第1話

 7月の中旬。夏休みを明日に控えた日の午後の事だった。


「ただいまー......って、どうしたの?一樹」


 私、月森つきもり 三葉 みつばが学校から家に帰ったときだった。ドアを開け、帰宅の挨拶をしたと同時に2階からバタバタと大きな足音をたて、弟の月森 一樹いっきが飛び出てきた。


「姉ちゃん!一緒にVOSやろうぜ!!」

「............VOSって何?」


 一樹が玄関に倒れた音が近所に響いた。

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 VOS。〈virtual on-line saga〉という新作VRゲームの略称。つい先日までβテストが行われており、明日から正式稼働するらしい。

 キャッチコピーは『豊富なジョブ(ネタ含む)と豊富なスキル(これまたネタ含む)を組み合わせ、自分だけの自由なスタイルでゲームを楽しめ!』。

 このキャッチコピー通り、本当に様々なジョブやスキルがあり、自分が好きなようにゲームを楽しめる。


「へー......そんなのがあるんだね」

「結構前からCMとかでかなり宣伝されてたってのに......。それで、姉ちゃんもやらない?」


 ゲームかぁ......。私は普段あまり、ゲームをやらないしなぁ。とはいえ、好きなように出来るというのはどこか心に響く。


「うーん......やるのは構わないけど」

「本当に!?」


 そう答えると、さっきまで少し躊躇いがちだった一樹の表情が明るくなる。


「じゃ、早速設定しようよ!!」

「設定?」

「いいから、いいから!部屋行こ!」


 かなり強引ではあるが、こうやって私はVOSを始めることになった。

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