店長を呼べ!編②

「店長を呼べ!」


初めてそれを言われたとき、僕は普通の一般社員だった気がします。


アルバイトは、真っ先に僕に声をかけてきました。

僕も、「店長を呼べ!と言われたら、まずお前が行くんや!」

と、教え込まれていました。

もちろんその時も、事務所には店長はおらず、ましてや、僕以外の社員も不在の状況。


僕が対応できなければ、どうしようもない。

そんな状況でした。


呼ばれたお客さんの所へ行ってみると、60歳過ぎの年配の男性のお客さんでした。


「おい!これ、見てみい!」


怒り狂ってるそのお客さんは、ナンバーランプを指差しました。

朝から当たらず、1500回のハマり。

金額にして、七万円以上負けてる状態。


「なんやねん!これ!イカサマやないか!警察呼ぶぞ!」


怒り狂ってるその状況を、どうにかこうにかしなくてはならない。

まずは、きちんとした正論で話をしてみる。


「あのー300分の1の大当たり確率の機械なので、そういう事もあるんですよ。」


「そんな事あるかい!」


「サイコロでもそうでしょ?サイコロはどの数字も6分の1で出るはずやけど、6回なげても、一回も6が出ないときあるでしょ?それが20回なげても、出ない時もあるでしょ?パチンコは300分の1のサイコロを投げてるようなものなので、1500投げて当たりが出ない時もあるんですよ。」


まさに正論。

これは間違いのない事実である。

300分の1のサイコロを、一回なげて外れを引いて、それが299分の1になるわけではない。

二回なげて外れをひいて、298分の1になるなら、300回投げれば、必ず当たりが出る。

そうではない。常に300分の1のサイコロを投げているのだ。


つまり、外れを引けば確率が上がっていくのではなく、外れを引いても、引いても、それが減らないので、当たり易くなるわけではないのど。

つまり、確率の分母が減るわけではない。


1500回投げても、当たりが出ない事。

ある。ありうる。

そんな説明が正論である。

間違いない真実である。


しかし、それで納得するなら、何も苦労はしない。


「やかましわ!ぼけ!!」


年配のお客さんは、さらに激情する!


そう。そんな説明で納得するなら、本当に苦労はしない。


「お前らが、上で操作しとるんじゃ!!」


ついにお客さんは、極論を言ってくる・・・・

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