Behind Enemy

冬花愁

プロローグ

 暗い。部屋の照明は落とされており、ただ複数のモニターが煌々と光っている。そして研究員たちがそのモニターを食い入るように見ている。これより、世紀の瞬間が訪れるのである。部屋一帯には重い空気が流れるのであった。

「発電装置、稼働準備完了。」

「テスラコイル軌道を……チェック。特に問題ありません。微調整必要なし。」

「テスラコイル間連携も問題ありません。」

 各パートの担当者が状況を報告する。すべては整った。

「では、太陽発電をまず稼働してください。」

私は皆に号令をかけ始める。

「了解」

と担当の研究員が端末を入力し稼働させ始める。発電自体は何の問題もなく稼働しているようだ。

「では、テスラコイルを稼働! 」

さぁ、世紀の瞬間である。一同が固唾を飲み見守る。発電は順調に進んでいるんだ。後は電送だけ。この電送さえ成功すれば、エネルギー事情は大きく変わる。そして予定通り世界に変革をもたらし始めることができるのだ。

 一番中央のモニターが反応を示した。

「電力運搬の反応を確認。電力、地球に到達! 」

一人の研究員がボソッと報告する。

「成功……成功だ!!! 」

研究員たちの喜びの声が響く。電力は地球に届いた。太陽からの電力が地球に届いたのだ!

これで第一段階は成功だ。

 一同歓喜に沸く中、一人の男が私に近づいてきた。懐から煙草を取出し一服しようとしている。

「ダービット、ここは禁煙よ。」

私は彼に注意する。しかし彼はそのまま煙草を口に咥え、

「いいじゃないか。これからおちおち、煙草を吸う暇なんてなくなるんだからよ。」

と言って火をつけた。室内で一点、煙が立ち上る。確かに、私たちの計画は始まったばかりである。これからまだやらなくてはいけないことがあるのだ。あくまで世界変革の第一歩なのである。

「ん? 」

一人の研究員が声を上げる。彼はあるモニターを指さした。中央モニターの隣にある、太陽系全体の様子を報告する、いわばレーダー的なモニターである。そのモニターには謎の反応が映し出されていた。

「未確認の移動物体を確認。地球に迫っています。」

 人々の喜びは一気に消し飛んだ。こうして世界は崩壊したのである。

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