グリサとトモヤ①
グリサ・エヴァーロードは
グリサの心配事は自分のことではなかった。一つ上の先輩に、トモヤ・ウィングスという成績上位の男子生徒がいた。トモヤは成績もよければ性格もよく、端正な顔立ちで学内では女子人気でトップを誇る少年だった。そのトモヤが、近頃戦争の話ばかりをしている。それが戦争歌姫の話題であったのなら、女子は嫉妬をしたかもしれないがさして気に留めなかっただろう。戦争のキャンペーンガールへの好意は男子なら誰でも持っていた。だが、トモヤの関心はアイドルではなかった。トモヤは毎日南部で起きている略奪事件や軍隊配備のことばかり話した。クラスも学年も違うグリサのところにも、その噂はすぐに広まった。この世の知という知を全て頭に叩き込まれている高等教育機関の生徒は、戦争に賛成するのは愚かな行為だと考える癖がついている。事実、南方ゲリラへの対応は極少数の軍隊員があたっていて、ゲリラの親玉と目される企業国家大北京への宣戦布告の可能性はない。緊張状態は既に一〇年を越したが、危険が高まっているという報告はない。そんな中でのトモヤの豹変には学校中が盛り上がった。ある生徒はトモヤが退学して軍隊員に志願するのではと勘繰った。またある生徒は、トモヤの成績ならいつ
トモヤの卒業が決まったのは、一ヶ月生徒達を盛り上げた噂が収束し始めた冬のことだった。
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