第6話 プロ野球チップスとポッキー

「絵が動くのう。不思議じゃのう」

「本当に不思議でございます。いかなる術を用いているのでしょうか?」

 異世界の王女であるミユとその従者エレノワは俺の部屋でテレビモニターに釘づけになっていた。

 流れているのはDVDに録画してあった〝天空の城ラピュタ〟。

 日本の文化と言えばアニメ、そのベタ中のベタと言えばラピュタである。

 ミユたちの暮らしていた異世界は魔法こそあるものの、テクノロジーの発展は中世レベル。さぞ驚くだろうとは思っていたのだが……。

 驚かせすぎた……。

 もう三周目である。

成彦なるひこ殿、もう一度、『ゴミのようだ』を」

 ミユが俺の袖をぎゅうぎゅうと引っ張ってせがむ。俺は場面をサーチして、ゴリアテがロボット兵によって破壊されるシーンを再生する。

 今日四度目の大破を迎えるゴリアテ。

「ほほう。やはり人がゴミのようじゃのう」

「まことにゴミのようでございます」

「可燃ゴミのようじゃ」

「月曜、木曜でございますね」

 なぜか俺の住む地域の可燃ゴミの収集日を知っているエレノワ。

 ミユたちはこちらの世界に来るにあたって勉強を積んできた。しかし、残念ながら知識が偏っているのだ。

 それにしても、いつまでこの怒涛のラピュタ鑑賞会は続くのか……。

 不朽の名作とはいえ、いい加減に飽きてきたし、それに小腹が空いた。

 俺は四度目の「目が、目がぁ~」を聞きながら、お菓子BOXを物色する。

 おやつBOXとは部屋の押し入れの中にある単なる段ボール箱である。小腹が空いた時ように、ちょっとしたおやつが買い貯めしてあるのだ。

 その中から俺はプロ野球チップスをひと袋取り出す。

「成彦殿、それはなんであるか?」

 ミユがいつの間にか俺の背中にぴったりと張りつき、お菓子BOXを覗き込んでいる。

 さっきまでラピュタに釘づけだったのに……。

 さすが食いしん坊だ。

「プロ野球チップスだけど……」

「プロ野球?」

 ミユは大きく首を傾げる。

 当然ではあるが、ミユたちの暮らす世界にはプロ野球はないようだ。なにせ定期的にワイバーンに襲撃される世界だ。盗塁する脚力があれば、ワイバーンから逃げた方がよい。

「姫様、野球とはこの世界のスポーツの一種でございます。大変人気があるとか」

 ミユの従者であるエレノワがすかさず解説するが、ミユはそれでも首を傾げっぱなし。

「スポーツとはなんであるか?」

「こちらの世界の民は娯楽目的で身体を動かすのでございます。剣士が身体を鍛え上げるために、野山を駆け、重い岩を持ち上げますが、そのような類かと」

「ふむ、そのような者がなぜチップスに?」

「それはわたくしにもわかりかねます……。他には吟遊詩人オッペンハイムが野球選手に関する詩を残しております」

 そう言うと、エレノワは美しい声で謳いあげる。


 野球選手


 その者、野蛮な者である。

 こん棒を振り、物を投げつけ、走り回る。

 その者、無慈悲な簒奪者さんだつしゃである。

 リーリーと野卑な雄叫びを上げ、

 塁を盗み、サインを盗み、刺殺する。

 その者、あまりに粗暴ゆえ、

 千の民、万の民をもって監視する。

 ドームから逃げ出さぬよう、鳴り物で威嚇いかくし、ジェット風船で追い立てる。

 いいぞ、頑張れ。 

 ドラゴンズ。

 六甲ろっこうおろしに。

 アウト、セーフ、よよいのよい。


 なんだ、この詩。

 野球選手、すげーディられてるし!

 後半ちょっと手抜き感あるし!

「ふーむ。我々の世界で言うところのゴブリンのような存在かのう? 奴らもこん棒を振るい、石を投げる。奴らは火を嫌うゆえ、野球選手も煙でいぶせば追い払えよう」

 吟遊詩人の精度の低い詩によって、ミユはすっかり勘違いしてしまっている。

 ここから正しい野球の知識を持ってもらうにはすごく時間がかかりそうだ。

「とにかく、野球はこっちの世界で人気の娯楽で、選手はスターなの。それでこれはその野球選手のカードがついてるポテトチップスなの」

 俺は強引にそう結論づけると、袋の後ろについているカードをはがすとミユに手渡す。

 ミユは怪訝な顔を浮かべながらも封を切り、カードを取り出す。

 出てきたのは広島東洋カープの田中広輔たなかひろすけ選手のカードだった。

 じっとそのカードを凝視するミユ。

「どなたであるかの?」

 ミユが俺に尋ねる。

「見ての通り、カープの田中選手だよ。あげるよ」

「ほう、カープの田中選手であるか…………。いらぬ」

 ミユがカードを突き返した!

「なんで?」

「私は赤い帽子を被った男性のカードを集める趣味はないのじゃ。成彦殿は集めておるのであろう?」

「……集めてないし、野球にもあんまり興味がない」

 俺は正直に告白する。

 実は俺も田中選手を存じ上げないのだ。

 カードになるくらいだから素晴らしい方なのだろう。

「ではどうしてプロ野球チップスを持っておられるのですか?」

 エレノワの疑問は至極当然である。

 もちろんこれには理由がある。

「それはポテトチップスを食べすぎないためだ」

 俺は自信を持ってそう答えたが……。

 ミユもエレノワもちっとも納得がいってない様子。

 なにを言ってるんだこいつは? とでも言いたげな目で俺を見つめている。

 ならばもう少し詳しく説明しなければなるまい。

「ふたりはポテチの止まらなさを知らないからね。プロ野球チップスの値段でもっといっぱい入ったポテチも買えるんだけど、一回袋を開けたら絶対に全部食べちゃうから。そんなことを繰り返してると、太っちゃうわけ。だからあえてプロ野球チップスにしてるの」

「……途中で食べるのを止めたらいいだけでは?」

 エレノワの意見はいかにもポテトチップスを食べたことのない異世界人らしいものだ。

「ポテチの袋を開けて、途中で食べるのを止めた人間は歴史上存在しない!」

 俺はきっぱりと断言する。

 そう、ポテチは魔性の食べ物。

 一枚を口に入れたら最後、必ず袋ひとつ食べきってしまう。

 ポテチのついつい食べちゃう力の前には、どんな強靭な意志を持ってしても抗うことはできない! 

 たとえ、カープの田中広輔選手であってもだ!

 ミユとエレノワにそれを実際に感じてもらうべく、プロ野球チップスの袋を開ける。

 袋から立ち上るポテトチップス特有の油の香り。

 いかにもいっぱい食べちゃマズい香りだが、それであるがゆえに、猛烈に食欲を刺激する。

 その香りは異世界の王女の食欲もかき立てたようだ。

「ほほう。これは……」

 操られているかのように、ミユの手がプロ野球チップスへと伸びる。

 普通のポテトチップスよりやや小さめのサイズ。

 ミユの小ぶりな口にも難なく収まる。

「サックサクじゃのう! 実に歯ごたえがよい。薄くてパリッとして、それに、味もなかなか……、ほんのりとした塩分と油の組み合わせが、まことに美味じゃのう。これがプロ野球味であるか!」

「うす塩味だね」

「さようか。いずれにせよ、一枚食べると、不思議ともう一枚食べたくなる」

 ミユは再度袋に手を伸ばす。

「ふむ。二枚目もやはり美味である」

 ポテチをサクサクと噛みしめながら、すでにその手は三枚目に。

 やはり異世界の王女であっても、ポテチを食べる手を止めることは不可能なのだ。 

「エレノワも食べてみなよ」

 俺はエレノワに向かって袋を差し出す。

 この止まらなさをぜひ体感して欲しい。

 自分の意志に反して手がポテチを掴んで、口に運んでしまうのだ。魔法は異世界だけにあるのではない。

「なるほど……。シンプルなお味なのですが、そのことが逆に嬉しいというか……」

 エレノワの手も再びポテチの袋へと伸びる。一枚食べたら、もう負けである。

 ミユとエレノワは交互にポテチをつまみ、元々量の少ないプロ野球チップスは瞬く間に空になる。

「どう? 全部食べちゃうでしょ」

「もうないのかの?」

 ミユが上目遣いでじっと俺を見つめている。

「いや、あるけど」

 俺のお菓子BOXにはあと数袋のプロ野球チップスが残っている。

「もうちょっとプロ野球を楽しみたいのう」

「さようでございますねえ。プロ野球は我々の事前の情報よりも、ずっと素敵な物な気がします。俄然興味が……」

 エレノワもミユに同意すると、ちらりとこちらを見る。

 ただもうちょっとポテチが食べたいだけのくせに。

 俺もまだ食べられてないし……。まあいいだろう。

 俺はもう一袋プロ野球チップスを開ける。

 そして今回のカードは……。

 次に出たのは千葉ロッテマリーンズの鈴木大地すずきだいち選手だった。キラキラのデザインでなんだかレアカードっぽい。

「当たりっぽいの出たよ」

 しかしミユとエレノワはカードに目もくれない。

 ただ一心不乱にサクサク、パリパリとポテチを頬張り続けている。

「野球はまこと最高であるのう」

「はい。こちらの世界で人気なのもうなずけます」

 パリポリ、パリポリ……。ひたすらポテチを口に運ぶ。

「当たりっぽい鈴木選手出たんだけど……」

「ふむ。この薄さが実に良い。軽やかな味わいじゃ」

「全然野球に興味ないじゃん!」

 俺は自分もさほど興味がないにも関わらず、ツッコまざるを得ない。

 なんとなく鈴木選手に申し訳ない! 右投左打、2011年ドラフト3位の鈴木選手に申し訳ない!

 しかしミユはまったく悪びれていない。

「我々にとってはこの味こそがプロ野球である。鈴木選手は関係ないのじゃ!」

 ミユは堂々と言い切った。

「関係あるよ!」

 と言いつつ、俺もプロ野球チップスに手を伸ばす。

 俺がもっと野球を愛する日本人であれば野球の素晴らしさをしっかりと伝えることができたのだが、俺もしょせんはポテチ食べすぎ防止のためにプロ野球チップスを食べている身。

 残念ながら俺も野球よりポテチが気になる派なのだ。

 すまない、鈴木選手。ごめんね、田中選手。

 俺も結局はポテチの魅力に負けて、ふたりと争うようにポテチを頬張り続ける。

 瞬く間にふた袋目も完食。

「プロ野球、まだあるかの?」

 叱られた犬のような目で俺を見るミユ。

「もうダメ。本当にゲームセット」

 俺は心を鬼にしてきっぱりと断る。

 ポテチは美味いがゆえに食べすぎは禁物。

 このままでは太っちょ王女様と太っちょメイドさんのコンビになってしまう。

 ポテチの魅力を教えた身としては、ちゃんと止め時も伝えないといけない。

「そうであるか……残念であるのう」

 ミユは落胆しながらも、いまだお菓子BOXをチラチラと見ている。

「ところで、プロ野球以外にはなにかないかのう」

 プロ野球チップスは断念したものの、食いしん坊のミユにとって、お菓子BOXは気になって仕方のない存在なのだ。

「まあ、いろいろあるけど……」

 先ほどと打って変わって、俺の答えは歯切れが悪い。

 ポテチ三袋目をぴしゃりと断ってみたものの、俺はしょっぱい物の後に甘い物を食べたくなってしまったのだ。

 少量の甘い物はセーフとしよう。

 俺はお菓子BOXの中からポッキーを取り出す。

 ポッキーを何本か食べるだけならカロリー的にも問題ないだろう。

 すでにミユは俺の手に握られた新しいお菓子に全注意力を傾けている様子。

「これはなんであるかの?」

「ポッキーだけど」

「おお、あの名高きポッキーであるか」

 どうやらミユはポッキーのことを知っているようだ。

「もちろん我々の世界にはポッキーは存在しないのですが、その名は広く知れ渡っております。我々の世界でプロ野球の詳細を知る者はごく一部の賢者くらいでしょうが、ポッキーは子供でも知っています」

 エレノワがすかさず補足をつけ加える。

「そんなに有名なの?」

「はい。ポッキーゲームに使用するスティックの名称ですよね。みんなそのように記憶しております」

 ポッキーそのものじゃなくてポッキーゲームが伝わっちゃったか……。

 ポッキーゲームとは両端からポッキーを食べて先に口を離した方が負けな、そして両方が頑張っちゃうとキスしちゃう的な、合コン等で行われるゲームだと聞く。

 もちろんそんなリア充向けのゲームを俺はしたことがない。俺にとってのゲームとはモンスターハンター等を指す。

 それにしても、なんで野球は伝わらないのにポッキーゲームだけ伝わるんだ!

 導術師と呼ばれる存在がこちらの世界の情報を調べているらしいが、なかなか偏った仕事っぷりである。

「当然ポッキーは手に入らぬゆえ、民草たちは揚げた魚の骨や、よく煮た植物のツルで代用しておるのじゃ」

 ミユがさも当然であるかのように言う。

 揚げた魚の骨を両端から……。なにか他に代用品なかったのか!?

 キスしちゃうかも的なドキドキよりも魚の骨を噛み砕く顎の強靭さを競う種目になっちゃってないか?

「本物のポッキーを食べることができるとは、非常に光栄なことでございます。本物はこのような箱に……なるほど」

 エレノワもポッキーの箱をあらゆる角度から見つめて、感心している。

 理由はさておき、そんなにポッキーについて興味があるなら、食べてもらおうじゃないか。

 俺はポッキーを開封し、ミユとエレノワに一本ずつ手渡す。

「これが真ポッキーであるか……。煮たツルと違って持ちやすいのう」

 異世界人にもポッキーの持ち方は直観的に理解できたようで、チョコのコーティングのない部分をつまむと、ポッキーを頬張る。

 ぽきんと軽やかな音を立て、小ぶりな唇の中に消えるポッキー。

「ほほう。これは美味じゃ! これが真ポッキーの実力であるか! 偽ポッキーなど勝負にならぬのう」

 ポッキーと煮たツルでははじめから勝負にならない。

 ミユは小動物のように小さく口を動かして、あっという間に一本食べ終える。

「コーティングされた甘き物が口の中にふわっと広がり、その後に棒状の部分のサクサクとした歯ごたえ。絶妙のバランスでございますね」

 エレノワも大満足の様子。

 ならばと、俺はもう一本ずつポッキーを配布する。

 ミユはそれを受け取ると、すぐに口へと運んだのだが……。

「では、成彦殿」

 ミユはポッキーの先端を咥えたまま、俺に顔を近づける。

「な、なにが?」

「なにがではない。ポッキーゲームに決まっておるでないか」

 さらに顔を近づけるミユ。口から突き出したポッキーは俺の鼻先にぶつかりそうな距離にある。

「そのような庶民の競技を。姫様、はしたのうございます!」

 エレノワがぴしゃりと言うが、ミユはポッキーを咥えたまま、ぶんぶんと首を振る。

「固いことを言うのう。せっかくの異世界であるぞ。それに真ポッキーがあるのにポッキーゲームをせぬとは、むしろファリーノス家の恥であると思わぬか」

「なるほど、そういうお考えですか……。一理ございますね。お相手も成彦様ですし。一度だけでございますよ」

 謎すぎる理論だが、なぜか通っちゃったし! どこに一理あったんだ?

 エレノワの許可を得て、改めて俺の方に向き直るミユ。

「さあ、成彦殿。ゲーム開始じゃ。私は一歩も引かぬぞ」

「ちょっと待って! そっちの世界でのキスの意味合いだけ教えてほしいんだけど。文化的に気軽にする感じなの?」

「もちろん好意の表現でございますが、気軽になど行いません。なかでも王族の女子は貞操を非常に重んじます。姫様とキスをするとなると、重要な意味を持つでしょう」

 エレノワの口調は真剣そのもの……。

 ダメじゃん!

 すごいリスクを伴ってるじゃん!

「そうではあるが、異世界でのことじゃ。成彦殿、気軽にの。私は気にせぬ。ただの戯れ事よ」

 ミユは待ちきれぬとばかりに俺の袖をぎゅうぎゅうと引っ張る。

 俺だってミユとポッキーゲームをしてみたい。本人は気にしないと言っているし……。

 しかし本当なのか? これは罠なんじゃないのか?

 しかし異世界女子たちは俺の躊躇など気にしてくれない。

「では、姫様と成彦様による真ポッキーによるポッキーゲームを開催いたします。両者位置について。まずは我々にポッキーを与えてくれた五穀豊穣の神々に感謝を。黙とう」

 なんだ、このシステム!?

 ミユがポッキーを咥えたまま胸に手を当て黙とうしている。

 一応、俺も真似をして黙とうする。

「では、成彦様もポッキーを咥えてください。ポッキー、オン! レディー、グリコッ!」

 謎の掛け声でポッキーゲームがスタートしてしまった。

ちょっとずつ、はむはむとポッキーを齧りながら、接近するミユの唇

黙とうは終了したのに目を閉じたまま……。

 完全にキスをする顔である。

 俺も一応ひと口齧って前進する。

 まだポッキーの長さに多少の余裕がある。

 どうする?

 もしキスしたら、異世界行きの可能性がぐっと高まる。

 いま俺は世界でもっともリスクの高いポッキーゲームを行っている。

 あえてリタイアするか……それともキス&ワイバーンか。

 ゆっくりと近づくミユの艶やかな唇。

 目を閉じたまま、そっと首を傾げ、鼻と鼻がぶつからないようにしている。

 ポッキーの甘い香りとミユの髪からほのかに漂うフローラルな香りが混じり合い、俺の頭をさらに混乱させる。

 ダメだとはわかっているのだが……、止めることができない。

 これはポテチ以上の魔力だ。

 もう、抗う意思は残されてない。

 俺の脳内ではグリコのランニングおじさんが万歳しながら「いいんだよ」と優しく微笑みかける。

 そうだね。もう成り行きに身を任せるよ。ありがとう、ランニングおじさん……。

 俺がポッキーゲームの魔力に完全に屈したときだった。

「バルスッ!」

 エレノワが俺の肩を突き飛ばした。

 まさにキスの寸前で、目の前の光景が崩れ去る。

 急激に遠ざかるミユの唇。

「どうしたのじゃ、急に?」

 ミユは残ったポッキーを自分の口に押し込みながら、不満げな顔を浮かべる。

「姫様のこのような姿。やはり見逃せません。はしたのうございます」

 エレノワは顔を真っ赤にしている。

「先ほどはいいと言っていたではないか」

「あれは気の迷いでございました。やはりダメでございます」

 一度はポッキーゲームを認めたエレノワだが、実際に姿を目の当たりにすると、見るに堪えなかったのだろう。

「私がいいと言っているのだから、いいのじゃ。……では気を取り直して」

 新しいポッキーを咥え直すミユ。

 いきなり半分ほど食べ終え、短い距離からポッキーゲームを再開しようとしている。

 俺が反対側を咥えると……。

「バルスッ!」

 またしても滅びの呪文と共に突き飛ばされてしまう。

 エレノワは断固阻止の姿勢。もう一度心変わりすることはなさそうだ。

 こうして俺のポッキーゲーム初体験はエレノワのバルスによって、キスに至ることなく崩壊したのであった。

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