蛇と子
一一(イチカズ)
第1話
7月某日、ある主婦同士の会話より抜粋ー
「……ところで奥さん、ご存知?
昨日もまた起きたみたいなのよ、例のアレ……」
「……知ってるわよ、もちろん。
朝っぱらからテレビで報道してるし、マスコミ連中がこの数日、そこいら中取材しまくってるし……」
「そうそう、私が近所付き合いしている奥さん、2回も取材されちゃったなんて得意顔で自慢しちゃってさ、悔しいったらないわ。
私の方が5つも若いのに、本当に見る目がないのばっかりで……」
「本当に取材されたかどうかなんてわかりゃしないじゃないの、目立ちたがりなんてどこにでもいるんだから……
うちはまだ子供はいないから心配ないけど、いるご家庭は大変よね。
特に条件に見合う子供がいるうちなんて……」
「ねえ。どういうことなんでしょうね?
同じ小学校の子供ばかり……
幸いうちの子は他の小学校だから関係ないけど、通わせてる親御さんはねえ……」
「そうよねえ、もしも自分の子供の身に起きたかと考えただけで、背筋が寒くなってしまうもの。
まさかこんな小さな町でねえ……何にもない場所だけれど、平和なことが取り柄だと思っていたのに……」
「もう都会も田舎も物騒な事件の発生率は変わらないってことなんじゃないかしら?
今のご時世、どこにどんな人間が暮らしていたってわからない時代ですもの。
もしかしたら奥さんのうちの近所にも平気な顔して暮らしている凶悪犯がいるかも……」
「やめてよ、そういう話!
おちおち外も出歩けなくなっちゃうから……子供達の二の舞いなんて、笑えない冗談だわ」
「いなくなるのは子供だけみたいだから大丈夫よ、どう見たって小学生には見えないし……この先どうなるのかしらね、警察だって田舎のことだし、どこまで頼りになるか……」
「私達はただ無事を祈るばかりよ、そんな真似くらいしか役に立てないし……」
「よね。当事者になった人達には申し訳ないけど、触らぬ神に祟りなしよね。
こういうのは警察やマスコミに任せておくに限るわよ」
「あら、言ってるそばからマスコミっぽい人の姿が……」
「エッ……どこよ、どこどこ?
私、今日のお化粧手抜きなのにィ……」
「…………見えないわね」
「……奥さんたら、この……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます