業に集中出来ないのは確実。
未だに分からない夢。
そして、あの女性。
そう思っていると、先生から驚きの言葉が。
「そして、今日、この教室に転校生が来ています。」
先生の言葉に皆がざわついた。
私も、今の言葉で、我に戻った。
「じゃあ、入って来て下さい。」
そう言われ、1人の女子が入って来た。
長い黒髪のすらりとした感じで、肌が白い。顔立ちも整っていた。所謂、美少女。
男子達は、興奮を抑えながらも、喜んだ。女子達は憧れの眼差しで見ていた。
「今日から、皆さんと、過ごすことになった、神崎 夕子(かんざき ゆうこ)です。宜しくお願いします。」
彼女はそう言って微笑んだ。
皆が、騒いでいる中、私は彼女を見ていた。
彼女も私を見ている。
そして、聞こえた。
『やっと、会えた。』
(今の、何、何処から……)
私は目を見開いて、驚きを隠せずにいた。
そうこうしている内に、彼女は、後ろの席に座り、
そして、HR が終わった。
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