恐怖の五期生編⑬

それから僕ら二人はしばらくA店で勤務していた。


そして、僕はそこの店長に呼ばれる。

聞くと、僕が研修前に主任をしていた店が、人手不足に陥り、僕に戻ってきてほしいと言ってるらしいのだ。


なんと!都合の良い話だ!

人を訳の分からない店長候補の研修に放り出しておいて、人が少なくなったら戻って来いなんて。


最初は僕も怒ったが、A店までは、僕の家から電車を二本乗り継いで通勤していた。

前のお店は家から通勤も近い。

退社するくらいなら、前の店に戻ろうと決心した。

もう出世なんぞ望まん。

普通に働いて、ある程度の経験とお金を貯めたら、後の方向性を考えようと思った。


五期生の生き残り、一般公募の男と別れの挨拶をした。

「俺、前の店に戻るからな!頑張ってな!」


「原田さん!僕、パチンコのコース、もう1人で見れるようになったんですよ!」


「すごいやないか!」


「また、絶対、原田さん!一緒に仕事しましょうね!絶対ですよ!!」


どこまでも前向きな男だと思った。

A店に別れを告げて、前の店に戻る。


この研修は、ある意味、本当に色んな事を教わったな。

この研修を望んだ社長が想像していた以上に、この研修は僕たちに色んな事を教えてくれた。


店長になるか?

潰れるか?

だって。


生き残ったけど、なんもありゃしない。

もとのお店に戻るだけだ。


唯一気がかりなのは、あの一般公募の男。


あいつ、どこまで働くつもりなんやろ?

俺と一緒に仕事したいって、本気なのだろうか?


ただの社交辞令だろう。

そう、思っていたのだが・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る