めぇめぇ戦記

水円 岳

プロローグ

プロローグ 

 羊が弱い生き物だって、誰が決めたんだろう? 守ってあげないといけないって、誰が決めたんだろう?


 羊は小さくない。四肢も強い。堅いひずめも、頑丈なあごもある。触っただけでぱたんと昇天するような、そんなヤワな生き物じゃない。柵で囲われる必要もない。見張りの犬も要らない。


 羊には羊の生き方があるの。


 羊を弱くしたのはニンゲンだ。群れを柵で囲い込み、逃げ出さないように見張り、一方的に毛や肉や乳や皮を搾取して、なおかつ耳元で囁く。おまえたちは弱い。守られねばならぬ、と。


 わたしは、聖書の羊と羊飼いの話を聞くたびに虫酸が走る。


 わたしに導きは要らない。道に迷おうと狼に襲われようと、それが試練ならばわたしは戦う。自分の道を自分で探るために。他の何者でもなく、羊として生きて行くために。


 めぇめぇー……。


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