Anakasico

銀礫

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 何か、夢を見た。


 気がした。


 深くまどろむ少年は、その眼を薄く開いて考える。


 今の夢は何だったのだろう。

 何か、訴えられていた気がする。

 何か、求められていた気がする。


 曖昧な記憶を辿るなか、妙に浮かぶイメージがひとつ。


 それは、細い鎖で掛けられた、少し霞んだ銀の指環シルバーリング


 その印象を手がかりに、さらに深く夢を追う。



 しかし、途端に半身を起こし、驚くように呟いた。


「俺が……夢を、見た…?」


 事実を噛み締め、その味の奇妙さに視界が眩む。



 そのまま、自身が存在する空間を、さまよう瞳に映し見た。


 そして、静かに悟る。


「……遅刻だ。」


 壁掛け時計の針により、つじ一紗かずさの意識は、瞬時に覚醒されたのだった。

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