あいつはズルい

陽乃 雪

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「なぁ、」

幼馴染みに呼び掛けられ、私は視線だけをあいつのいる方に向けた。

「なに」

急に話しかけてきて、一体何の用なんだろう。

あいつは口端をわずかに歪めたかと思うと、急に真剣な表情になって言い放った。

「キス、してもいい?」

「……はぁっ!?」

え、いや、ちょっと待って。

「な、なによいきなり!付き合ってもいないのに、そんなことする訳な……!?」

その言葉の先はあいつの唇で塞がれた。

……あいつの、"私の頬にあてた"唇で塞がれた。


「……へっ?」

思わず腑抜けた声を漏らす私にあいつはにやり、したり顔。

「ばーか。付き合ってもいない奴のファーストキスを奪うほど、俺は非常識じゃねーっての。まあ……」

……俺が奪ってやっても、俺的には全然構わないんだけどな。

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