恐怖の五期生編③

恐怖の五期生編③


次の講義の店長が部屋に入ってきた。

「●●店店長の、××です。」


先ほどとはうって変わって、僕らと同い年くらいだが、顔から精魂のぬけ果てた店長が現れた。

「この部屋、盗聴機とかないですよね?」

そして、しばらく部屋中を見回したあと、その店長はこう言った。


「あなた達にはっきり言います!店長は地獄です!!」


オブラートに包まず、いきなりの告白だった。

「店長になってから、まともに1日も休んだことはありません!」


聞くところによると、このチェーン店は、40店舗に40人以上の店長がおり、その上に部長という方々が数人いる。その部長が1人1人数店舗を統括している。


まず、店長は朝店に出勤したら、その店を統括する部長に電話。

昼にお店の売り上げ、利益を電話で報告。

夕方に中間の報告の電話。

そして夜、閉店後に本日の最終の売り上げ利益報告の電話。


その店長の仕事の変わりができるのが、副店長にあたる、次長という役職のみ。

しかし、40店舗に次長のいる店は半分にも満たないという。

そして、それだけ電話報告をしなければならないということは、お店から抜ける事ができないということだ。


「もちろん、お店の稼働、利益がとれてなければ、電話で怒られます。」


どれだけその電話報告が苦痛か、充分僕らに伝わった。


「僕ら店長は、稼働と利益、相反するこの2つの事を、常に求められているのです!」


そう。パチンコ屋がお客さんを呼ぶには、出すこと。

しかし、出せば利益が減る。

利益を求めて、釘を閉めれば、お客さんが減る。稼働が下がる。


なのに、会社は求める2つの事。


稼働も利益も求める!

矛盾以外の何ものでもない。


「給料だって、そんなに良くないですよ。店長になってから辞める人もたくさんいてますよ。そして、次長を転勤させて、すぐそこの店長にするんです。だから、この会社は、次長がどんどんいなくなるんです。だから、店長が休めなくなるんです。」


なるほど。40店舗に無理やりにでも40人の店長を作り上げているのだな。


最後にその店長はこう言った。

「本部長は、もうこの部屋には来ましたか?」


また、この店長も本部長の話をする。

数人いる部長のさらに上、その部長たちを統括しているのが、その本部長。

かなりのやっかい者のようだ。


「とりあえず、皆さん!頑張ってくださいね。」


その店長はそそくさと、部屋を出て行った。

40店舗にいる、40人の店長。

色んな人がいるのだな。

でも、やはり店長は過酷なのだと思った。


それにしても、なぜ、みんな本部長を気にする?

それも、この部屋に来たかどうか?をなぜ気にする?


一体、この部屋に本部長が来たら、何をするというのだろう???

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