想い出に花を飾る時(仮)

霧島 月呼

第1話

 シャワーを浴びて戻ると、相手はまだ寝ているようだった。起こさぬようサイドテーブルからそっと煙草を取り、火を付ける。華奢だが脆弱さは感じさせない身体。肩まである明るい髪。うつ伏せの相手の白いうなじには俺が付けた跡が薄く残っている。今は隠れているが、いつも女が好みそうな大振りで長いピアスをしている。髪を耳に掛けた時にチラッとのぞくのだ。今夜は俺が下から突き上げる度、身体を仰け反らせては耳元で蝶が揺れて光っていた。俺の隣で眠るクセに、その細い身体は預けくれても、心は開け渡そうとはしない男。

「ん?」

「悪い、起こしたか?」

「平気。一本、ちょうだい。」

「あぁ。」

 ベッドの上の彼に煙草の箱とライターを渡す。美味そうに煙草の紫煙を吹きだす彼。俺以外にも、寝た後に煙草を強請る相手がいるのだろうか。

「何?」

「いや。キレイだなと思って。」

「フツーの男の身体でしょ。キレイじゃない。」

「怒った?」

そっぽを向く彼を抱き寄せる。

「恥ずかしいだけ。」

「さっきまでのは恥ずかしくなかったの?」

「うるさいよ。」

まるで恋人同士の睦言だ。いや彼は恋人じゃない。週に一・二度会う、身体だけの関係の男。彼と関係を持って半年。心まで欲しいと願うのはまだ早いのだろうか。

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